【セントエルモの火】(せんとえるものひ)

霧や雨の中を航海する際、マストの先端部などに発生する事がある青白い炎。シューシューという独特の音を伴う。
その正体は湿気やチリなどと船体が接触して生じる静電気のコロナ放電であり、現代では航空機でも発生する事がある。

古代から船乗りの間で心霊現象や神託として畏怖され、「セントエルモ」の名も航海の守護聖人である聖エルモを由来とする。
古代ギリシャではアルゴー船の英雄「カストルとポルックス」、道教では船乗りと漁夫を守護する女神「媽祖」の名で呼ばれた。
ポルトガルでもコルポサント(corpo santo : 聖体)とみなし、船が神の祝福を受けている証とされた。
洋の東西を問わず瑞兆とされ、それが現れた船は沈没の危険から守られると謂う。

悪天候時に船上で目撃されるので、目撃者は嵐や時化から生還した幸運な船乗りになる可能性が高い。
実際にはそのまま溺死している可能性も高いのだが、溺死した船乗り達がセントエルモの火について何かを語る事はない。


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