【フラッグキャリア】(ふらっぐきゃりあ)

(National)Flag Carrier.

海運・航空業界において、ある国を代表すると認知された会社を指す言葉。

元々は外航船舶において、夜間に港へ着岸したときにマスト上の国旗を照らし、国籍を明示していた慣習に由来する。
その後、20世紀になってから航空業界でも使われるようになったが、現在は海運業界では使われなくなったため、「ある国を代表する航空会社」という意味で広まっている。

ある航空会社が「何をもって」フラッグキャリアとみなされるかについて明確な定義はないが、一説では「国を代表して国際線を運航している航空会社」とされている。
これは、1944年に採択された国際民間航空条約において、国際航空路線の開設・運営が二国間協定に基づくものとされ、更に「国際航空路線を運航する航空会社は、それぞれの締約国内で営業する会社でなければならない」という「国籍条項」から、締約国政府が相互に国内の1社を運航会社に指定していたことの名残である。
このため、1970年代まで国際航空路線は各国のフラッグキャリアによって営まれるのが基本だった。

しかし、1978年のアメリカを皮切りとした航空自由化によってこの状況は変化しだした。
経営破綻により会社そのものが消滅してフラッグキャリアが存在しなくなった国(アメリカやベルギー・ペルーなど)や、国内最大の航空会社が他国航空会社の傘下に組み込まれている国、格安航空会社や新興航空会社を含めた複数の企業体が国際線に就航している国などがあり、現在では「フラッグキャリア」という概念は変動しつつある。

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公的企業体、として

かつて「フラッグキャリア」とされた航空会社は、同時にその国で一番歴史の古い(あるいは唯一の)航空会社であった、という国も多く、資本主義国家であっても国営、もしくは「半官半民*1」といった経営形態が取られ「公的企業体」の性格をも帯びていた。
そうしたことから、フラッグキャリアは母国政府や軍隊の要請や徴用により、自社の持つフリートや営業ネットワークを使って以下のような公的サービスを提供することもあった。

  • 兵站の補助。
    戦時・大災害時における兵員・資材の輸送、戦地に在留する自国民や被災者の救援などに従事して空軍の輸送部隊を補助する。
  • 国家元首や国賓・閣僚などの要人が公務で旅行する際、空路の移動手段を提供する任務*2
  • 諜報機関の要員隠密輸送。
  • 軍を退いた軍用機エビエーターの再就職先。
    予備役に編入、あるいは退役した操縦士が再就職するケースが多く、戦時には徴用の対象ともなりえた*3

*1 「資本金の一部を国が出資して大口株主になる」「政治家や航空行政に関わる官僚、あるいはそのOBを役員に起用する」などにより、経営に政府の意思を関与させるもの。
*2 この任務には軍隊(特に空軍)が携わる国も多い。
*3 現代の軍用機操縦士は、高度な判断と技量が必要とされることから養成課程で将校としての教育を同時に受け、少尉以上の階級で遇されるのが普通である。
  しかし、士官学校同期卒の一般将校に比べれば出世のスピードは遅いのが普通で、多くが佐官で予備役編入されるか地上勤務に転じるか退官する。
 (ある程度の規模の大手企業における「総合職社員」と「技術職社員」との出世スピードの差異がイメージに近しいと思われる)


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