*&ruby(べるさいゆじょうやく){【ベルサイユ条約】}; [#x44b11b2]
[[第一次世界大戦]]に敗れたドイツと連合国との間で結ばれた講和条約。~
フランスのベルサイユ宮殿で調印されたことからこう呼ばれる。~
この条約を元にして、翌年、国際連盟が発足した。~
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1919年、パリ講和会議において第一次世界大戦に関する戦後処理が話し合われ、ドイツはこれにより~
-[[徴兵制]]の廃止~
-[[陸軍]]の兵力は10万人以下(将校は4,000人以下)~
-[[海軍]]の兵力は1.5万人以下~
-全[[軍用航空機>軍用機]]の廃棄処分及び[[空軍>ルフトバッフェ]]((当時の正式名称は「ドイツ帝国陸軍航空隊」であった。))の解散~
-軍艦の保有は36隻以下~
-[[潜水艦]]の保有禁止~
-参謀本部の廃止~
-各種軍需物資の生産の制限~
-バルト海沿岸における軍事施設の建設禁止~
-海外[[植民地]]の放棄((日本はこれにより、中国大陸の山東半島及び南太平洋のミクロネシアを(後者は国際連盟からの「委任統治」として。ただし、アメリカ領だったグアム及び赤道以南を除く)獲得した。))~
-賠償金の支払い(具体的な金額は後日協議)~
-一部[[領土]]の割譲~
-元ドイツ皇帝・ウィルヘルム二世を戦犯として引き渡す(自身がオランダへ亡命したため実現せず)~

など、全247ヶ条からなる講和条約を結ばされた。~
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しかし、その実態は連合国の既得権益確保と上記のようにドイツに対する極めて厳しい制裁を課すものであった。~
ドイツは暫定的に200億マルクの賠償金を支払うとされていたが、1921年に賠償金額策定委員会によって更に増額され、合わせて1320億マルクとなった。~
これは、1913年当時のドイツのGNP(国民総生産)の2.5倍に匹敵し、現在の価値にすると7800億ドル相当(1ドル=108.68円換算で約84兆7704億円)という莫大なものであった。~
この支払のため、ドイツの中央銀行「ライヒスバンク」は紙幣を大量発行し((これは、賠償金の支払いにあたってドイツが外貨に両替した上で支払うことになっていたのと、フランスが賠償金の支払い遅延に対抗するために占領したルール地方の労働者に対する賃金保障を行っていたためでもある。))、その結果「朝と夕方で物価が違う」とまでいわれた凄まじいインフレに陥り、経済が大混乱した。~
>その後、賠償額は順次軽減され((同時に、支払い方法も「ドイツがマルクで支払い、受け取った国が自国の貨幣に両替する」方法に変更された。&br;  また、賠償金支払いのための債券が発行され、支払い対象国がこれを引き受けることとなった。))、最終的に「1934年までに、これまでの支払額(賠償金総額の約1/8)に加えて30億マルクを支払うことで賠償を終了させる」こととされたが、ナチ政権が支払を拒絶した((ただし、アメリカ以外の国民に対する債券の利子は支払われている。))ことと[[第二次世界大戦]]、及び米ソ冷戦による混乱のため、支払いは中断。~
1990年のドイツ再統一後、利子の支払が再開されることとなり((これは、1953年に旧西ドイツ政府が西側諸国との間で締結した「ロンドン債務協定」により、賠償金支払いのために発行された債券の利子を支払うことを約束したためである。&br;  なお、この時点で賠償金の元本は116億マルク残っていた。))、2010年に7500万ユーロ(1ユーロ=121.06円換算で約90億7950万円)が債務者に支払われ、ようやくアメリカに対する債務が完済された((なお、ドイツが支払うべきとされている債務そのものは、現在でもまだ約2000万ユーロ(1ユーロ=121.06円換算で約24億2120万円)残っているが、債権者からの請求が行われていないため、将来的には無効になると見られている。&br;  また、わが国は賠償緩和案「ヤング案」に基づく協定の当事国のひとつとなっており、賠償を受ける権利を有していたが、1952年のサンフランシスコ平和条約により対ドイツ賠償請求権を放棄している。))。

また、これに合わせて列強の利害関係に伴う様々な個別の条約が結ばれ、その後のヨーロッパは[[ベルサイユ体制]]と呼ばれ、そのいびつな状態が[[第二次世界大戦]]の遠因となったとも言われている。~
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関連:[[ワイマール共和国]] [[ドイツ革命]] [[ベルサイユ体制]]~

**余談 [#c94fa214]
フランス・スペインの国境にあるアンドラ公国は、連合国陣営に加わって大戦に参加していたが、軍の総兵力が11名とあまりにも小さいために存在を忘れ去られ、条約締結に呼ばれなかった。~
そのため、同国は形式上「第一次世界大戦を継続したまま第二次世界大戦にも参戦した」ことになってしまった。

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