【ハイジャック】(はいじゃっく)

Hijack.
暴力や脅迫により、他人が運用する乗り物(航空機・船舶・列車・自動車など)を不法に占拠する行為。
特に日本では、(後述の通り)航空機が対象となった場合にのみ使われることが多い。

犯行の目的はさまざまで、政治的迫害による亡命、収監されている仲間(政治犯やテロリストなど)の解放要求、テロ行為、身代金の要求といった「目的の明確な」ものから、乗り物自体に対する異常な興味や精神疾患に起因するもの、テロに便乗した模倣犯まで存在する。

日本では(航空機を奪取した場合)「航空機の強取等の処罰に関する法律(ハイジャック防止法)」により犯罪行為として処罰されることになっている。*1

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語源と日本における誤用

この言葉は、かつて駅馬車強盗が犯行に及ぶ際、駅馬車の御者を呼び止めるのに
「Hi,Jack!」
と声をかけていたことが由来とされている。

Jack は(英語圏における男性の)典型的な人名であると同時に、つり上げる、殴る、盗むなどを意味する動詞でもあるので、「おい、おまえ!」とも「こんにちわ、死ね!」とも「やぁ、(この車は)もらうぜ!」とも解釈できる一種のブラックジョークである。*2

そのため、対象が船であっても列車であっても自動車であっても「ハイジャック」となるのが正しい使い方であるが、日本では、1970年に起きた「よど号事件」の際、「Hi」を「High(高い)」という意味の誤った解釈をして伝えたため、航空機が対象となった場合の言葉として定着してしまった。
その後日本では、本来なら「ハイジャック」という言葉をあてるべき事象や(ハイジャックの定義には当てはまらないが)これに類似した別の事象を表現するさまざまな派生語ができた。
以下にその一例を示す。

  • 「シージャック」(船が乗っ取られた場合)
  • 「カージャック」(自動車が乗っ取られた場合)
    • 「バスジャック」(バスが乗っ取られた場合)
  • 「電波ジャック」(総務大臣から「放送事業者」としての許可を受けていない者が、意図的に正規の放送電波と同じ周波数で別の番組を強引に流して放送を妨害すること)
  • 「番組ジャック」(テレビ・ラジオ番組で、当初の出演予定になかった人物が乱入すること)
  • 「核ジャック」(核兵器やその原材料となる放射性物質を奪取すること)

…などなど。


*1 航空機以外の乗り物については一般の刑法が適用される。
*2 そのため、英語圏の一部の空港では「Hi,Jack」や「Hey,Jack」といった挨拶を慎み、無用の混乱を避けるように呼びかけられるところもある。

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