【ディーゼルエンジン】(でぃーぜるえんじん)

レシプロエンジンの一種で、圧縮した空気の中に燃料を噴射することにより、その圧力で自然発火させる仕組みのもの。
燃料として、艦船用の低速ディーゼルでは主に重油、それ以外の高速ディーゼルでは軽油を用いる場合が多い。
ドイツの技師、ルドルフ・ディーゼル(Rudolf Diesel)により発明されたためディーゼルと呼ばれる。
「ヂーゼル」や「ジーゼル」と書かれている場合も見受けられる。

特長としては、熱効率が高いので燃費が非常によく、酸素消費量や二酸化炭素排出量が少ないことが挙げられる。*1
また、引火性の高いガソリンを用いないので燃料火災の危険は比較的少ない。*2
反面、燃焼機構自体が自然発火であるために不完全燃焼を起こしやすく、窒素酸化物や粒子状物質(黒煙)などの環境汚染物質を多く排出する。
また燃焼室の中で急激な燃焼を起こすために、騒音や振動が大きいことも環境負荷を大きくしている。
さらにエンジン自体が振動に耐える必要があるため、構造が大型化し重くなる傾向にある。

これらの欠点から航空機には適さないとされるが、初期には飛行機用のディーゼルエンジンが造られたこともあった。
また、近年でも軽飛行機無人機のためとして、燃費の良い小型航空用ディーゼルが注目されている。

戦車を含む各種大型車両、潜水艦などの各種艦船、鉄道車両、小型の発電設備など、応用範囲は非常に広い。
戦前の日本はディーゼルの技術が立ち遅れていたが、戦後はターボチャージャー付きの大出力ディーゼルを輩出するなど高く評価されている。
ただし、欧州の自動車市場では二酸化炭素排出量が少ないとして乗用車にも多く搭載されるのに対し、日本では振動や排気ガスなどが煩わしいといった理由で敬遠される傾向にある。

近年では、燃料に特殊処理を施した動植物性油脂*3を混合することで、排出される汚染物質を削減する「バイオディーゼル」の開発も進んでいる。


*1 日本においては税金が安いことも有利に働く。
*2 戦車にガソリンエンジンを用いないのも、このためである。
*3 油脂の供給源としては、一般家庭や飲食店から出る廃食用油などが用いられることが多い。
  これらの油脂には、植物の生長過程で大気から取り込んだ二酸化炭素が含まれているので、燃焼させても大気中の二酸化炭素量が増えないとされている(カーボンニュートラル)。


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