【ロータリーエンジン】(ろーたりーえんじん)

  1. 星型空冷式レシプロエンジンの一種で、通常とは異なりクランクシャフトが胴体に固定され、シリンダーの方がプロペラとともに回転するもの。
    2.と区別するため「ロータリー・レシプロエンジン」と呼ばれることもある。
    エンジン本体が回転することにより、より多くの風を当てることが出来、通常のエンジンよりも冷却効率に優れること、また、シリンダーブロックがフライホイールを兼ねるため、エンジン全体の重さを軽減できるとして初期の飛行機に用いられた。
    しかし、回転するピストンにバルブを備えるなど機構が複雑であり、またジャイロ効果から、姿勢制御を行うと突然意図せぬ方向へ機首が振られること*1等と問題が多く、飛行機の大型化にともなってエンジンも大型化していったことや、熱伝導率の良いエンジン素材の採用などからメリットを失い、ほどなく廃れていった。

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  2. 燃料の燃焼エネルギーを回転運動に変換して動力とするエンジン
    レシプロエンジンと異なり、燃焼エネルギーをローターと呼ばれるおむすび型の部品で受けて直接回転運動に変換するため、レシプロエンジンに比べて振動が少なく、部品点数も少ないうえ、サイズも小さい。
    また、ノッキングを起こしにくいため、オクタン価の低いガソリンでも高回転を得やすい。
    副次的にではあるが、レシプロエンジンの6気筒とほぼ同等の燃焼間隔のため、排圧が高く、過給機との相性もよい*2
    ただし燃費や耐久性がレシプロエンジンに劣り、発熱量も大きいため、あまり広くは用いられない。
    将来の展望としては、水素を燃料とした「水素ロータリーエンジン」が研究されている。

    ドイツのNSU社(現アウディ)とフェリックス・ヴァンケル博士が共同開発したため「NSUヴァンケルエンジン」あるいは単に「ヴァンケルエンジン」とも呼ばれる。
    しかしNSU社自身が販売したロータリー搭載車は磨耗*3や不完全燃焼*4などの問題が深刻で、実用品とは言い難いものだった。
    その他にも多くの企業が実用化に向けて研究をしたが、現在のところ、世界でも日本のマツダだけが採算レベルでの実用化に成功しており、1967年に発表した「コスモスポーツ」を筆頭に、RX-7(SA22C、FC3S、FD3S)からRX-8*5に至るまで、主力のスポーツカーでは欠かせない存在となっていた。*6

    ロータリーエンジンの排気量(ピストン部分の容積)は「単室容積×ローター数」(例えば13Bは「654cc×2」)となるが、税法上(自動車税など)はこれに係数1.5を掛ける。
    そのため、RX-7(SA22C、FC3S、FD3S)やRX-8に搭載されている13B系*7(654cc×2)の場合「654cc×2ローター×係数1.5=1962cc」で、税法上は2.0リッター扱いとなり、ユーノスコスモに搭載されている、3ローターの20B-REW(654cc×3)だと「654cc×3ローター×係数1.5=2943cc」で3.0リッター扱いとなる。

    レシプロエンジンよりも軽く、ノッキングしづらく、タービンエンジンよりも燃費に優れることから、一部の小型航空機では補助動力として用いられることもあった。
    また実用面以外では、その小ささからホビー用のラジコンヘリコプターに用いられることもある。

    参考リンク:マツダのくるまづくり ロータリーエンジン
    http://www.mazda.co.jp/philosophy/rotary/

*1 特にソッピース社の「キャメル」戦闘機ではこの現象が顕著に表れ、前触れのない意図せぬ機首の上下により離着陸時に多数の死者を出している。
*2 ただし耐久性の問題で、過給圧はレシプロエンジンほど高くできず、実用レベルでは100kPa程度が限度である。
*3 アペックスシールがローターハウジングに残す傷(チャターマーク)は「悪魔の爪痕」と言われ、その解消こそが耐久性の鍵であった。
*4 燃焼室が常に移動しているので、燃焼の偏りや温度低下が起き易く、燃焼室の形状自体もレシプロエンジンに比べて劣る。また、材質や形状等のアペックスシール自体のシール性の問題もあった。
*5 2011年10月、「2012年6月に生産終了予定」と発表された。
*6 マツダは将来のロータリー搭載車に意欲を示しているが、現在具体的な販売計画は示されていない。
*7 SA22Cは12A(573×2)で13Bより若干排気量が低い。また、FC3Sは13B-T、FD3Sは13B-REW、RX-8は13B-MSPとなり、基本設計は同じであるが、吸排気ポートや、過給機の有無等の補機類の仕様が異なる。

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