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【タランタル】 †
1976年にソ連で開発された水中翼ミサイル艇。
ソ連での名称は1241号計画「モールニヤ(稲妻)」型大型ミサイル艇で1番艇の名称からR-5級大型ミサイル艇(РКА типа Р-5)とも呼ばれる。
NATOコードのタランタルとはロシア語でタランチュラを意味する。
I型、II型、III型とバリエーションが分けられており、主武装や電子装備が異なる。
初期のI型1979年から翌年にかけて2隻が建造され、その後電子装備が異なるII型が1981年から1986年にかけて19隻が建造された。
現在はロシア本国向けのIII型が建造されている。
III型にはI型・II型に搭載されていた対艦ミサイルをSS-N-2(P-15・P-15Mテルミート)からSS-N-22?(3M80「モスキート」)対艦ミサイルに換装し、また、CODAG機関を採用したため航続距離が向上している。
2005年現在、ロシア海軍ではI型・II型・III型を23隻を保有し、ブルガリア、ポーランド、ウクライナ、インドなどにも輸出が行われている。
スペックデータ †
艦種 | 大型ミサイル艇 |
全長 | 56.1m |
全幅 | 10.2m |
喫水 | 4.36m |
排水量 (基準/満載) | 436t/493t |
機関 | M-510 2倍膨張式ガスタービンエンジン(巡航用)×2基 M-70ガスタービンエンジン(ブースト用)×2基2軸推進 |
機関出力 | 10,000hp(巡航用) 24,000hp(ブースト用) |
電源 | ディーゼル発電機×3基(200kWt) |
速力 (最大/巡航) | 41.0kn/13kn |
航続距離 | 2,400浬/13kn 450浬/36kn |
行動期間 | 10日間 |
乗員 | 41名 |
武装 | 3M80「モスキート」艦対艦ミサイル連装発射機×2基 AK-176M 76mm単装両用砲×1基(弾数314発) 9K38「イグラー」個艦防空用艦対空ミサイル発射機×1基(弾体16発) |
レーダー | 34K1「モノリート」ミサイル管制・水上捜索標準レーダー×1基 MR-405ミサイル誘導レーダー×1基 MR-123「ヴィーンペル」射撃管制レーダー×1基 「ドン」航法レーダー×1基 |
電子戦装備 | 「ヴィーンペルR2」電子戦対抗装置×1基 PK-10チャフ・フレア発射装置×2基 |
派生型 †
- 1241型・1241R型
1241号計画「モールニヤ1」と呼ばれる型。「R」はミサイル艇の意味。
1隻のみが建造された。NATOコードでは「タランタルI型」と呼ばれた。
- 1241.1型・12411T型・1241RE型
1241.1号計画「モールニヤ1」型と呼ばれるCOGAG機関とP-15M「テルミート2」艦対艦ミサイルを搭載する1241型直系の発展型として設計された型。
また、1番艦の名称からキーロフスキイ・コムソモーレツ級大型ミサイル艇とも呼ばれる。
武装は1241型と同一であるが、レーダーや射撃管制装置などの電子装備は一新されている。
「T」はこの艦が搭載するP-15M「テルミート」対艦ミサイルの事を指す。
NATOコードでは「タランタルII型」と呼ばれ、13隻が建造された。
1241.1型は1241型と武装は同じであるが、レーダーや射撃管制装置などの電子装備が一新されたほか、新たにAK-630M 6砲身CIWS2基が搭載されている。12隻が建造された。
1241RE型は輸出型で25隻が建造された。
変更点としては搭載レーダーを34K1「モノリート」水上捜索レーダーから「ガルプーンE」水上策敵レーダーに変更し、艦対艦ミサイルをP-15の輸出型であるP-20「テルミート2」を搭載している。
- 12411型・1241.1M型
1241.1型の姉妹型として設計された型。
12411号計画「モールニヤM」型と呼ばれるほか、1番艇の名称からR-46級大型ミサイル艇(РКА типа Р-46)とも呼ばれる。
「M」は搭載ミサイルの3M80「モスキート」の事を指す。
NATOコードでは「タランタルIII」と呼ばれ、M型と合わせて36隻が建造された。
搭載対艦ミサイルをP-15「テルミート」から3M80「モスキート」に変更したほか、1241.1型では見送られたディーゼル・ガスタービン混載機関(CODAG)が搭載された事が最大の特徴。
バリエーションに3M80「モスキート」対艦ミサイル発射機と23K1「モノリート」レーダーコンプレックスを撤去し、BM-14-17 17連装140mmロケット弾発射機 4基を搭載し、小型砲艦に改装されたMAK-160型やAK-630を「コールチク」に代わる新しい近接防空システム「パラーシ」1基に換装したR-60型がある。
- 1241.2P型
1241.2P号計画「モールニヤ2」型小型対潜艦と呼ばれる型。
NATOコードでは、ロシア語で「蜘蛛」を意味する「パウーク」(Паук)という単語から考案した「Pauk-I」と呼ばれた。
電子装備にはMGK-345「ブローンザ」ソナー、「ミウース」「レーイト」対空・水上捜索レーダー、MR-123「ヴィーンペルAM」射撃管制レーダー、「ペチョーラ」航法レーダー、「ヴィーンペルR2」電子戦システムを搭載している。
武装を対潜装備に変更し、RGB-12対潜ロケット弾を使用するRBU-1200「ウラガーン」5連装対潜ロケット発射機2基と固定式400mm単装魚雷発射管4基(SET-40対潜魚雷を装備)を搭載する。
8隻が建造され、そのうちブルガリアとウクライナに各2隻が輸出された。
この輸出型は1241.2E号計画型と呼ばれて区別されている。
- 1241.2型
1241.2号計画「モールニヤ2」型国境警備艦と呼ばれる、ロシア国境軍が運用する国境警備艦(巡視船)。
205P号計画型国境警備艦の代替として21隻が建造された。
NATOコードは1241.2型と同じく「Pauk-I」と呼ばれる。
基本装備については1241.2P型と同様である。
- 1241.2PE型
1241.2PE号計画型あるいは1241PE号計画型と呼ばれる、1241.2P型小型対潜艦の輸出型として開発された型。
NATOコードでは「Pauk-II」と呼ばれる。
魚雷発射管を400mm単装魚雷発射管4基から533mm連装魚雷発射管2基(53-65KE対潜魚雷、SET-65E対潜魚雷を搭載)に換装しているほか、対空・対水上レーダーに1241.7型や141.8型大型ミサイル艇に搭載されたものと同様のMR-352「ポジチーフE」レーダーが搭載されている。
なお、1990年から1991年にかけて3隻がイラク向けに起工したが、イラクに対する国際的な禁輸措置から納入は見送られ、このうちの2隻がロシア本国で運用されることとなり1241.2PE号計画型国境警備艦として運用されているほか、インドに4隻、キューバに1隻が輸出されている。
- 1241.7型
1241.1号計画を元に立案された型。R-71の1隻のみが建造された。
NATOコードでは「タランタルII改」と呼ばれる。
防空システムをAK-630Mから3M87「コールチク」複合CIWSに換装された事が特徴である。
1992年からはコールチクは量産型に換装されたが、現在は対空兵装を全て取り外された状態になっているが現役である。
- 1241.8型・1241.8ME型
1241.1型のさらなる発展型として立案された型。
NATOコードでは「タランタルIV改」と呼ばれる。
艇の構成全体には変更は加えられていないが、新しくKh-35空対艦ミサイルの派生型として開発された3M24E「ウラーンE」艦対艦ミサイルを搭載したため、4連装4基16門のミサイル発射機は1241.1型とは配置が異なる。
対空兵装としては9K310「イグラー1」艦対空ミサイルとAK-630Mを搭載し、レーダーはMR-352「ポジチーフE」対空・水上捜索レーダーを主檣上に搭載している。
冷戦終結の影響で計画は事実上中止されたが、インド向けに1241.8ME型として復活することになった。
2隻がインドで建造され、主砲にはイタリア・オートブレーダ/オート・メラーラ製62口径76mm単装速射砲が搭載され、対空ミサイルは9K32M「ストレラー2M」を搭載、レーダーにはMR-352「ポジチーフE」、「ガルプーン・バールE」、「BEL リンクス」射撃管制レーダーが搭載している。
4隻が建造される予定である。
- 1241.9型
12411型の派生型で、1241.9号計画「モールニヤ」型大型ミサイル艇と呼ばれる型。
1981年から1995年にかけて13隻が建造された。
動力機関がディーゼル・ガスタービン混載機関(CODAG)から純ディーゼルに変更されている。
- 1242.1型
1242.1号計画「モールニヤ」型大型ミサイル艇と呼ばれる、1241.8型同様、1241.1型の発展型として計画された型。
諸装備は、1241.8型に準ずるが対艦ミサイルは12411型同様3M80E「モスキート」対艦ミサイルを搭載している。
R-5の1隻のみが建造された。