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【レーザー】 †
Laser : Light Amplification by stimulated Emission of Radiation
(誘導放出による光増幅)の頭文字をとったものである。
レーザー光の主な特徴は
- 単色性:光のスペクトル幅の波長に対する相対比が非常に小さい(He-Ne で≒10^(-6))
- 指向性:自然光に比べ、遥かに広がらない(He-Ne で広がり角≒10^(-4)rad)
- コヒーレント性:同波長・同位相を持った光の放出。
すなわち、一般の自然光は様々な波長を持った光の集合であり、特徴としては、自然では蛍光灯の光を合わせても光強度が単純に重ね合わさるだけであるが、レーザー光同士をあわせると縞模様(干渉)が出来る。
制御の観点から言うと、自然光は小学一年生に行進をやらせるようなもので、絞りきることが出来ないなどとても制御には向かないが、コヒーレントなレーザー光は管理の行き届いた軍隊のようで、波長程度の大きさまで焦点を絞ることが出来るなど、微細加工など様々な用途に使うことが出来る。
(簡単な)原理 †
レーザーは3つの部分から成り立つ。すなわち、外部からエネルギーを与える装置・レーザーを増幅する媒質・共振器である。まず、前2つについて説明する。
原子は原子核と電子で構成されている。外部からエネルギーが与えられると、電子はある一定の飛び飛びエネルギーを持つことが出来る。これをエネルギー準位という。
そしてエネルギーを与えられた電子は不安定な存在であるため、極短い時間(1μs以下)に元の状態に戻ろうとする。その際、持っていた一定のエネルギーを光として放出する。これを自然放出といい、発光ダイオードの基本原理である。物質により波長(青・赤etc)はある程度決まっているが、レーザに比べれば遥かにコヒーレントではない。
放出にはもう一つある。隣の電子の光の放出を受けると、つられて他の電子も持っていたエネルギーを放出することがある。この放出による光は、受けた光と同波長・同位相、すなわちコヒーレントな光である。これを誘導放出という。また、エネルギーを持っていない電子が隣の電子の光の放出を受けると、光を全て吸収する。これを誘導吸収という。
さて、ある物質の電子に一定のエネルギーを持たせるためにはどうすればよいであろう。外部から光を与える(光励起)、ネオン管のように放電する(電子衝突励起)、電子を注入する(つまり電池をつなぐ)などといった方法がある。これが励起である。半導体レーザーが効率が高いわけは、電流を直接与えることにより励起できるので、光励起などの必要が無いためである。励起する電子の数は与えるエネルギー次第である。
媒質中には励起されている電子(励起有)と励起されていない電子(励起無)が存在する。先に述べたように励起有電子は光を放出し、励起無電子は光を吸収する。もし、励起無電子数が励起有電子数を上回っている場合、励起有電子が放出しても、励起無電子の吸収量が上回ってしまい、光は外へ出てこない。しかし、励起有電子の数が励起無電子を上回ると光の放出が上回るだけでなく、上回った分の光の放出が他の電子の誘導放出を促し、連鎖的にコヒーレント光が増幅する。この状態を反転分布状態といい、光増幅の状態である。これだけで増幅を行うものを光アンプと呼ぶ。
さて、ここで共振器がでる。これまでで得られた誘導放出は残念ながら小さい。更なる増幅を行い、更に一方光に対するコヒーレントな光とするのが共振器である。
共振器は真ん中に媒質を置いた平行平面鏡(いわゆる高反射率を持つ合わせ鏡の間に媒質を置く)から成り立っている。そして、平行平面鏡の距離を適当に取ると、ある条件を持つ波長のみが選択される。また、その波長の光は平行平面鏡で反射され、媒質中を何百回も行き来する。先ほども述べたように、媒質中では光増幅が行われる。そのため、行き来すればするほど増幅されるということになる。すなわち増幅されたコヒーレントな光が得られたことになる。また、鏡間から実際に外に光を脱出されなければ意味が無いので、片方の鏡を強度に応じて透過率が変わる鏡にしたり、一部透過率を持たせる。
当然、この共振中は鏡や媒質中において損失・透過が起こるので、反転分布ぎりぎりの状態では共振しない。また、増幅率は例えばHe-Neレーザーでは0.1%/cmのオーダーと小さいため、十分な光強度を得るためには何百回と行き来する必要がある。
歴史 †
理論自体はアインシュタインに遡る。あのノーベル賞を取った光電効果を発展し、誘導放射を提唱したのが先駆けである。
実際の研究はまずメーザー(Maser:Microwave)からスタートした。ベル研により軍事用レーダーの性能向上のために電波の周波数をあげる研究の中から開発された。現在原子時計としても使われている技術である。
それに続いて更に波長が短いLaserの研究が始まった。これには大学諸機関だけでなく、IBM,GE,Bellなど様々なグループが関わった。勿論米国防省?も例外ではない。
そして1960年メイマン(米,ヒューズエアクラフト)によってルビーレーザー(固体レーザー)としてもたらされた。同年さらに、He-Neなどの気体レーザが開発された。
そして、人類に最も貢献したと思われるのが、室温半導体レーザー(1970年)である。光エレクトロニクスという一大分野を作り出した。光通信や光学ディスクの光源、コンサートやイベント会場での演出装置などとしてお馴染みである。
現在存在する主なレーザーは、材料から大きく分けて
- 固体レーザー:主に光励起 可視〜近赤外領域 波長可変なレーザ有
AL-1の目標追跡・誘導用レーザーは、「LD(LaserDiode?:半導体レーザー)光励起によるYb:YAGレーザー」であり、波長可変な固体レーザー。(Yb:YAGレーザーは赤外光(1.030μm付近)かつ比較的高効率大出力でもっとも広く使われる大型レーザー)。 - 気体レーザー:主に放電励起 紫外〜遠赤外
波長が豊富だがレーザー利得が非常に小さい(He-Neで0.01%〜0.1%)
AL-1の測距用レーザーは、CO2レーザー。(CO2レーザーは遠赤外光(≒10.6μm)かつ高効率大出力で、He-Ne程ではないが、一般的なレーザー)。AL-1の迎撃レーザーである酸素沃素化学レーザもこの範疇に入る。 - 液体(色素)レーザー:光励起 波長可変 紫外〜近赤外
気体レーザーに比べて優れている点は、溶媒を変える(この作業は煩雑ではあるが)ことにより波長を容易に変えられる特性である。主に研究用途に使われている。 - 半導体レーザー:他のレーザーに比べ 小型、高効率、低消費電力、長寿命、波長の広がりが比較的大きい(広がり角が大きい)、大出力のものも開発されているが高価
[一般的]III-V族化合物半導体0.6〜1.6μm [特定分野]PbSSe系半導体3〜30μm(波長可変) さらに非線形光学結晶を使って波長を変換できる。
III-V族ではGaAlAs?(YAGレーザー励起・レーザープリンタ等)やInGaAsP(光ディスク・ファイバー等),GaN(研究中)がある。発光ダイオードによく似ている。
軍事用途の観点からは、光通信・距離測定・レーザーレーダー・ミサイル誘導・物理的な攻撃手段(いわゆる「破壊殺人光線」)などとして広く利用されている。
レーザーは確実に危険な光である。
虫眼鏡を使って太陽光を集めても1mm当り50mW程度であるが、レーザーは場合によっては、1mm当り数十W(1000倍)、パルスならば数KWにも及び、金属ですら穴を開けることが出来る。
絶対に人にむけてはならない。*1