【マルチロールファイター】(まるちろーるふぁいたー)

Multi Role Fighter (MRF)
複数の用途に対応できる戦闘機のこと。
「多用途戦闘機」「スイングロールファイター(Swing Role Fighter)」とも。
代表的な機種としてはF/A-18などが挙げられる。

かつて軍用機戦闘機攻撃機爆撃機偵察機など目的別に設計されていた。
これは当時のエンジン技術、つまりペイロード搭載能力に大幅な制約があったためである。
攻撃機が敵戦闘機と交戦する際は、任務遂行を放棄して爆弾を捨てる必要があるほどだった*1

しかし20世紀後半の技術進歩に伴い、搭載能力の余裕は大幅に改善された。
戦闘機対空対地両方のミサイルを抱えたまま十分な機動力をもって飛ぶ事も可能になったのである。
これによって戦闘機攻撃機を兼ねる機種、マルチロールファイターが誕生した。

攻撃機空対空ミサイルで敵戦闘機に反撃できるため、空戦での生還率は上昇する。
また、地上の対空砲空対地ミサイルで反撃できるため、地上攻撃任務の生還率も向上する。
無力な攻撃機爆撃機を守るために護衛戦闘機を配備する必要もなく、作戦も効率的になる。
必要な軍用機を配備するために作戦延期・中止・変更などを行う必要性も減少する。
機種ごとに個別の整備・操縦技術を習得したり交換部品を調達する手間を省く事で兵站にも寄与する。

1980年代以降に登場した戦闘機は、ほぼ全てマルチロールファイターである。
その設計思想は湾岸戦争戦訓によって有効性が実証された。
米軍のF/A-18はイラク軍の迎撃戦闘機MiG-21)を撃墜し、かつ爆撃をも成功させて帰還。
旧来の戦闘機攻撃機爆撃機の存在意義をほぼ完全に過去のものとした。

関連:DRF マルチロールアタッカー

mrf.jpg

AGM-65空対地ミサイルを発射するF-16戦闘機
Photo: USAF


*1 航空用爆弾は軽いものでも250kgを越える。巨大な重石を抱えながら飛ぶようなものだ。

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