【衛生兵】(えいせいへい) †

Medic.

軍隊の兵科の一つで、医療従事者として救急救命と衛生管理を担う将兵。
自衛隊では「衛生科」と呼ばれる。

医療従事者としての技術は応急処置までで*1、処置に余るほどの重傷を負った者は、野戦病院まで後送された上で別途、軍医に預けられる。
免許を持った医師はそれだけで士官待遇を受ける事ができる*2ため、一端の衛生兵として前線に出る事はまずない。
また、衛生兵から昇格して軍医になるという事も基本的にありえない。
基本的に衛生兵は「戦場で活動する救急救命士」といった位置付けであるためだ。

例外的に、後送が不可能と目される極限状況下での医療活動を想定した「衛生兵による特殊部隊」も存在する。
アメリカ空軍のパラジャンパーなどはその代表例である。

死傷者が発生しやすい歩兵部隊に同道する事が多いが、積極的に戦闘参加する事はない。
訓練時間にせよ携行する装備にせよ、多くは救急医療に割かれており、戦う兵士としての信頼性は高くない。彼らの装備は応急処置を行うためのガーゼ、鉗子、輸液セット等でほぼ一杯であり、武器や弾薬に割く余裕はない。
黎明期にはこの点で臆病者・無能者と揶揄される事も多かったが、現代では大いに価値を認められ、敬意を受ける。

重傷者に対して衛生兵がしてやれる事は、事実上「病院まで後送する事」のみである。
しかし、それを最前線の戦場で行うのは極めて英雄的な行為であり、傷つきながら戦う味方の兵士を大いに勇気づける行為でもある。

黎明期には敵味方問わず保護・尊重される存在であると法で定められ、非武装で人命を救うことに専念する兵科だった。
しかし「意図的な誤射」が多発したため*3、現在では最小限の自衛用火器を携行して行動するのが普通。

*1 点滴による血圧維持、気道確保、止血など。資格がある場合は痛み止めや強心剤のような薬剤の注射も行う事がある。
*2 ちなみに自衛隊における軍医「防衛医官」は、初任階級が二等陸海空尉（外国軍における中尉）となっている。
*3 衛生兵に助けられて復帰した兵士は、また戦場に戻ってきて敵を殺そうとするだろう。
　　すなわち、衛生兵を数人殺すことは、近い将来に出現して味方を殺すはずの増援部隊を一つ全滅させるのと同様の価値を持っているのである。

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