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*&ruby(ふらっぐきゃりあ){【フラッグキャリア】}; [#sb5d92af]
(National)Flag Carrier.~
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海運・[[航空]]業界において、ある国を代表すると認知された会社を指す言葉。~
海運・[[航空]]業界において、特定の国家を代表する有力な貿易・運送業者を指す言葉。~
電信技術が未発達な時代、所属を明らかにするために国旗を用いた慣習に由来する((別の一説には「国に束縛され『旗振り』をさせられている傀儡企業に対する揶揄が由来」というものもある。))。~
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元々は外航船舶において、夜間に港へ着岸したときにマスト上の国旗を照らし、国籍を明示していた慣習に由来する。~
その後、20世紀になってから航空業界でも使われるようになったが、現在は海運業界では使われなくなったため、「ある国を代表する航空会社」という意味で広まっている。~
多くは国家予算による支援を含めた癒着関係にあり、これをもって業界の寡占を図っていた政商である。~
従って、各国の商業法規が独占・寡占を禁止し取引を自由化する政策に傾く現代において、残存するフラッグキャリアは多くない。~
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ある航空会社が「何をもって」フラッグキャリアとみなされるかについて明確な定義はないが、一説では「国を代表して国際線を運航している航空会社」とされている。~
これは、1944年に採択された[[国際民間航空条約]]において、国際航空路線の開設・運営が二国間協定に基づくものとされ、更に「国際航空路線を運航する航空会社は、それぞれの締約国内で営業する会社でなければならない」という「国籍条項」から、締約国政府が相互に国内の1社を運航会社に指定していた((同時に、その会社が当該国で唯一の航空会社だった、という国も多く、資本主義国家であっても公営事業として運営されていた会社も多かった。))ことの名残である。~
このため、1970年代まで国際航空路線は各国のフラッグキャリアによって営まれるのが基本だった。
>また、こうしたことから、フラッグキャリアとされた航空会社は政府や[[軍隊]]の要請や徴用により、自社の持つ機材やネットワークを使って以下のようなサービスを提供することもあった。~
-[[兵站]]の補助。~
戦時・災害時における兵員・資材の輸送、戦地に在留する自国民や被災者の救援など。
-国家元首や国賓・閣僚などの要人が公務で旅行する際、空路の移動手段を提供する任務((この任務には[[軍隊]](特に[[空軍]])が携わる国も多い。))。~
-[[諜報機関>スパイ]]の要員隠密輸送。
-軍を退いた[[エビエーター]]の再就職先。~
[[予備役]]編入、あるいは退役した[[操縦士>パイロット]]が再就職するケースが多く、戦時には徴用の対象ともなりえた。
海運分野では「定期船同盟行動憲章条約(コード条約)」の加盟国が承認した国家航路を担う海運業者を指していた。~
しかしこの条約はやがて形骸化し、2008年をもって失効している。~
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航空分野では[[国際民間航空条約]]加盟国の多くが、国際航路を運行する国内企業を一社のみに絞った事に由来する。~
この慣習による寡占は、[[第二次世界大戦]]終結後の1940年代後半から1970年代まで続いた。~
1980年代以降は各国で国際航路への参入が自由化され、フラッグキャリアの経済特権は崩壊した。~
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関連:[[45/47体制]]

しかし、1978年のアメリカを皮切りとした航空自由化によってこの状況は変化しだした。~
経営破綻により会社そのものが消滅してフラッグキャリアが存在しなくなった国(アメリカやベルギー・ペルーなど)や、国内最大の航空会社が他国航空会社の傘下に組み込まれている国、格安航空会社や新興航空会社を含めた複数の企業体が国際線に就航している国などがあり、現在ではフラッグキャリアという概念は変動しつつある。~
***フラッグキャリアとされた航空会社の一例 [#w9de31eb]
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関連:[[日本航空]] [[高麗航空]]
|社名|国名|備考|
|[[日本航空]]|日本国|2010年、(事実上の)経営破綻、2011年再建。|
|[[パンアメリカン航空]]|アメリカ合衆国|1991年経営破綻((ブランドとロゴの使用権はいくつかの別会社に引き継がれたが、いずれも短期間で運航を停止しており、2024年現在は航空会社としての運航は行われていない。))。|
|大韓航空|大韓民国| |
|[[高麗航空]]|朝鮮民主主義人民共和国| |
|[[ルフトハンザドイツ航空]]|ドイツ連邦共和国|ドイツが東西に分裂していた当時は、&br;東ドイツ側にも同名の会社があった((この会社は西側に「権利侵害」の訴訟を起こされて敗訴し、東ドイツのフラッグキャリア「インターフルーク」に吸収されて消滅している。))。|
|[[エールフランス]]|フランス共和国|現在、両社は[[連合>アライアンス]]を組み、&br;一つの企業体として運営されている。|
|[[KLMオランダ航空]]|オランダ王国|~|
|[[ブリティッシュ・エアウェイズ]]|グレート・ブリテン及び&br;北部アイルランド連合王国(英国)| |
|[[アエロフロート・ロシア航空]]|ソビエト社会主義共和国連邦&br;→ロシア連邦| |

**公共企業体としての側面 [#u54cf542]
かつて多くの国家はフラッグキャリアを保護したが、これはもちろん、国家戦略上の理由による。~
海運・航空輸送は[[兵站]]の欠くべからざる中枢であり、ゆえにフラッグキャリアは国家に統制されていた。~
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フラッグキャリアの多くは国営、ないし国家が大口株主となる半官半民企業であった。~
また、利権の見返りとして官僚や退役した高級軍人([[佐官]]・[[将官]])を役員として迎え入れる「天下り」の要求を受ける事も多かった。~
~
必然的に、フラッグキャリアは政府や[[軍隊]]に要請され、あるいは徴用されて公共サービスも請け負った。~
フラッグキャリアが請け負った負担としては以下のようなものが挙げられる。

-[[兵站]]資源および兵員、災害被災者・救援物資の輸送
-政府機関・[[軍隊]]の監督の下、以下のような「特殊な顧客・貨物」の輸送を手配する((この業務には[[軍隊]]([[海軍]]や[[空軍]])がつくこともある。))~
--公務を帯びて国内外を旅行する国家要人
---[[政府専用機]]((この用途には[[軍用機]]([[輸送機]])を充てる国もある。))の管理・運用
--司法当局から「厳重監視対象」とされた人物
--国際的なスポーツ競技会に参加する選手団など
--以下のような「出自をはばかる」必要のある顧客・貨物の隠密輸送
---[[諜報機関>スパイ]]や[[特殊作戦]]の要員
---他国からの制裁措置による貿易禁制品
-退役した船員・[[エビエーター]]を、戦時に[[予備役]]として徴用される事を承知の上で雇用する
-郵政官署・事業体からの委託による、国外向け郵便物の輸送


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