【フリッツX】(ふりっついくす)

第二次世界大戦中、ルフトバッフェ(ドイツ空軍)が配備した世界で最初の誘導爆弾である。
正式名称は ルールシュタール/クラマー X-1(Ruhrstahl/Kramer X-1)。
装薬の種類から破砕爆弾のSD1400X、榴散弾のFX1400X、徹甲爆弾のPC1400Xの3つに分類される。

誘導方式には手動指令照準線一致誘導方式を採用。
搭載母機の爆撃手が照準器でもって弾体後部に付けられたフレアを観測しながらジョイスティックを用いて誘導する。*1

初の実戦投入は1943年9月の事で、英米連合軍降伏した上寝返ったイタリア海軍艦艇への攻撃任務であった。
この作戦では、3機のDo217?*2より投弾したPC1400X-1が戦艦「ローマ」の前部弾薬庫、機関室、左甲板(第2砲塔と艦橋の間近)に命中し爆沈、戦艦「イタリア」(旧称「リットリオ」)を大破させた。

同時期の英米連合軍による「アヴァランチ作戦」(独呼称「サレルノ水際戦」)では、部隊の上陸支援を行っていた英米海軍を襲撃。
英戦艦クイーン・エリザベス級「ウォースパイト」、米軽巡洋艦ブルックリン級「サヴァンナ」ほか輸送船を大破させ、サヴァンナは深刻な浸水が発生し、ウォースパイトは航行不能に陥った。
また、対地上物攻撃にも使用されている。

最終的に1,386発が生産されたものの実戦に投入された数は多くない。1943年〜44年までに約半数が性能試験に使用された。

戦後、戦勝国が開発した初期の誘導爆弾並びに対艦ミサイルは、押収したX-1とHs293?の解析結果を基に作られたものである。

スペックデータ

全長3.26m
全幅1.35m(フィン含む)
胴体直径56cm
重量1,570kg
最大速度1,035km/h(諸説あり)
弾頭アマトール爆薬
弾頭重量320kg
飛行高度5,000〜7,000m
射程5km
推進方式無し
誘導方式手動指令照準線一致誘導(Kehl/Strassburg : FuG203 & FuG230)


派生型


  • X-1:
    基本生産型。
    基本型以外にも多くの派生型が作られたが量産はされていない。

  • X-2:
    降下速度の増速と赤外線誘導装置の搭載を予定したもの。

  • X-3:
    弾体を大型化し、音速以上の降下速度と射程延長を計画したもの。

  • X-4?
    空対空ミサイル型、詳しくは項を参照。

  • X-5:
    弾体をさらに大型化し、増大した空気抵抗により減速した降下速度を質量増大(装薬量増量)で解決を図ろうとしたもの。
    総重量は2,250kgに達した。

  • X-6:
    弾体先端と炸薬を強化した重徹甲爆弾型。

  • ペーターX(Perter X):
    先行試作品の中の1つで、X-5に相当する大きさだが装薬量はX-1程度しかない。*3


*1 後期には航空灯が追加され、夜間爆撃での姿勢識別を容易にしていた。
*2 Ju88?若しくはHe111?とも言われており、定かでは無い
*3 He177?のマニュアルには2,500kg爆弾として記載されている。

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