【ファランクス】(ふぁらんくす)

Mark15 Phalanx*1

アメリカで開発された20mm口径艦載ガトリングガンシステム。その見た目からR2-D2とも。
対艦ミサイルなどの飛翔体を至近距離で撃墜するCIWSとして運用される。
名称は古代ギリシアの歩兵戦術に由来し、重装歩兵の盾のように緊密な防御をイメージしての命名と思われる。

M61A1?機関砲と、これを搭載する砲塔火器管制装置のセットで一個の兵器とする。
普段は射手からの制御を受けて発射するが、緊急時には目標探知・識別・発射を全て全自動で行える。*2
電源とペイロード空間以外は独立したシステムで、換装・設置にさほどの手間はかからない。

1978年に開発が始まり、1980年にまず空母コーラル・シーに搭載された。
以後も段階的に改修を受け、最新型では高速艇などの水上目標も撃沈できるようになっている。

アメリカや日本の他、NATO各国海軍を始め、21か国で870セットの採用実績がある。

次世代への課題

ファランクスは兵器としてまずまず傑作に分類できるが、根本的な問題もいくつかある。

まず第一に、近年の航空脅威、特に対艦ミサイルに対して20mm機関砲の火力は十分でない。
目標の破壊に成功しても、残骸が運動エネルギーを残したまま艦に激突する可能性が否定できない。
実際、残骸の搭載爆薬が起爆したり、燃料に引火した事が原因で沈没に至った例もある。

また、ガトリングガンの発射速度に対して装弾数に不足がある。
発射速度は毎分3000発、つまり1秒で50発を消費し、必中を期するには数秒以上の連射を必要とする。
初期型は装弾数が1000発に満たなかったため、2〜3回迎撃するごとに給弾作業が必要になる有様だった。

こうした点から、ファランクスの採用を取りやめてRIM-116回転弾体ミサイルへと換装した艦もある。

スペックデータ

開発・製造者ジェネラル・ダイナミクス(現レイセオン)
口径20mm×102mm
銃身長1,520mm(ブロック0・ブロック1、L76砲身)
1,981mm(ブロック1B、L99砲身)
砲身長1,520mm(ブロック0・ブロック1、L76砲身)
1,981mm(ブロック1B、L99砲身)
銃砲身6本
全高4.7m
重量5,700kg
6,200kg(後期型)
俯角ブロック0:-10°/+80°
ブロック1:-20°/+80°(移動速度:86°/秒(ブロック0/ブロック1)
ブロック1B:-25°/+85°(移動速度:115°/秒(ブロック1B)
旋回角中心線からそれぞれ150°
(移動速度:100°/秒(ブロック0/ブロック1)、116°/秒(ブロック1B))
発射速度毎分3,000〜4,500発(選択式)、毎秒50〜75発
初速1,100m/s
有効射程1.49km
最大射程型式による
使用弾薬艦船用:徹甲弾、外皮付タングステン弾
地上配備型:高性能爆薬弾、自爆機能付き曳光弾
誘導方式KuバンドレーダーFILR?


バリエーション

  • Block0:
    初期モデル。

  • Block1:
    能力向上型。
    発射速度が向上し、弾倉の大型化により装弾数が増えたほか、俯角が大きく取れるようになった。

  • Block1A:
    Block1のコンピューターシステムを更新したモデル。

  • Block1B:
    現行モデル。砲身の延長やFLIRの追加、マウントの改良が行われた。
    この改良により射撃精度が向上し、対舟艇および低速低高度の空中目標への射撃能力を獲得した。

  • LPWS(Land-based Phalanx Weapon System):
    トレーラーで牽引する車載型ファランクス。Counter-RAMと呼ばれる。
    基地に対する迫撃砲ロケット弾の攻撃を察知して着弾前に撃墜する事を旨とする。
    使用弾薬は地面への着弾による被害を防ぐため、Mk149 Mod4 APDS弾に自爆機能が付加されたM940「MPT-SD(多目的曳光弾-自爆機能付き)」を使用する。

    http://www4.plala.or.jp/klesa108/temp/mk15block1b.jpg
    きりしま」搭載のMk.15 ブロック1B。レドーム横に赤外線監視装置などを追加し、対舟艇射撃能力を獲得した。

*1 日本の海上自衛隊では「高性能20ミリ機関砲」の名で採用されているが、命名に当たって、「高性能」という単語があえて付け加えられた意図は不明。
*2 ただし、本当に「全自動」なので、指令を与えなければ、敵味方問わず有効射程圏内に入った全ての物を迎撃する。

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