【ワスプ】(わすぷ)

Wasp(スズメバチの意)*1
この名前はイギリス海軍やアメリカ海軍艦艇名に度々用いられている。

  1. CV-7 USS Wasp
    アメリカ海軍航空母艦
    ヨークタウン級の建造途中、ワシントン海軍軍縮条約に定められた制限トン数の余り枠を「使い切る」ために建造された。
    このためヨークタウン級を縮小するという特殊な形で設計されており、同型艦は存在しない。
    基準排水量は14,700トン。『レンジャー(CV-4)』と同様の小型空母となったが、ヨークタウン級の設計を反映させたため、排水量の割に実用性の高い艦となった。
    1940年に就役後、当初は大西洋に配備され、イギリス空軍スピットファイアを前線へ輸送するなどの任務に従事した。
    しかし1942年、ミッドウェー海戦で失われた『ヨークタウン』の穴を埋めるため、太平洋へ転戦。ガダルカナル島上陸の支援などに参加する。
    9月15日の第二次ソロモン海戦において伊15型?潜水艦『伊19』の魚雷6本を受け、内3本が命中する*2*3
    軽量化のための装甲削減も相まって、艦載機が搭載していた爆弾や航空ガソリンに引火し、大爆発を起こした。
    火災で手の付けられなくなった本艦は、グリーブス級?駆逐艦「ランズダウン(DD-486)」の雷撃により自沈処理された。

    性能諸元
    排水量
    基準/満載
    14,700t/19,166t
    全長219.5m
    水線長210.3m
    全幅30.5m
    水線幅24.6m
    吃水
    (基準/満載)
    6.1m/7.08m
    飛行甲板225.9m×33.2m
    主缶ヤーロウ式重油専焼水管缶×6基
    主機パーソンズ式ギヤードタービン×2基 2軸推進
    出力70,000hp
    最大速29.5ノット
    燃料搭載量重油:1,602t
    乗員士官・兵員2,367名
    兵装Mk.12 38口径5インチ(127mm)単装高角砲×8基
    Mk.2 75口径1.1インチ(28mm)単装機銃×4基(1942年:16基)
    ボフォース 56口径4cm単装機銃×4基(1942年)
    エリコン 76口径20mm単装機銃×32基(1942年)
    90口径12.7mm単装機銃×16基(1942年)
    搭載機76機
    装備エレベーター×3基
    カタパルト×4基(飛行甲板×2基、格納庫×2基)
    装甲舷側:87mm(水線部)
    飛行甲板:32mm(最厚部)

    同型艦
    艦番号艦名主造船所起工進水就役除籍その後
    CV-7ワスプ
    (USS Wasp)
    フロント・リバー造船所1936.4.11939.4.41940.4.251942.9.151942.9.15戦没

  2. CV-18 USS Wasp
    エセックス航空母艦の10番艦*4
    当初は『オリスカニー』の名が与えられる予定だったが*5、撃沈されたCV-7から襲名した。
    太平洋戦争末期の日本空襲に従事する中、日本機の爆弾飛行甲板を貫通し、格納庫で爆発した。
    しかし引火・誘爆を免れたため、修理の後に復帰。戦後は攻撃空母対潜空母に艦種変更された。

  3. LHD-1 USS Wasp
    タラワ級の後継となる、アメリカ海軍の多目的強襲揚陸艦
    タラワ級をベースにしているが、当初からLCAC-1級エアクッション揚陸艇の運用を主眼に置いており、ウェルドックに3隻のLCACを収納することができる。
    武装はRIM-7「シースパロー」RIM-116「RAM」艦対空ミサイルの他、ファランクスやM242「ブッシュマスター」25mm単装機銃及びM2>ブローニングM2 12.7mm機関銃を装備する。
    機関は蒸気タービン2基2軸だが、8番艦の『マキン・アイランド』のみガスタービンに変更されている。

    スペックデータ
    主造船所リットン・インガルズ造船所
    排水量
    基準/満載
    28,223t〜/40,650t〜41,335t
    全長257.3m
    全幅42.7m
    吃水8.0m
    機関ウェスティングハウス式蒸気タービン(70,000shp)×2基2軸推進
    COGAG方式 2軸推進(LHD-8)
    GE LM2500ガスタービン(35,000hp)×2基
    補助推進システム(APS)
    (フェアバンクスME製ディーゼル発電機(4,000kw)×6基、補助電動機(5,000hp)×2基)
    最大速力22ノット
    乗員約1,100名(他に海兵隊員約1,894名)
    兵装Mk29 8連装ミサイル発射機(シースパロー用)×2基
    Mk49 21連装ミサイル発射機(RIM-116 RAM用)×2基
    ファランクスMk15CIWS×3基
    Mk38? 25mm機関砲×3基
    M2 12.7mm単装機銃×4〜8基
    C4IシステムGCCS*6+USQ-119(v)14 GCCS-M+ITAWDS(TDS+リンク14/16+IBS)
    SSDS*7 Mk.2(ACDS)+Mk.91 FCS+SYS-2 IADT
    レーダーSPS-48 3次元対空捜索レーダー
    SPS-49 2次元対空捜索レーダー
    SPS-67対水上レーダー
    Mk.23 TAS 目標識別レーダー
    電子戦
    ・対抗手段
    SLQ-32(V)3 統合電子戦装置
    AN/SLQ-25「ニクシー」対魚雷囮装置
    AN/SLQ-49 囮装置
    Mk.36 SRBOC チャフフレア展開装置
    艦載機各種ヘリコプター(AH-1WUH-1NCH-46CH-53EMH-60R等)30機(最大42機)
    ハリアーII6〜8機(地上支援・制海任務時:最大20機)
    搭載能力上陸用にLCAC×3隻、海兵隊1個大隊(約2,000名)を始め
    M1A1×5輛
    M2歩兵戦闘車AAV7水陸両用装甲車・LAV-25装輪装甲車×25輛
    ハンヴィー
    M198? 155mm榴弾砲×8門
    各種トラック・補給車及び支援車輛×90両を搭載可能。

    同型艦
    艦番号艦名起工進水就役退役
    LHD-1ワスプ
    (USS Wasp)
    1985.5.301987.8.41989.7.29
    LHD-2エセックス
    (USS Essex)
    1989.3.201991.2.231992.10.17
    LHD-3キアサージ
    (USS Kearsarg)
    1990.2.61992.3.261993.10.16
    LHD-4ボクサー
    (USS Boxer)
    1991.4.181993.8.131995.2.11
    LHD-5バターン
    (USS Bataan)
    1994.6.221996.3.151997.9.20
    LHD-6ボノム・リシャール
    (USS Bon Homme Richard)
    1995.4.181997.3.141998.8.15
    LHD-7イオージマ
    (USS Iwo Jima)
    1997.12.122001.3.252001.6.30
    |LHD-8|マキン・アイランド
    (USS Makin Island)|2004.2.14|2006.10.22|2009.10.24||

  4. P&W R-1340"Wasp"
    アメリカのプラット&ホイットニーで開発・製造された航空機用空冷星型エンジン。
    原型は1926年に開発され、空冷星型エンジンの技術を確立し、「ワスプ」の名称で非常に多くの機体に用いられた。
    派生型も生産され、F4U「コルセア」P-47「サンダーボルト」F6F「ヘルキャット」など、多くの航空機に搭載された。

    【性能緒元】
    タイプ空冷星型9気筒
    ボア146mm
    ストローク146mm
    排気量22.02L
    全長1,119mm
    直径1,305mm
    空虚重量365kg
    出力542hp(404kW)(2,200rpm回転時、高度1,525m)
    バルブ機構2オーバーヘッドバルブ
    過給器定速式遠心圧縮機(減速比10:1)
    燃料系統2バレルストームバーグ・キャブレター
    燃料80オクタン価ガソリン

    【派生型】
    • R-1340「ワスプ」:
      原型モデル。
      P-26?DHC-3?T-6などに搭載。

    • R-985「ワスプ・ジュニア」:
      R-1340の縮小モデル。全長1,057mm、直径1,162mm、重量277kg。
      ビーチクラフト? スタッガーウィング?ロッキードL-10?ヴォート?OS2U?などに搭載。

    • R-1830「ツインワスプ」:
      複列14気筒モデル。
      F4FSBDTBD?B-24PBY?DC-7/C-47などに搭載。

    • R-1535「ツインワスプ・ジュニア」:
      R-1830の縮小モデル。
      F2F?SBC?SB2U?などに搭載。

    • R-2800「ダブルワスプ」:
      複列18気筒モデル。
      P-47F4UF6FF7FF8FB-26などに搭載。

    • R-4360「ワスプ・メジャー」:
      四重星型28気筒のワスプシリーズ最終モデル。
      B377?B-50B-36TB2D?などに搭載。

  5. Westland Wasp
    イギリスのウェストランド(現アグスタウェストランド)が開発した対潜ヘリコプター
    同社のスカウトは兄弟機種で、ともにイギリス最初期のターボシャフト式ヘリコプターにあたる。
    小型ながら誘導魚雷2本を携行することができたが、対潜捜索装備はなく、ハンターキラーのキラー役として運用された。
    133機が生産され、イギリス海軍のほか、ブラジル、オランダ、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、南アフリカにも輸出された。

    【スペックデータ】
    乗員2名+兵員4名
    全長12.30m
    全高2.72m
    全幅9.83m
    円板面積75.9m²
    主ローター直径9.83m
    空虚重量1,569kg
    最大離陸重量2,500kg
    発動機ロールス・ロイス? ニンバス103ターボシャフト×1基(710shp)
    巡航速度177km/h
    航続距離488km
    実用上昇限度3,720m
    上昇率7.3m/s
    武装Mk44対潜魚雷×1発またはMk46対潜魚雷×2発、WE177戦術核爆弾またはMk44爆雷×2発、
    SS.11対戦車ミサイル×4発(後にAS.12対艦ミサイル×2発に更新)、7.62mm機銃など

    【派生型】
    • P.531:
      試作機。

    • シースカウト HAS.1:
      イギリス海軍向け生産型。

    • ワスプ HAS.1:
      対潜哨戒機型。


*1 全て大文字で標記した場合は、アメリカ大陸へのヨーロッパ大陸からの初期移民者の中心層であった「白人・アングロサクソン・プロテスタント」の略となる。
*2 さらに、命中しなかった魚雷3本のうち2本は偶然にも10km先を航行していた戦艦「ノースカロライナ?」とシムス級?駆逐艦「オブライエン(DD-415)」に1本づつ命中し、両艦を大破させた。
*3 特に「オブライエン」は損傷が酷く(隔壁が破損し、船体にクラックが発生していた)、現地にて応急修理が行われた後、本格的な修理を行うためサンフランシスコへ向かう途中に沈没している。
*4 タイコンデロガ級を除いた場合は8番艦となる。
*5 この艦名は後にCV-34へ与えられている
*6 The Global Command and Control System:汎地球指揮統制システム
*7 Ship Self-Defence System:艦艇自衛システム

トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS