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*&ruby(すぺーすしゃとる){【スペースシャトル】}; [#pb037348]
Space Shuttle.~
[[アメリカ航空宇宙局（NASA）>NASA]]が運用していた[[宇宙船]]。~
任務ごとの使い捨てではなく、機体総重量の約90%が再利用可能となっている点が特徴だった。~
~
[[アメリカ航空宇宙局（NASA）>NASA]]がかつて運用していた[[宇宙船]]。~
従来の宇宙船のように「任務ごとの使い捨て」ではなく、機体総重量の約90％が再利用可能となっている点が特徴だった。~
[[人工衛星]]の打ち上げや衛星軌道上での学術実験、宇宙ステーションの建設及び人員・資材の搬送に用いられていた。~
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実験機の&ruby(エンタープライズ){Enterprise};、実用機の&ruby(コロンビア){Columbia};、&ruby(チャレンジャー){Challenger};、&ruby(アトランティス){Atlantis};、&ruby(ディスカバリー){Discovery};、&ruby(エンデバー){Endeavour};の計6機が建造された。~
このうちコロンビア号・[[チャレンジャー]]号は事故により喪失（後述）、他は[[運用寿命]]により2011年に退役したため、稼働状態のスペースシャトルは現存しない。~
実験機を含めて計6機が建造され、うち2機が事故で喪失、1機は初期に運用を終了し、他は[[運用寿命]]により2011年に退役。~
このため、稼働状態のスペースシャトルは現存しない。~
後継機の開発が進められているが、[[開発費の高騰>金の壁]]から見通しはまだ不透明である。~
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後継機として[[ロッキード・マーチン]]社の[[X-33]]&ruby(ベンチャースター){Venture Star};など数種類の機体が提案されたが、開発費の高騰から挫折。~
現在も新たな後継機の開発は進められているが、見通しはまだ不透明である。~
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関連 [[オービター]] [[エンタープライズ]] [[NASA]] [[ブラン]]
関連：[[オービター]] [[エンタープライズ]] [[NASA]] [[ブラン]] [[X-33>Xプレーン]]
**略史 [#kd053e7f]
:1960年代|[[NASA]]が「再利用が可能な[[宇宙船]]」についての構想を計画。
:1972年|プロジェクトが始動。
:1977年|[[エンタープライズ]]号による滑空試験を開始。
:1981年4月12日|コロンビア号（STS-1）が打ち上げ成功。以降、本格的なミッションがスタートした。~
:1986年1月28日|[[チャレンジャー]]号（STS-51L）が打ち上げの上昇中の事故により爆散。乗員は全員死亡。
:1992年|最終号機「エンデバー」号がロールアウト((1986年の爆発事故で失われたチャレンジャーの補充代替として、ストックされていた予備部品をもとに建造された。))。
:2003年2月1日|コロンビア号（STS-107）が[[大気圏]]再突入時の事故により空中分解。乗員は全員死亡。
:1977年|初号機・[[エンタープライズ]]号による滑空試験を開始。
:1981年4月12日|2号機（実用初号機）・[[コロンビア]]号が宇宙空間への打ち上げに成功。以降、本格的なミッションがスタートした。~
:1986年1月28日|実用2号機・[[チャレンジャー]]号が打ち上げの上昇中の事故により爆散。[[乗員>宇宙飛行士]]は全員死亡。
:1992年|[[チャレンジャー]]号の喪失を補填するため、[[NASA]]に備蓄されていた予備部品から「エンデバー」号を建造。これが最終号機となった。
:2003年2月1日|コロンビア号が大気圏再突入時の事故により空中分解。[[乗員>宇宙飛行士]]は全員死亡。
:2011年3月|ディスカバリー号が[[運用寿命]]を満了し、退役。
:2011年5月|エンデバー号が[[運用寿命]]を満了し、退役。
:2011年7月|アトランティス号が[[運用寿命]]を満了し、退役。~
最後の一機が退役に至ったため、これをもって全プロジェクトが終了。
:2011年7月|最後の1機となったアトランティス号が[[運用寿命]]を満了し、退役。~
これをもって全プロジェクトが終了。
**構造・性能 [#bdfaa485]
[[オービター]]1機、[[固体燃料ロケット]]ブースター2基、外部[[燃料]]タンク1基で構成される。~
[[オービター]]は100回((実際には、1回のミッションを終えるごとに機体全体のオーバーホールが必須とされていた。))、ブースターは10〜20回程度の再利用を想定して設計されているが、外部燃料タンクだけは使い捨てで、衛星軌道への上昇中に切り離され、大気との[[摩擦]]で燃え尽きる。~
[[オービター]]は100回、ブースターは10〜20回程度の再利用を想定して設計されていた。~
ただし、実際にはミッションごとに[[専用輸送機>B747]]（後述）で工場に運び込んで[[大修理>オーバーホール]]が行われており、経済上の効率性には疑問の余地があった。~
また、外部燃料タンクだけは使い捨てで、衛星軌道への上昇中に切り離される。~
~
任務終了後、[[オービター]]は大気圏へ突入し、[[グライダー>滑空機]]のように滑空・[[着陸]]が可能だったが、上昇用[[エンジン]]の[[燃料]]が外部燃料タンクからしか供給されないため、[[着陸]]後、単体での再離陸は不可能だった。~
そのため、着陸後は専用の[[輸送機]]((Space Shuttle Carrier Aircraft＝SCA。&br; [[ボーイング747-100>B747]]（もとアメリカン航空）及び[[747SR>B747SR]]（もと[[日本航空]]）を改造したもの。))に載せ、発射地であるケネディ宇宙センター（フロリダ州・ケープカナベラル所在）に空輸されていた。~
ただし、実際にはケネディ宇宙センターとカリフォルニア州・[[ロジャース乾湖]]のNASAドライデン飛行研究センター付属飛行場にしか着陸できなかった((ケネディ付近の天候が悪化した際の代替着陸場として設定されていた。&br; なお、プロジェクトの開始当初は他の場所への着陸も検討されており、候補地の中には日本の[[嘉手納空軍基地]]もあった。))。
任務終了後は[[オービター]]が大気圏再突入を行い、[[グライダー>滑空機]]のように滑空・[[着陸]]が可能。~
ただし、外部燃料タンクを再接続しなければ[[離陸]]できないため、回収するために専用[[輸送機]]の手配を要していた。~
実際の運用では[[B747-100>B747]]・[[B747SR-100>B747SR]]を改造した専用の[[輸送機]]（SCA）が用意されていた。~
~
また、大気圏再突入時の[[熱の壁]]の影響が設計時の想定を越えており、余熱で機体主構造を損傷する危険性があった。~
このため、特殊な強制冷却装置を用意し、着陸後すぐに冷却しなければならなかった。~
~
理論上は[[滑走路]]さえあれば[[着陸]]は可能であったが、上記の措置に伴う輸送コストや[[管制]]手続き上の問題から、NASA管理施設以外の場所に着陸した事例はない。~
発射地であるケネディ宇宙センター以外での[[着陸]]は強く忌避され、運用コストが高騰する後期ミッションほどその傾向が強かった。~
天候不順などでケネディへの帰還が滞った場合も、可能な限り、ケネディ上空が順天になるまで滞在日程を延期する事が選ばれた。
>これは、大気圏再突入時の摩擦熱が設計時の想定を越えており、専用の強制冷却装置が必要になったためである((強制冷却を行わないと、そのままでは耐熱タイルの帯びた熱が機体に移り、機体主構造を傷める恐れがあった。))。~
理論上は[[滑走路]]と冷却装置さえ設置すれば着陸可能なのだが、上記二箇所の[[飛行場]]以外には設置されなかった。~
また、機体の輸送コストが余分にかかるため、ドライデンへの着陸も忌避されており、プロジェクトの後期にはケネディ付近の天候が不順の場合、地球への帰還を出来る限り延期してケネディに着陸させるようにしていた。~
**構成 [#cc6ad83a]
:[[オービター]]|スペースシャトル・システムの核となる部分。大気圏への再突入が可能。~
前部に乗員の生活・生命維持設備、中央に貨物室、後部に[[エンジン]]・飛行制御部品を配置。~
:外部燃料タンク(ET)|オービターの[[エンジン]]用推進剤、液体酸素・液体水素が入っている。~
前部に[[乗員>宇宙飛行士]]の生活・生命維持設備、中央に貨物室、後部に[[液体燃料ロケット]]と飛行制御部品を配置。~
[[ロケットエンジン]]は外部燃料タンクに依存しており、打ち上げの行程で[[推進剤>燃料]]を全て使い果たす。~
:外部燃料タンク(ET)|オービターの[[エンジン]]用[[推進剤>燃料]]である液体酸素・液体水素が入っている。~
打上げ9分後（高度約150km）に切り離され、唯一再利用されない部分。~
発射台上でオービターとロケットブースターを繋ぐ役割も果たす。
:固体ロケットブースター(SRB)|[[推力偏向装置>姿勢制御装置]]を搭載。~
外部燃料タンクに2本取り付けられ、打上げ2分後(高度約45km)に切り離される。~
外部燃料タンクに2本取り付けられ、打上げ2分後（高度約45km）に切り離される。~
落下後回収され、再利用される。~
発射台上ではボルトで固定され、発射の瞬間までスペースシャトル全体を支えている。~
||全長|全高|全幅|重量|[[推力]]|
|オービター|37.2m|17.2m|23.8m|78〜79t|170t(大気圏)/213t(真空)|
|ET|47.0m|-|8.4m|35t(自重)/720t(推進剤)|-|
|SRB|45.5m|-|3.7m|88t(自重)/502t(推進剤)|1200t|
|CENTER:オービター|37.2m|17.2m|23.8m|78〜79t|170t（大気圏）/213t（真空）|
|CENTER:ET|47.0m|CENTER:-|8.4m|35t（自重）/720t（推進剤）|CENTER:-|
|CENTER:SRB|45.5m|~|3.7m|88t（自重）/502t（推進剤）|1,200t|
**オービターの一覧 [#p54dc9bf]
オービターは「[[エンタープライズ]]型」として、試作・試験機5機と実用機4機が建造された（この他、固有の名前を持つ実物大模型が2機あった）。~
ただし書面上、NASAではプロジェクトの終了まで実用機全てを「[[実験機]]」として扱っていた。~
~
|>|>|>|>|CENTER:''実用機''|
|機体番号|機名|初飛行|最終飛行|備考|
|OV-102|[[コロンビア]]|1981.4.12&br;〜1981.4.14|2003.1.16&br;〜2003.2.1|実用初号機。&br;地球へ帰還途中、空中分解事故により喪失（後述）。|
|OV-099|[[チャレンジャー]]|1983.4.4&br;〜1983.4.9|1986.1.28|地上試験機「STA-099」を転用。&br;打ち上げ直後、空中分解事故により喪失（後述）。|
|OV-103|ディスカバリー|1984.8.30&br;〜1984.9.5|2011.2.24&br;〜2011.3.9|現在、エンタープライズに替わって&br;国立航空宇宙博物館に展示されている。|
|OV-104|アトランティス|1985.10.3&br;〜1985.10.7|2011.7.8&br;〜2011.7.21|スペースシャトル計画全体の最終飛行を行った機体。|
|OV-105|エンデバー|1992.5.7&br;〜1992.5.16|2011.5.16&br;〜2011.6.1|実用機としては最終号機。&br;「チャレンジャー」喪失後の代替機として、&br;NASAに備蓄されていた予備部品から建造された。|
|>|>|>|>|CENTER:''試験機''|
|機体番号|機名|初飛行|最終飛行|備考|
|OV-101|[[エンタープライズ]]|1977.2.15|1977.10.26|大気圏内での進入と着陸試験に供用。宇宙飛行能力なし。&br;「チャレンジャー」喪失時の代替機候補だったが、&br;宇宙飛行能力は実装されなかった。|
|OV-095|>|>|CENTER:-|[[アビオニクス]]の試験・訓練用模擬装置。|
|CENTER:-|パスファインダー（�機�|>|CENTER:-|地上施設内での移動と取扱訓練用の模擬機。|
|MPTA-098|>|>|CENTER:-|推進と燃料供給システムの試験機。|
|STA-099|~|~|~|構造材の疲労試験と熱試験に供用された機体。&br;後に宇宙飛行能力を実装して「チャレンジャー」となる。|
|>|>|>|>|CENTER:''その他''|
|機体番号|機名|初飛行|最終飛行|備考|
|OV-100|インディペンデンス|>|CENTER:-|ヒューストン宇宙センターに展示されている実物大模型。&br;かつては「エクスプローラー」という名前で、&br;ケネディ宇宙センターに展示されていた。|
|STA-098|パスファインダー（�供�|>|CENTER:-|日本の企業がイベント展示用に制作した実物大模型。&br;イベント終了後に合衆国宇宙ロケットセンターに寄贈された。&br;機体番号と機名は寄贈後に与えられた名誉称号。|
**スペースシャトルの事故 [#v8b32947]
***チャレンジャー号（STS-51L）の事故 [#h547671d]
1986年1月28日、[[チャレンジャー]]号（STS-51L）が打ち上げの上昇中に爆発、乗員全員が死亡した。~
1986年1月28日、[[チャレンジャー]]号（STS-51L）が打ち上げの上昇中、外部燃料タンクが爆発。~
この爆発でオービターは空中分解し、[[乗員>宇宙飛行士]]全員が死亡した。~
~
推定される原因は、ロケットブースターのつなぎ目を密封するＯリングの低温硬化であった。~
これによって、隙間からガスが漏れ出してブースターの固定具が溶解し、不安定になったブースターが燃料タンクに突き刺さり爆発に至った。~
密閉性を損なってガスが漏出し、固定具が溶解。不安定になったブースターが燃料タンクに突き刺さり爆発に至った。~
~
当日の打ち上げ延期を求める現場の声もあったが、それを無視した[[NASA]]の管理体制を問題視された。~
また、この事故の教訓から、大気圏内の事故を想定した緊急脱出装置が装備されることとなった((それまで、打ち上げ時・大気圏突入時の事故は想定されていなかった。))。~
~
そしてこれにより、スペースシャトルの安全性そのものに疑問が投げかけられ、爾後しばらくの間、[[人工衛星]]の打ち上げなど、宇宙へ物資を輸送する交通手段は従来の使い捨て式ロケットに回帰することになった((これは基本的に現在でも変わっておらず、現在運用中の国際宇宙ステーションへの人員・資材輸送においても、（ロシアの「ソユーズ」や日本の「こうのとり」など）使い捨て式の[[宇宙船]]をその都度打ち上げて対応している。))。
また、この事故の教訓から、大気圏内での事故を想定した[[緊急脱出]]装置が装備されることとなった。
>逆に言えば、それまで[[緊急脱出]]装置は装備されていなかったし、致命的な機械トラブル自体があまり想定されていなかった。
この事故はスペースシャトルに対する社会的信用を失墜させた。~
また、十分な安全対策を取るようになった結果、打ち上げに際しての運用コストが爆発的に高騰。~
[[人工衛星]]などの産業利用において、スペースシャトルは費用対効果で使い捨てロケットに対抗できなくなった。
>最も楽観的な予測では、スペースシャトルは1回のフライトを1200万ドルで運行可能と目された。~
しかし最終決算から概算するに、1回のフライトに必要な費用は少なくとも15億ドルを超えている。
***コロンビア号（STS-107）の事故 [#v56ad244]
2003年2月1日にコロンビア号（STS-107）が[[大気圏]]再突入時に空中分解を起こし、乗員全員が死亡した。
2003年2月1日に[[コロンビア]]号（STS-107）が大気圏再突入時に空中分解を起こし、[[乗員>宇宙飛行士]]全員が死亡した。~
~
推定される原因は、発射時に外部燃料タンクから脱落した断熱材の破片が衝突したこと。~
これにより、左[[主翼]]の[[強化カーボン>炭素繊維強化樹脂]]製パネルが損傷し、大気圏突入時にその断面から高温のプラズマが侵入し、左翼の構造材が溶解・強度低下したことにより空中分解に至った。~
これにより、左[[主翼]]の[[強化カーボン>炭素繊維強化樹脂]]製パネルに亀裂が発生。~
大気圏再突入時に亀裂から高温のプラズマが侵入し、左翼の構造材が溶解して空中分解に至った。
