【デビークロケット】(でびーくろけっと)

M-388 Devy Crockett.

1960年代にアメリカ陸軍が採用していた、世界に類を見ない戦術核無反動砲
愛称はアラモの戦いで玉砕した英雄デイヴィッド・クロケットの名に因む。
ジープM151などの)車輌に搭載して最前線に配備し、自走砲のように間接砲撃を行う運用が想定されていた。

120mm口径のXM-28、150mm口径のXM-29の2種類のモデルがあり、有効射程はXM-28で約2km、XM-29が約4kmだった。
弾頭には約0.25キロトンの核出力を持つW54核弾頭(Mk54)を採用していた。
発射時には、破壊範囲を最大にするために最適高度で弾頭を空中炸裂させる必要上、迫撃砲のように大きな仰角をつけた状態になり、発射した砲弾が曲射弾道を描く「曲射砲」として照準・発砲される。

しかし、(核出力をごく低く抑えていたとはいえ)危害半径に比して異様に射程が短く、発射した射手自身も生還できるか疑わしかった*1
また当然、友軍を誤爆するリスクも許容不可能なほど高かった。
このため、航空機や長距離ミサイルに搭載される長射程の核兵器が発展すると共に退役した。

運用法を現在の基準から考えれば、馬鹿げた兵器であると言わざるを得ない。
とはいえ、「最前線の小隊レベルで運用可能な核兵器」が存在すること自体が(実用性はさておいて)恐怖の的であったことは疑いなく、当初は「爆撃機に搭載するもの」だった核兵器がここまで小型化された事は、核兵器の技術史においては特筆に値する事例でもある。

関連:SADM?


*1 着弾点から400m以内の人間は放射線被曝によってほぼ確実に死亡するといわれていた。

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