【ドーファン2】(どーふぁんどぅー)

Aerospatiale SA365 "Dauphin2"
フランスのアエロスパシアル社(現ユーロコプター)が開発した双発の民間向けヘリコプター

前身のドーファンは飛行性能こそ高かったものの、キャビンの広さが中途半端であったため、セールスが芳しくなかった。
そのため、本機はドーファンを双発化した上で胴体を延長し、搭載能力を向上した。
搭載力に余裕が生まれたことで需要が拡大し、ビジネスや救命分野の市場を開拓した。
特に担架を複数搭載することができ、またフェネストロンの安全性が認められたことから、警察・防災機関などへの導入実績が多い。

日本では各自治体の消防や警察などにおける導入例が目立つ。
(ただし救命用としては優秀なものの、消火用としては搭載可能な水タンクの容量が不足しているとの指摘もある。)

現在でも発展型が製造され続け、同社を代表する機種のひとつになっている。
派生型として、軍用多目的ヘリコプターパンター(パンサー)が存在する。

また、サウジアラビアと中国では本機自体を対潜ヘリコプターとして用いている。
前者はサウジアラビアからアエロスパシアルが開発依頼を受けたもので設計的に最適化されているが、後者は民間型に対潜装備を後付けしたもので能力が限られている。

http://www4.plala.or.jp/klesa108/temp/ootori2.jpg
千葉市消防局所属のAS365N3 おおとり2

スペックデータ

ドーファン2
乗員1〜2名/乗客12〜13名
全長13.68m
主回転翼直径11.94m
全高3.97m
自重4,460kg
最大離陸重量4,250kg
発動機チュルボメカ・アリエル1C2 ターボシャフト×2基
超過禁止速度287km/h
巡航速度254km/h
航続距離860km


直昇9型(Z-9)
乗員操縦手1名+乗員10名/操縦手・副操縦手+乗員9名
3名(Z-9W)
全長13.46m
全高4.01m
3.47m(Z-9W)
全幅11.93m(ローター直径)
11.94m(ローター直径、Z-9W)
空虚重量1,975kg
3,800kg(Z-9W)
最大離陸重量3,850kg
4,100kg(Z-9W)
エンジンチュルボメカ アリエルC1ターボシャフト(出力710hp) ×2基
渦軸8A(WZ-8A)ターボシャフト(出力734hp)×2基(Z-9W)
速度
(最大/巡航)
305km/h / 250〜260km/h
315km/h / 255km/h(Z-9W)
航続距離1,000km(増槽付き)
660km(Z-9W)
最大飛行時間5時間
上昇限度4,500m
4,220m(Z-9W)
ホバリング上昇限度1,950m/1,020m(海面効果なし)
2,590m/1,775m(海面効果なし、Z-9W)
ペイロード1,900kg(機内搭載)/1,600kg(吊下げ)
燃料搭載量1,000L(機内)/400L(増槽)
武装
(Z-9W)
紅箭8(HJ-8)対戦車ミサイル×4発
天燕90(TY-90)赤外線誘導空対空ミサイル
23mm機関砲×2基(弾薬240発搭載)
12.7mm重機関銃ポッド×2基
HF-7D 7連装90mmロケット弾ポッド×2基
HF-25 25連装57mmロケット弾ポッド×2基


バリエーション

民間型

  • AS365C:
    初期型。旧ドーファンの面影を残す。

  • AS365N:
    胴体を流線型に再設計し、ランディングギア前輪式の引き込み脚に変更して、空力的に洗練された型。

  • AS365N1:
    エンジンフェネストロン、操縦系統などを強化した型。

  • AS365N2:
    複合材による軽量化とエンジンのさらなる強化で飛行特性を向上した改良型。
    エンジンはチュルボメカ アリエル1C2(549kw)を搭載。

  • AS365N3:
    エンジン制御のデジタル化(FADEC)により性能向上した型。
    エンジンはチュルボメカ アリエル2C(635kw)を搭載。

  • EC155B:
    メインローターを5枚ブレードにし、フェネストロンをオフセット配置にして騒音を低減した型。旧称AS365N4。

哈爾浜航空機製造公司(HAMC)でのライセンス生産

  • Z-9:
    AS365N1のライセンス生産型。中国名は直升9「海豚」。

  • Z-9A:
    AS365N2のライセンス生産型。
    • Z-9EA:
      A型の輸出型。

  • Z-9-100:
    A型をベースにコンポーネントを国産化し、渦軸8A(WZ-8A)エンジンを搭載した型。
    • Z-9B:
      100型ベースにさらに国産化率を向上した型。

  • Z-9C:
    対潜/哨戒ヘリコプター型。詳しくはパンサーの項を参照。

  • Z-9F:
    武装警察向けのモデル。

  • Z-9(指揮・通信型):
    A型ベースの空中コマンドポスト型。

  • Z-9(砲兵観測型):
    砲兵部隊の将官が搭乗して運用される砲兵観測型。

  • Z-9W:
    Z-9をベースに開発された武装ヘリコプター型。中国名は武直9(WZ-9)。
    • Z-9WA:
      Z-9Wの改良型。搭載兵器の増加と夜間戦闘能力が付与されている。
    • Z-9WE:
      Z-9WAの輸出型。
    • Z-9G:
      AS565ベースの武装ヘリコプター型。
      装備や外観はZ-9WAに類似している。
    • Z-9WZ:
      Z-9Wベースの多用途型。
      火器管制システムが改良され、運用可能兵器の種類が増加している。
      主に攻撃・偵察・治安任務等の任務を想定している。
    • Z-9ZH:
      Z-9WAに似た機体。
      中国軍の香港駐留部隊に配備されている。

  • DZ-9(Z-9EW):
    電子戦機型。

  • H410A:
    Z-9の民間型。エンジンをアリエル2C(840hp)に換装。
    中国の公安や海警部隊でも運用が行われている。
    • H425:
      H410Aベースの民間型。
      最大離陸重量が4,250kgに増加している。
    • H450:
      哈爾浜が開発中のZ-9の民間型。
      最大離陸重量が4,500kgに増加している。

  • 武直19(Z-19)?
    Z-9をベースにした攻撃ヘリコプター。詳しくは項を参照。

捜索救難

  • AS366G:
    アメリカ沿岸警備隊向け*1捜索救難機。
    アメリカでの呼称はHH-65A「ドルフィン」。エンジンはライカミング社製LTS101-750A-1(650hp)2基を搭載。
    • AS366G1:
      SA366Gの発展型。
      ナイトビジョンの追加装備やアビオニクスの刷新などが行われている。
      アメリカでの呼称はHH-65B。

  • HH-65C:
    エンジンをチュルボメカ・アリエル2C2(965shp)に再換装して飛行能力を回復させた型。社内呼称不明。
    • MH-65C:
      HH-65Cに武装強化などを行なった型。社内呼称不明。
    • MH-65D:
      航法システムを国防総省仕様に変更した型。
    • MH-65E:
      アビオニクスなどを更新した近代化仕様。

対潜ヘリコプター


*1 バイ・アメリカン法に対応するためエンジンをライカミングLT101に換装しており、性能はオリジナルに劣る。

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