【ハイジャック】(はいじゃっく)

Hijack.
暴力や脅迫によって乗り物の乗員・乗客を不法に占拠し、運行を妨害する行為。
日本では、一般的に航空機の機内で発生した人質篭城事件を指すものと解釈されている。
一方、英語圏では乗り物の種類を問わずこう称しているが、対象が航空機である事を明示する場合に「スカイジャック」と称する事がある。

犯行の主な目的としては「政治的迫害による外国への亡命」「収監されている政治犯やテロリストの解放要求」「身代金の要求」などがある。
9.11事件など、航空機を奪取し利用する事そのものを目的としていた場合もあれば、乗り物自体に対する異常な興味や精神疾患に起因するもの、意味不明な模倣犯などもわずかながら存在する。

基本的には、どの国でも窃盗・強盗に類する犯罪として扱われる。
ただし、公共交通機関に対するハイジャックを単なる強盗以上の重大な犯罪と位置づける国は多い*1

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語源と日本における誤用

「Hi,Jack!」

これは駅馬車が交通機関として用いられていた時代、御者を呼び止める際によく叫ばれていた言葉である。
ここから転じて駅馬車強盗を指すスラングとなり、やがて公式に通じる表現として定着していったものとされる。
言葉だけ見るとJackさんに対する日常的な挨拶と区別が付かないため、英語圏の空港では「Hi,Jack」「Hey,Jack」などと挨拶する事を慎み、無用の混乱を避けるように呼びかけている所もある。

Jack は、英語圏における男性の典型的なファーストネームのひとつであると同時に、「つり上げる」「殴る」「盗む」などを意味する動詞でもあるので、「おい、おまえ!」とも「こんにちわ、死ね!」とも「やぁ、(この車は)もらうぜ!」とも解釈できる一種のブラックジョークである。

こうしたことから、本来は、対象が船であっても列車であっても自動車であっても「ハイジャック」と表記する。
ただし、日本では1970年の「よど号事件」に際して「Hi」を「High(高い)」と誤訳した報道があったため、航空機奪取のみを対象とする言葉だと誤解され、そのまま定着して今日に至っている。
そのような誤解から、今日では日本語の「ジャック」が英語圏における「Hijack」とほぼ同義語になっており、以下のような派生表現を作り出している。

  • 「シージャック」(船が乗っ取られた場合)
  • 「カージャック」(自動車が乗っ取られた場合)
    • 「バスジャック」(バスが乗っ取られた場合)
  • 「トレインジャック」(列車が乗っ取られた場合)
  • 電波ジャック」(正規の無線通信に使用されている電波と同一、もしくは近接した周波数帯域に、意図的にそれらより高出力の電波を発射して通信を妨害すること*2
  • 「番組ジャック」(テレビ・ラジオ番組で、(演出上の都合により)当初の出演予定になかった人物が乱入すること)
  • 「核ジャック」(核兵器やその原材料となる放射性物質を奪取すること)

*1 日本では航空機のみ「航空機の強取等の処罰に関する法律(ハイジャック防止法)」により処罰の対象となる。
*2 特にラジオ・テレビ放送で、総務大臣から「放送事業者」としての許可を受けていない者が、別の番組を強引に流して放送を妨害しようとする行為を指す事が多い。

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