【モスクワ】(もすくわ)

旧ソ連が開発したヘリコプター空母
NATOコードでは「モスクワ」級と呼ばれるが、ソ連ではプロジェクト1123「コンドル」型と呼ばれる。
全通式飛行甲板を持たず対潜武装が主眼であることから、ロシア海軍では対潜巡洋艦(Protivolodochnyy kreyser=PKR)と呼ぶ。
(モントルー条約により、ボスポラス海峡・ダータネルス海峡への軍艦の通行を制限*1しているという事情もある。)

本級はヨーロッパ方面で活動しているアメリカ・イギリス等の戦略ミサイル潜水艦に対抗するために開発(Nevskoye計画と言う)されたものである。
1番艦「モスクワ」(1967年)と2番艦「レニングラード」(1968年)がニコライエフ造船所?で製造された。
この後も3番艦以降の建造が計画されていたが、財政的な面と、西側戦略潜水艦の技術改良が進んで搭載する弾道ミサイルの射程が延び、ソ連勢力圏下の海域まで進出することがなくなったことから、計画は中止されている。

当時のソ連海軍艦艇の中では最大となった艦で、多数のヘリコプターを搭載するために艦形は幅広でずんぐりとしている。
動力は通常動力式で蒸気タービンを搭載している。
設計思想通りに、武装は対潜攻撃に力を入れており、RBU-6000「スメルチ-2」?対潜ロケット砲やRPK-1対潜ロケット(核爆雷を弾頭に搭載可)の他、Ka-25「ホーモン」対潜ヘリコプター(通常時14機程、最大で18機搭載)には450mm対潜魚雷核爆雷を搭載できる。
このように対潜攻撃能力は高い反面、逆に対空攻撃能力は低く、対艦攻撃能力については殆ど無い。

就役当時は北海艦隊・バルチック艦隊等に所属し、主にバルト海・北海の哨戒任務に当っていたが、1973年の第四次中東戦争後、中東地域にも出現している。
現在では全艦が退役し、その任務は後継のキエフ級に受け継がれた。

スペックデータ

艦名モスクワ級対潜巡洋艦
主造船所61コムーナ工廠(ニコラエフ造船所)
船形後部飛行甲板型
全長189.1m
全幅25.9m
飛行甲板34.1m(最大)
排水量
基準/満載
11,920t(14,000t(キエフ))/17,500t
機関蒸気タービン方式
KVN-95/64型加圧燃焼水管缶×4缶
TV-12型ギヤードタービン×2基(出力45,000hp)
スクリュープロペラ×2軸
速力28.5kt
乗員個艦要員:700名
航空要員:104名
航続距離14,000海里(12ノット)/6,000海里(18ノット)
兵装AK-725 80口径57mm連装速射砲×2基
M-11M「シュトルム」(SA-N-3「ゴブレット」)?SAM 連装発射機×2基
(ミサイル48発)
RPK-1「ヴィフリ」(FLAS-1 SUW-N-1 Ugra)SUM? 連装発射機×1基(20発)
RBU-6000「スメルチ1」? 12連装対潜ロケット砲×2基
5連装533mm魚雷発射管×2基(後に撤去)
設備ヘリポート×4基
エレベーター×2基
標準搭載機Ka-25「ホーモン」哨戒ヘリコプター?×14機
FCS4R60「グロム」×2基(SAM用)
MR-103×2基(主砲用)
PUSTB-1123「スプルト」水中攻撃指揮装置(UBFCS)
C4IシステムMVU-201「コレニ1123」戦術情報処理装置
モレ-U 戦術データリンク装置
レーダーMR-600「ヴォスホード」3次元式レーダー×1基
MR-310「アンガラーA」3次元式レーダー×1基
ソナーMG-342「オリオン」艦底装備式ソナー×1基
MG-325「ヴェガ」可変深度式ソナー×1基
電子戦
防御装備
MRP-11-16 電波探知装置×2基
MP-150 電波妨害装置×1基
MP-152 電波妨害装置×1基
ZIF-121 チャフ発射機×2基


同型艦

艦番号艦名起工進水竣工除籍所属艦隊備考
701モスクワ
«Москва»
1962.12.151964.1.141967.12.261996.11.7黒海1997.
インドで解体
702レニングラード
«Ленинград»
1965.1.151968.7.311969.6.21991.6.241991.9.
ギリシャで解体
703キエフ
«Киев»
1968.2
(予定)
-1968.12.建造中止
1969.廃棄



*1 航空母艦ならびに8インチ(20.3cm)以上の口径の砲を搭載する主力艦は通過できない。

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