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*&ruby(かいじょうほあんかん){【海上保安官】}; [#y48bb4da]
Coast Guard Officer.~
[[海上保安庁]]の職員のうち、刑事訴訟法上の「[[特別司法警察職員>司法警察]]」に指定されている者。~
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主な職務は、(日本国の[[排他的経済水域]]内における)海上治安維持、[[捜索救難]]、海洋汚染の防止、海上交通の安全確保などとされている。~
海上で発生した事案については警察官と同等の権限を持ち、必要に応じて武装する事も許されている((武器の使用については警察官職務執行法の規定が準用されている。))。~
また、海賊行為や海賊放送などを行う船舶については[[領海]]のみならず公海上でも[[拿捕]]することができ、その結果として、容疑者を逮捕したり関連資産を押収することができるなど、警察官には許されていない権限も持っている。((これは「海洋法に関する[[国際連合]]条約」を根拠としている。))~
>こうしたことから、[[海上保安庁]]は一般の警察よりも軍事的色彩が強く、国際的には「国境警備隊」や「沿岸警備隊」と同様の準軍事組織とみなされている。~
[[海上保安庁]]の職員のうち、刑事訴訟法上の「[[特別司法警察職員]]」に指定されている者。~
厳密には、3等海上保安士以上の[[階級]]を持つ「海上保安官」と1等海上保安士補以下の「海上保安官補」からなる(詳細は後述)((ただし、2024年現在、海上保安官補は補職者がおらず有名無実化している。))。~
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主な職務は、日本国の[[排他的経済水域]]内における海上と港湾での治安維持・法令の執行、[[捜索救難]]、海洋汚染の防止、海上交通の安全確保などとされている。~
海上で発生した事案について警察官と同等の権限を持ち、必要に応じて武装する事も許されている((武器の使用については警察官職務執行法の規定が準用されている。))。~
また、[[海賊]]については日本国の[[領海]]のみならず公海上でも追跡・[[拿捕]]および容疑者の逮捕と関連資産の押収ができる((「海洋法に関する[[国際連合]]条約」が法的根拠。&br;  日本国の現行法令上、警察庁・警視庁及び道府県警察は海上警察権を有していない。))。~

人員は、主に海保が独自に採用試験を行い、[[海上保安大学校]](広島県呉市所在)および[[海上保安学校]](京都府舞鶴市所在)の課程を卒業した者からなっている。~
ただし、最高指揮官である「海上保安庁長官」には国土交通省の官僚が就任するのが慣例となっている他、各省庁からの出向者も少なくない。~
また、理学・技術系の部署には一般の国家公務員試験枠から採用された人員も少数存在する。
>こうしたことから、[[海上保安庁]]は一般の警察よりも軍事的色彩が強い。~
国際的には「国境警備隊」や「[[沿岸警備隊]]((海保の現在の英訳名も"Japan Coast Guard(日本国沿岸警備隊)"である。))」と同様の準軍事組織とみなされている((ただし、国内法上では海上保安庁法第25条により''「海上保安庁又はその職員が[[軍隊]]として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」''としている。))。~

人員は独自に採用試験を行い、海上保安大学校(広島県・呉市所在)および海上保安学校(京都府・舞鶴市所在((この他、福岡県北九州市と宮城県岩沼市に分校が存在。)))の課程を卒業した者からなっている。~
ただし、管区本部・本庁の基幹職員には各省庁からの出向者が就く他、一般の国家公務員試験枠から採用された人員も少数存在する。~
また、2021年からは一般の大学を卒業した者を直接登用する制度も実施されている。~

**階級 [#ibb6e76f]
海上保安官の指揮命令系統は、以下に述べる15階級から構成されている。
海上保安官(及び海上保安官補)の指揮命令系統は、以下に述べる15の[[階級]]から構成されている。

|階級呼称|英文表記|概説|
|海上保安庁長官|Admiral|国土交通省の官僚が就任。&br;国内行政組織上では「外局の長官」であり、気象庁長官などと同格。&br;(警察では警察庁次長、及び警視総監と同等)|
|海上保安庁次長|Vice Admiral&br;/Vice Commandant|長官と同様、国土交通省の官僚が就任する慣例があったが、&br;2010年の人事異動で警備救難監から初めて就任した。|
|警備救難監|Vice Admiral&br;/Vice Admiral for Operations|次長と同格。&br;海上保安大学校及び海上保安学校の卒業生(プロパー)が到達できる最高階級。|
|1等海上保安監(甲)|Vice Admiral&br;/1st Grade upper-half|本庁部長、大学校校長、管区本部長などの階級。|
|1等海上保安監(乙)|Rear Admiral&br;/1st Grade lower-half|管区本部次長、大規模保安部長などの階級。|
|2等海上保安監|Captain|本庁課長、保安部長、大型巡視船の船長などの階級。|
|3等海上保安監|Commander|本庁課長補佐、管区本部課長、中型巡視船の船長などの階級。|
|1等海上保安正|Lieutenant Commander|本庁係長、保安部課長、小型巡視船の船長などの階級。|
|2等海上保安正|Lieutenant|本庁主任、管区本部係長、大型巡視艇の艇長などの階級。|
|3等海上保安正|Ensign|本庁係員、管区本部主任、中型巡視艇の艇長などの階級。&br;海上保安大学校卒業者はこの階級が初任となる。|
|1等海上保安士|Master Chief Petty Officer|管区本部係員、巡視船艇乗組員などの階級。&br;刑事訴訟法上では、この階級より上位の海上保安官が「司法警察員」に指定されている((この階級以上で3年以上勤務すれば検察官(副検事)の受験資格が与えられるが、受験者はほとんどいないという。))。|
|2等海上保安士|Senior Chief Petty Officer|この階級以下の海上保安官は「司法巡査((刑事訴訟法の規定で、捜査官として行使できる権限が制限される司法警察職員。&br;  警察官の階級としての「巡査」とは無関係。))」となる。&br;職責は1等海上保安士と同様。|
|3等海上保安士|Chief Petty Officer|海上保安学校卒業生の初任階級。&br;職責は1等・2等海上保安士と同様。|
|1等海上保安士補|Petty Officer First|海上保安官候補生(海上保安学校門司分校在学の研修生)の階級として&br;使用されていたが、現在は補職者がおらず空位。|
|2等海上保安士補|Petty Officer Second|~|
|3等海上保安士補|Petty Officer Third|~|
|海上保安庁長官|(Full) Admiral Japan Coast Guard&br;/Comandant|国内行政組織上では「外局の長官」であり、気象庁長官などと同格。&br;(警察では警察庁長官、及び警視総監と同等)|
|海上保安庁次長|Vice Admiral Japan Coast Guard&br;/Vice Commandant|庁次席。国土交通省から出向したキャリア官僚が就任することが多い。|
|海上保安監((2013年5月16日、政令の改定により「警備救難監」から改称されると共に職責も変更された。))|Vice Admiral Japan Coast Guard&br;/Vice Comandant for Operations|次長と同格。現場での運用最高責任者。|
|1等海上保安監(甲)|Vice Admiral Japan Coast Guard&br;/Coast Guard Superintendent 1st Grade Upper Half|本庁部長、本庁参事官、大学校校長、管区本部長などの階級。|
|1等海上保安監(乙)|Rear Admiral Japan Coast Guard&br;/Coast Guard Superintendent 1st Grade Lower Half|管区本部次長、大阪海上保安監部長、大規模保安部長などの階級。&br;本庁に在職者はいない。|
|2等海上保安監|Captain Japan Coast Guard&br;/Coast Guard Superintendent 2nd Grade|本庁課長、保安部長、大型[[巡視船>カッター(船)]]の船長などの階級。|
|3等海上保安監|Commander Japan Coast Guard&br;/Coast Guard Superintendent 3rd Grade|本庁課長補佐、管区本部課長、中型巡視船の船長などの階級。|
|1等海上保安正|Lieutenant Commander Japan Coast Guard&br;/Coast Guard Officer 1st Grade|本庁係長、保安部課長、小型巡視船の船長などの階級。|
|2等海上保安正|Lieutenant Japan Coast Guard&br;/Coast Guard Officer 2nd Grade|本庁主任、管区本部係長、大型巡視艇の艇長などの階級。|
|3等海上保安正|Ensign Japan Coast Guard&br;/Coast Guard Officer 3rd Grade|本庁係員、管区本部主任、中型巡視艇の艇長などの階級。&br;海上保安大学校卒業者はこの階級が初任となる。|
|1等海上保安士|Petty Officer First Class Japan Coast Guard&br;/Junior Coast Guard Officer 1st grade|管区本部係員、巡視船艇乗組員などの階級。&br;刑事訴訟法上では、この階級より上位の海上保安官が&br;「司法警察員」に指定されている((この階級以上で3年以上勤務すれば検察官(副検事)の受験資格が与えられるが、受験者はほとんどいないという。))。|
|2等海上保安士|Petty Officer Second Class Japan Coast Guard &br;/Junior Coast Guard Officer 2nd Grade|この階級以下の海上保安官は「司法巡査((刑事訴訟法の規定で、捜査官として行使できる権限が制限される司法警察職員。&br;  警察官の階級としての「巡査」とは無関係。))」となる。&br;職責は1等海上保安士と同様。|
|3等海上保安士|Petty Officer Third Class Japan Coast Guard&br;/Junior Coast Guard Officer 3rd Grade|海上保安学校卒業生の初任階級。&br;職責は1等・2等海上保安士と同様。|
|1等海上保安士補|Leading Seaman Japan Coast Guard&br;/Assistant Coast Guard Officer 1st Grade|海上保安官補の階級。&br;現在は補職者がおらず空位。|
|2等海上保安士補|Seaman Japan Coast Guard&br;/Assistant Coast Guard Officer 2nd Grade|~|
|3等海上保安士補|Seaman Aprentice Japan Coast Guard&br;/Assistant Coast Guard Officer 3rd Grade|~|
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なお、参考までに警察官・消防吏員(消防官)・[[海上自衛隊]]の[[自衛官]]及び[[旧日本海軍>日本軍]]将兵の階級との概ねの対比も以下に示す。
|海上保安官|警察官|消防吏員|海上自衛官|旧日本海軍((1942年10月の改正以後の最終状態。))|
|>|>|>|>|将官(上級幹部)クラス|
|海上保安庁長官|警視総監((更にこの上位に、階級制度外である警察庁長官が位置する。))|(該当なし)|海将(甲)((統合幕僚長もしくは海上幕僚長の職についている海将。))|[[大将]]|
|海上保安庁次長&br;警備救難監|警視監|消防総監((東京消防庁の長のみが任ぜられる。&br;  なお、消防機関は市町村単位で組織されているため、小規模な市町村の消防では、大規模市町村の消防署長と同格の「消防司令長」の階級にある消防官が長となることもある。))|海将(乙)|中将|
|1等海上保安監(甲)|警視長|消防司監&br;消防正監|海将補|少将|
|1等海上保安監(乙)|警視正|消防監|~|~|
|>|>|>|>|佐官・尉官(中堅・初級幹部)クラス|
|2等海上保安監|警視|消防司令長|一等海佐|大佐|
|3等海上保安監|~|~|二等海佐|中佐|
|1等海上保安正|警部|消防司令|三等海佐|少佐|
|~|~|~|一等海尉|大尉|
|2等海上保安正|警部補|消防司令補|二等海尉|中尉|
|3等海上保安正|~|~|三等海尉|少尉|
|>|>|>|>|准士官・下士官及び兵卒(一般職員)クラス|
|1等海上保安士|巡査部長|消防士長|准海尉|兵曹長|
|~|~|~|海曹長|上等兵曹|
|2等海上保安士|巡査長((厳密には巡査と同一。))|消防副士長|一等海曹|一等兵曹|
|~|~|~|二等海曹|二等兵曹|
|3等海上保安士|巡査|消防士|三等海曹|兵長|
|~|~|~|海士長|上等水兵|
|1等海上保安士補|(該当なし)|(該当なし)|一等海士|一等水兵|
|2等海上保安士補|~|~|二等海士|二等水兵|
|3等海上保安士補|~|~|三等海士((旧[[海上自衛隊生徒>少年自衛官]]。2010年10月31日廃止。))|(該当なし)|
|区分|海上保安官|警察官|消防吏員|海上自衛官|旧日本海軍((1942年10月時点。))|備考|
|[[将官]](上級幹部)クラス|(該当無し)|警察庁長官&br;(階級制度外)&br;Commissioner General&br;of the National Police Agency|(該当無し)|[[海将(甲)>将(自衛官)]]|[[大将]]|(指定職)本府省事務次官級((参考:イギリス軍のOF-9ないし10相当。))&br;統合幕僚長|
|~|海上保安庁長官((指定職7号俸。))|警視総監&br;Superintendent General((同左。))|(総務省)消防庁長官&br;(階級制度外)((指定職6号俸。))&br;Commissioner of the&br;Fire and Disaster&br;Management Agency|~|~|(指定職)本府省外局長官級((同OF-8相当。))&br;海上幕僚長|
|~|海上保安庁次長&br;および海上保安監|警視監&br;Senior Commissioner|消防総監((東京消防庁のみに存在。))&br;Fire Chief|[[海将(乙)>将(自衛官)]]|[[中将]]|(指定職)本府省局長級((同OF-7相当。))、地方機関の長&br;[[自衛艦隊]]司令官等|
|~|1等海上保安監(甲)|~|消防司監&br;Chief Fire Superintendent&br;/Deputy Chief|~|~|~|
|~|~|~|~|~|~|(指定職)&br;本府省局次長、部長、審議官級((同OF-6相当。))、地方機関の長&br;護衛艦隊司令官、航空集団司令官、&br;潜水艦隊司令官、掃海隊群司令等|
|~|~|~|~|[[海将補>将補(自衛官)]]|[[少将]]|~|
|~|1等海上保安監(乙)|警視長&br;Commissioner|~|~|~|本府省課長級、地方機関の長((同OF-5相当。))&br;群司令、隊司令、艦長等((特に指定された艦に限る。))|
|[[佐官]]・[[尉官]]&br;(中堅・初級幹部)クラス|2等海上保安監|~|消防正監&br;Senior Fire Superintendent&br;/First Assistant Chief|一等海佐|大佐|~|
|~|3等海上保安監|警視正&br;Assistant Commissioner|消防監&br;Fire Superintendent&br;/Assistant Chief|二等海佐|中佐|本府省室長級((同OF-4相当。))&br;艦長等|
|~|1等海上保安正|警視&br;Superintendent|消防司令長((大規模自治体の消防では消防署長相当であるが、小規模な自治体では、この階級にある消防吏員が消防機関の長を務めることもある。))&br;Battalion Chief|三等海佐|少佐|本府省課長補佐級((同OF-3相当。))|
|~|2等海上保安正|警部&br;Chief Inspector|消防司令&br;Fire Captain|一等海尉|大尉|本府省係長級((同OF-2相当。))|
|~|~|~|~|二等海尉|中尉|~|
|~|3等海上保安正|警部補&br;Inspector|消防司令補&br;Fire Lieutenant|三等海尉|少尉|本府省係員級|
|[[准士官]]((海上自衛隊には准士官制度はない。))・[[下士官]]及び[[兵卒]]&br;(一般職員)クラス|1等海上保安士|巡査部長&br;Sergeant|消防士長&br;Fire Sergeant|准海尉|[[兵曹長>曹長]]||
|~|~|~|~|[[海曹長>曹長]]|(該当なし)||
|~|~|~|~|一等海曹|上等兵曹||
|~|2等海上保安士|(巡査長((正式な階級ではない。)))&br;Senior Police Officer|消防副士長&br;Assistant Fire Sergeant|二等海曹|一等兵曹||
|~|3等海上保安士|巡査&br;Police Officer|消防士&br;Fireman&br;/Fire Fighter|三等海曹|二等兵曹||
|~|(該当なし)|(該当なし)|(該当なし)|(該当なし)|水兵長||
|~|1等海上保安士補|~|~|海士長|上等水兵||
|~|2等海上保安士補|~|~|一等海士|一等水兵||
|~|3等海上保安士補|~|~|二等海士((2010年まではこの階級の下に「三等海士」が存在したが、[[生徒>少年自衛官]]制度の廃止に伴い廃止されている。))|二等水兵||
~
上の表のとおり、別組織であるため、厳密には必ずしも一致していない。


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