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*&ruby(ふぁらんくす){【ファランクス】}; [#b9fc75c7]
+古代ギリシアで編み出された歩兵[[戦術]]の一つで、甲冑・盾・長槍を装備した[[重装歩兵>歩兵]]による密集隊形。~
横に戦列を組み、この戦列を何重(通常は8重)にも重ねて編成した。~
複雑な戦法を必要とせず、なおかつ高い破壊力を誇ったために、当時の主力編成となった。~
正面への突撃力・防御力は相当なものだが、横や後ろからの攻撃に極端に弱く、[[騎兵]]や[[散兵戦]]などの機動戦術に対しては太刀打ちできないという弱点もあった。~
Mark15 Phalanx((日本の[[海上自衛隊]]では「高性能20ミリ機関砲」の名で採用されているが、命名に当たって、「高性能」という単語があえて付け加えられた意図は不明。)).~
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+Mark15 Phalanx~
アメリカの[[レイセオン社>レイセオン・システムズ]]で開発された20mm[[口径]]の[[艦載>艦載砲]][[ガトリングガン]]システム。一部では「R2-D2」の[[愛称]]でも呼ばれる。~
[[対艦ミサイル]]などの飛翔体を至近距離で撃墜する[[CIWS]]として運用される。~
名称は古代ギリシアの[[歩兵]][[戦術]]に由来し、重装歩兵の盾のように緊密な防御をイメージしての命名と思われる。~
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飛来する[[対艦ミサイル]]から[[艦艇]]を守る最終手段である[[CIWS]](Close In Weapon System)としてアメリカで開発された、高性能20mm[[ガトリング砲>ガトリングガン]]。~
通称「バルカン・ファランクス」とも呼ばれる。~
高初速と毎分3000発という発射速度で、[[ミサイル]]を命中直前で叩き落とすことができる。~
[[M61A1>M61]][[機関砲]]と、これを搭載する[[砲塔]]・捜索/追跡[[レーダー]]・[[火器管制装置]]のセットで一個の兵器とする。~
電源と[[ペイロード]]空間以外は独立したシステムで、換装・設置にさほどの手間はかからない。~
普段は射手からの制御を受けて発射するが、緊急時には目標探知・識別・発射を全て全自動で行える。~
ただし全自動モードでは敵味方の識別が行われず、[[有効射程]]圏内の飛翔体全てを無差別に撃墜する((1996年6月にハワイ沖で行われた[[環太平洋合同演習]]にて、[[海上自衛隊]]の[[護衛艦]]「[[ゆうぎり(DD-153)>あさぎり]]」が標的曳航中の[[A-6]][[攻撃機]]を[[誤射]]し[[撃墜]]している。))。

1978年に開発が始まり、1980年にまず空母[[コーラル・シー>ミッドウェイ]]に搭載された。~
以後も段階的に改修を受け、最新型では高速艇などの水上目標も撃沈できるようになっている。~
~
航空機用[[機関砲]]として西側で広く使用されている[[M61A1]]を流用し、目標の探知から識別、迎撃までを全自動で行う((基本的に射程内を飛行するモノはすべて迎撃するため、普段はマニュアルモードで稼働して[[誤射]]を防ぐ。))事ができるよう、各種電子機器と統合されユニット化されている。~
そのため、艦艇側は電力と僅かな設置スペースを提供するだけで大幅な防空能力の向上が望める。~
アメリカや日本の他、[[NATO>北大西洋条約機構]]各国[[海軍]]を始め、21か国で870セットの採用実績がある。~

**次世代への課題 [#xb7c0f61]
ファランクスは[[兵器]]としてまずまず傑作に分類できるが、根本的な問題もいくつかある。~
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ファランクスシステムの開発は1978年に始まり、1980年には空母[[コーラル・シー>ミッドウェイ]]に最初のシステムが搭載された。~
以後も段階的に改良が進められており、最新型では高速艇などの小型水上目標にも対処できるようになっている。~
しかし、欠点として~
・20mm機関砲の威力、射程の不足~
・毎分3000発の発射速度に対し、Block0では装弾数が千発にも満たず、20〜30秒の射撃で全弾撃ちつくしてしまう((2〜3発のミサイルを迎撃しただけで人力での弾の装弾が必要となる。))。~
などが指摘されており、RIM-116回転弾体ミサイル([[RAM]])へ換装した艦もある((20mmバルカン砲の場合、たとえ迎撃に成功してもミサイルそのものを完全に止めるのは難しい事が指摘されており、撃沈とまでは行かなくともミサイルの残骸(破壊された弾体や未燃焼の[[推進剤>燃料]]など)が何らかの被害を及ぼす事が考えられる。))。~
近年、Counter-RAM(Counter-rocket, -artilly and-motar、C-RAM)のひとつとして、ファランクスシステムを応用したLPWSという地上での砲弾、[[ロケット弾]]迎撃を任務とした派生型が開発されている。~
まず第一に、近年の航空脅威、特に[[対艦ミサイル]]に対して20mm[[機関砲]]の火力は十分でない。~
目標の破壊に成功しても、残骸が運動エネルギーを残したまま艦に激突する可能性が否定できない。~
実際、残骸の搭載[[爆薬]]が起爆したり、[[燃料]]に引火した事が原因で沈没に至った例もある。~
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アメリカの他日本などでも採用され、[[海上自衛隊]]では「高性能20ミリ機関砲」という名前で採用された。~
日本で「[[CIWS]]」と言えば大抵これのことである。~
また、[[ガトリングガン]]の発射速度に対して装弾数に不足がある。~
発射速度は毎分3000発、つまり1秒で50発を消費し、必中を期するには数秒以上の連射を必要とする。~
初期型は装弾数が1000発に満たなかったため、2〜3回迎撃するごとに給弾作業が必要になる有様だった。~
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バリエーション
--Block0:初期モデル。~
--Block1:能力向上型。発射速度が向上し、弾倉の大型化により装弾数が増えている。~
--Block1A:Block1のコンピューターシステムを更新したモデル。~
--Block1B:現行モデル。砲身の延長や[[FLIR]]の追加、マウントの改良が行われた。~
こうした点から、ファランクスの採用を取りやめて[[RIM-116]]「[[RAM]]」へと換装した艦もある。~
~
http://www4.plala.or.jp/klesa108/temp/mk15block1b.jpg ~
「[[きりしま>こんごう]]」搭載のMk.15 ブロック1B。[[レドーム]]横に赤外線監視装置などを追加し、対舟艇射撃能力を獲得した。~
**主な搭載艦 [#p6d6bedd]
|[[アメリカ海軍]]|[[ニミッツ級>ニミッツ(航空母艦)]][[航空母艦]](3番艦から8番艦が装備)&br;[[ジェラルド・R・フォード級>ジェラルド・R・フォード]]航空母艦&br;カリフォルニア級[[原子力ミサイル巡洋艦>ミサイル艦]]&br;[[ヴァージニア]]級原子力ミサイル巡洋艦&br;[[タイコンデロガ級>タイコンデロガ]][[ミサイル巡洋艦>ミサイル艦]]&br;[[アーレイ・バーク級>アーレイ・バーク(駆逐艦)]]ミサイル駆逐艦&br;キッド級ミサイル駆逐艦&br;[[ワスプ級>ワスプ]][[強襲揚陸艦]]&br;アメリカ級強襲揚陸艦&br;ホイットビー・アイランド級[[ドック型揚陸艦]]&br;ハーパーズ・フェリー級強襲揚陸艦&br;シマロン級補給艦&br;サプライ級高速戦闘支援艦([[軍事海上輸送司令部(MSC)>アメリカ輸送軍]]移管時に撤去)&br;&br;※以下の艦は後日装備&br;[[ミッドウェイ級>ミッドウェイ]]航空母艦&br;[[フォレスタル級>フォレスタル]]航空母艦&br;[[キティホーク級>キティホーク]]航空母艦&br;[[原子力空母]]「[[エンタープライズ]]」&br;[[アイオワ級>アイオワ(BB-61)]][[戦艦]]&br;原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」&br;原子力ミサイル巡洋艦「ベインブリッジ」&br;原子力ミサイル巡洋艦「トラクスタン」&br;ベルナップ級ミサイル巡洋艦&br;リーヒ級ミサイル巡洋艦&br;[[スプルーアンス級>スプルーアンス]][[駆逐艦]]&br;ノックス級[[フリゲート]]&br;オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート&br;[[ブルーリッジ級>ブルー・リッジ]]揚陸指揮艦&br;[[イオー・ジマ級>イオージマ]][[強襲揚陸艦]]&br;[[タラワ級>タラワ]]強襲揚陸艦&br;オースティン級ドック型輸送揚陸艦&br;クリーブランド級ドック型輸送揚陸艦&br;トレントン級ドック型輸送揚陸艦&br;マーズ級戦闘給糧艦&br;サクラメント級高速戦闘支援艦&br;キラウェア級給兵艦&br;ウィチタ級[[給油艦>タンカー]]|
|[[アメリカ沿岸警備隊]]|ハミルトン級[[カッター>カッター(船)]]&br;バーソルフ級カッター|
|日本&br;([[海上自衛隊]])|[[ひゅうが型ヘリコプター護衛艦>ひゅうが]]&br;[[いずも型ヘリコプター護衛艦>いずも]]&br;[[はたかぜ型ミサイル護衛艦>はたかぜ]]&br;[[こんごう型ミサイル護衛艦>こんごう]]&br;[[あたご型ミサイル護衛艦>あたご(自衛艦)]]&br;[[まや型ミサイル護衛艦>まや(自衛艦)]]&br;たかつき型多目的護衛艦(2番艦のみ)&br;[[あさぎり型汎用護衛艦>あさぎり]]&br;[[あぶくま型護衛艦>あぶくま]]&br;[[むらさめ型汎用護衛艦>むらさめ]]&br;[[たかなみ型汎用護衛艦>たかなみ]]&br;[[あきづき型汎用護衛艦>秋月]]&br;[[おおすみ型輸送艦>おおすみ]]&br;&br;以下の艦は後日装備&br;[[はつゆき型汎用護衛艦>はつゆき]](1番艦と2番艦)&br;[[たちかぜ型ミサイル護衛艦>たちかぜ]]&br;はるな型ヘリコプター護衛艦&br;[[しらね型ヘリコプター護衛艦>しらね]](1番艦)|
|イギリス|[[インヴィンシブル級>インビンシブル(空母)]]航空母艦(1番艦と2番艦はゴールキーパーに変更)&br;[[クイーン・エリザベス]]級航空母艦&br;[[42型(シェフィールド級)>シェフィールド]]駆逐艦&br;[[45型(デアリング級)>デアリング]]駆逐艦&br;26型(グラスゴー級)[[フリゲート]](開発中)&br;[[ヘリコプター揚陸艦]](揚陸ヘリ空母)「[[オーシャン]]」&br;フィアレス級[[ドック型輸送揚陸艦>ドック型揚陸艦]](1番艦のみ)&br;アルビオン級[[ドック型輸送揚陸艦>ドック型揚陸艦]]([[ゴールキーパー]][[CIWS]]から換装)&br;ウェーブ型[[給油艦>タンカー]]&br;フォート・ヴィクトリア級補給艦&br;タイド型給油艦(2代目)|
|オーストラリア|アデレード級フリゲート&br;ハンター級フリゲート(計画中)&br;ホバート級駆逐艦|
|バーレーン|ミサイルフリゲート「サバー(Sabha)((元オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート「ジャック・ウィリアムズ(USS Jack Williams,FFG-24)」。))」|
|カナダ|レスティゴーシュ級駆逐艦(4番艦と6番艦は後日装備)&br;イロクォイ級ミサイル駆逐艦(TRUMP((Tribal Class Update and Modernization Project.))改修後)&br;ハリファックス級フリゲート&br;プロテクチュール級補給艦|
|ギリシャ|エリ級フリゲート&br;イドラ級フリゲート&br;補給艦「プロメテウス」|
|エジプト|ノックス級フリゲート&br;オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート|
|イスラエル&br;([[イスラエル海軍>イスラエル軍]])|サール4.5型ミサイル艇&br;サール5型[[コルベット]]|
|韓国|仁川級フリゲート&br;大邱級フリゲート&br;独島級[[強襲揚陸艦]]「馬羅島」|
|トルコ|ノックス級フリゲート&br;G級フリゲート|
|ニュージーランド|テ・カハ級フリゲート|
|パキスタン|アラムジル級駆逐艦&br;タリク級駆逐艦&br;フリゲート「アラムジル((元オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート「マッキナニー (USS McInerney, FFG-8)」。))」|
|ポーランド|フリゲート「ゲネラウ・カジミェシュ・プワスキ((元オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート「クラーク(USS Clark, FFG-11)」。))」&br;フリゲート「ゲネラウ・タデウシュ・コシチュシュコ((元オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート「ワズワース(USS Wadsworth, FFG-9)」。))」|
|ポルトガル|ヴァスコ・ダ・ガマ級(MEKO200PN型)フリゲート|
|サウジアラビア|バドル級コルベット|
|中華民国|富陽級駆逐艦(後日装備)&br;基隆級(キッド級改装型)駆逐艦&br;済陽級フリゲート(後日装備)&br;成功級フリゲート&br;[[康定級フリゲート>ラファイエット]]&br;沱江級コルベット|
|インド|ドック型揚陸艦「ジャラシュワ((元トレントン級ドック型輸送揚陸艦「トレントン(USS Trenton,LPD-14)」。))」|
~
**スペックデータ [#h5ca734f]
|開発・製造者|ジェネラル・ダイナミクス(現レイセオン)|
|口径|20mm×102mm|
|銃身長|1,520mm(ブロック0・ブロック1(L76砲身))&br;1,981mm(ブロック1B(L99砲身))|
|銃砲身|6本|
|全高|4.7m|
|重量|5,700kg&br;6,200kg(後期型)|
|仰角|ブロック0:-10°/+80°&br;ブロック1:-20°/+80°(移動速度:86°/秒(ブロック0/ブロック1)&br;ブロック1B:-25°/+85°(移動速度:115°/秒(ブロック1B)|
|旋回角|中心線からそれぞれ150°&br;(移動速度:100°/秒(ブロック0/ブロック1)、116°/秒(ブロック1B))|
|発射速度|毎分3,000〜4,500発(選択式)、毎秒50〜75発|
|初速|1,100m/s|
|有効射程|1.49km|
|最大射程|型式による|
|使用弾薬|艦船用:[[徹甲弾]]、外皮付タングステン弾&br;地上配備型:高性能爆薬弾、自爆機能付き[[曳光弾]]|
|誘導方式|Kuバンド[[レーダー]]と[[FLIR]]|
~
**バリエーション [#ff24f388]
-Block0:~
初期モデル。~
~
-Block1:~
最初のメジャーアップデートモデル。~
捜索レーダーのアンテナ部を[[フェイズドアレイ>フェイズドアレイレーダー]]式に変更し捜索能力を強化した。~
また、[[弾倉]]の大型化により装弾数が増えたほか、仰角が大きく取れるようになった。~
~
--Block1 BaseLine1:~
レーダーの感度を向上させ、[[機関銃]]の発射速度を毎分4,500発まで向上できるようにしたモデル。~
~
--Block1 BaseLine2:~
内蔵データバスを追加し、[[標的機]]なしで自己テストを行えるようにしたモデル。~
~
-Block2:~
次世代ファランクスとして開発が検討されていたモデル。~
25mmテレスコープ弾を使用する7連装機関銃を連装で搭載予定であった。~
1992年計画中止。~
~
-Block1A:~
Block1 BaseLine2Bとも呼ばれるモデル。~
Block1のコンピューターシステムを更新し、高機動目標への対応能力を強化するとともに、艦艇自衛システム(SSDS)との連接にも対応した。~
~
-Block1B:~
現行モデル。Block1ベースライン2Cとも呼ばれる。~
砲身の延長やレーダーの改良(サイドローブ抑制やフィルターなど)、[[FLIR]]による光学射撃指揮装置が追加され、対水上射撃モード(Phalanx Surface Mode, PSuM)に対応した。~
この改良により射撃精度が向上し、対舟艇および低速低高度の空中目標への射撃能力を獲得した。~
--LPWS((Land-based Phalanx Weapon System)):地上車載型。牽引式低床トレーラーに搭載されて運用される。~
使用弾薬は、地上への付随被害を最小化するために艦載用の通常のMk149 Mod4 APDS弾に自爆機能を付加した、M940「MPT-SD(多目的曳光弾-自爆機能付き)」を使用している。~
~
--Block1B BaseLine2:~
脅威判定性能の向上並びに信頼性の向上型。~
Block1Bとの見分け方としては、[[レドーム]]の色が白色から灰色になっている。~
[[アメリカ海軍]]では2019年度中に改修予定である。~
[[海上自衛隊]]では[[いずも型>いずも]][[ヘリコプター搭載護衛艦>護衛艦]]「[[かが>加賀]]」や改修予算が付いた[[むらさめ型>むらさめ]][[護衛艦]]以降に適用され、一部改修済の艦もある。~
~
http://www4.plala.or.jp/klesa108/temp/mk15block1b.jpg ~
「[[きりしま>こんごう]]」搭載のMk.15 ブロック1B。レドーム横に赤外線監視装置などを追加し、対舟艇射撃能力を獲得した。~
-LPWS(Land-based Phalanx Weapon System):~
トレーラーで牽引する車載型ファランクス。Counter-RAM((Counter-rocket, -artillery and-mortar,))(C-RAM)と呼ばれる。~
基地に対する[[迫撃砲]]、[[ロケット弾]]の攻撃を察知して着弾前に撃墜する事を旨とする。~
使用弾薬は地面への着弾による被害を防ぐため、Mk.149 Mod4 APDS弾に自爆機能が付加されたM940「MPT-SD(多目的[[曳光弾]]-自爆機能付き)」を使用する。~
~


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