【スペースジェット】(すぺーすじぇっと)

Mitsubishi Space Jet.

三菱重工業と子会社の「三菱航空機」が開発・生産を進めていた国産の小型双発ジェット旅客機
「日本企業が設計・開発・最終組立まで行う旅客機」としては、1960〜1970年代に開発・生産されたYS-11以来、約50年ぶり・2機種目の機体となった*1
以前は「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」と呼ばれていた。

機体は70〜90席クラスで、国内の地域間輸送やLCCでの使用に特化されたサイズとなっているが、構造部材の軽量化や機体形状の最適化などにより、競合他社の機体に比べて燃料消費率を2割節減すると共に低騒音化・環境負荷の軽減に成功した。
また、キャビンは座席の間隔を広く取り、手荷物収納スペースも増やすなど、乗客の居住性向上も目指すこととしていた。

本機の開発は、2002年に経済産業省が打ち出した「環境適応型高性能小型航空機」計画に端を発する。
このプロジェクトでは、YSXまでの「各社横並び事業」ではなく、積極的に参加する企業が自己責任で開発を推し進めることとされ、これに参加を表明した三菱が中心*2となって計画が始動した。

2010年9月に図面設計を完了。同月30日*3、生産が開始。
2014年10月18日に初号機がロールアウト、翌2015年11月11日に名古屋飛行場*4初飛行を行った。
その後、日米で試験飛行を行い、ユーザーへの納入を目指していたが、度重なる納入延期によって金の壁に直面。
さらに2020年になって、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行による航空需要の大幅な減退で商品化が困難となり、2020年10月、計画の凍結が発表された。

スペックデータ(予定)

形式M100M90
タイプSTD
(標準型)
ER
(長距離型)
LR
(航続距離
延長型)
STD
(標準型)
ER
(長距離型)
LR
(航続距離
延長型)
乗員2名(機長副操縦士
座席数
(単一クラス)
78席92席
座席数
(2クラス)
70〜74席81〜85席
全長33.4m35.8m
全高10.4m
全幅29.7m
貨物室容積644cubic feet
最大離陸重量36,850kg38,995kg40,200kg39,600kg40,995kg42,800kg
最大着陸重量36,200kg38,000kg
エンジンギアードターボファン×2基
P&W PW1215GP&W PW1217G
推力66.7kN×275.6kN×2
最大運用速度M0.78
離陸滑走距離
(最大着陸重量時)
1,450m1,620m1,720m1,490m1,600m1,740m
着陸滑走距離
(最大着陸重量時)
1,380m1,420m
航続距離
(旅客満載時)
1,530km2,730km3,380km1,670km2,400km3,310km


派生型

  • M90:
    座席数90席の基本モデル。
  • M100:
    座席数70席の小型モデル。
    • M90/100STD:
      標準型。
    • M90/100ER:
      航続距離延長型。
    • M90/100LR:
      長距離型。

*1 「三菱製の旅客機」としては、第二次世界大戦前の1940年に開発された「MC-20(「一〇〇式輸送機」として陸軍に納入された機体の民間型)」以来、75年ぶりとなる。
*2 この他、富士重工業と日本航空機開発協会、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、東北大学がプロジェクトに参加した。
*3 くしくもこの日は、2006年にYS-11が国内エアラインから退役した日でもあった。
*4 YS-11の初飛行も同飛行場で行われた。

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