*&ruby(すぺーすしゃとる){【スペースシャトル】}; [#pb037348]
Space Shuttle.~
[[アメリカ航空宇宙局(NASA)>NASA]]が運用していた宇宙機。~
従来の宇宙船・[[人工衛星]]はロケットで打ち上げられ、任務終了ごとに使い捨てられてきたが、それらとは異なり、機体総重量の約90%が再利用可能となっている点が特徴だった。~
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本機の開発は、NASAが1960年代に「再利用が可能な宇宙船」についての構想を立てたことに端を発する。~
1972年にプロジェクトが始動し、1977年に&ruby(エンタープライズ){Enterprise};号による滑空試験を開始。~
そして、1981年4月12日に&ruby(コロンビア){Columbia};号(STS-1)を打ち上げたことにより、本格的なミッションがスタートした。~
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外形は[[オービター]]1機、[[固体燃料ロケット]]ブースター2基、外部燃料タンク1基で構成されており、[[オービター]]は100回、ブースターは10〜20回程度再利用ができるよう設計されている。(外部燃料タンクは切り離しの際、大気圏で燃え尽きてしまうため、使い捨てとなる)~
任務終了後、[[オービター]]は大気圏へ突入し、[[グライダー>滑空機]]のように滑空して[[着陸]]することができる。~
しかし、メインエンジンを動かす燃料が外部燃料タンクからしか供給されないため、[[着陸]]後は自力で再離陸することができなかった。~
そのため、発射地のケネディ宇宙センター以外に着陸した場合は、[[ボーイング747>B747]]を改造した専用の[[輸送機]](Space Shuttle Carrier Aircraft=SCA)に載せ、ケネディ宇宙センターへ空輸されていた。~
>ただし、ケネディ以外で着陸できる場所は[[ロジャース乾湖]]のドライデン飛行研究センターのみに限られていた((プロジェクトの開始当初は他の場所への着陸も検討されており、候補地の中には日本の[[嘉手納空軍基地]]もあった。))。~
これは、オービターが大気圏へ再突入する時に帯びる高温の摩擦熱を、着陸後すぐ強制的に冷却せねばならず、そのための装置がケネディとドライデンにしか置かれていなかったためだったが、ドライデンに着陸すると機体移送のコストが余分にかかるため((どちらに着陸するにしても、ミッション終了後にはメーカーでのオーバーホールが必要とされており、そのコストだけは避けられなかった。))、後にはケネディ周辺の天候が不順の場合、可能な限り帰還を延期してケネディに着陸させる方針を採ってきた。

これまでに実験機の[[エンタープライズ]]を始め、コロンビア、&ruby(チャレンジャー){Challenger};、&ruby(アトランティス){Atlantis};、&ruby(ディスカバリー){Discovery};、&ruby(エンデバー){Endeavour};の、[[オービター]]6機(実験機1機+実用機5機)が建造された。~
このうちコロンビア号とチャレンジャー号の2機が事故で失われ、後者の代替としてエンデバー号が建造された(さらにほとんどのケースでカウントされないが地上実物大模型の「パスファインダー」号も存在する)。~
2003年にコロンビアが事故で失われた後、残った3機(アトランティス・ディスカバリー・エンデバー)で運用が続けられてきたが、2011年になって次々と[[運用寿命]]の満了を迎え、3月にディスカバリー、5月にエンデバー、そして7月に最後の1機となったアトランティスが退役し、全プロジェクトが終了した。~
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同機の後継機として、[[ロッキード・マーチン]]社の考案する[[X-33]]&ruby(ベンチャースター){Venture Star};を始めとした数種類の機体が提案されたが、技術的な問題から開発費が高騰して挫折。~
現在も新たな後継機の開発は進められているが、見通しはまだ不透明である。~
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関連 [[オービター]] [[エンタープライズ]] [[NASA]] [[ブラン]]

**構成 [#cc6ad83a]
-[[オービター]]~
全長37.2m 全高17.2m 全幅23.8m 重量78〜79t [[推力]]170t(大気圏)213t(真空)~
スペースシャトルの核となる部分。[[大気圏]]への再突入が可能。~
主に前部の乗員室(クルーの生活場所)、中央の貨物室、後部のメインエンジンや軌道制御ロケット等の飛行制御部からなる。~
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-外部燃料タンク(ET)~
全長47.0m 直径8.4m 自重35t 推進剤720t~
オービターのエンジン用推進剤、液体酸素・液体水素が入っている。~
打上げ9分後(高度約150km・約29,000km/h)に切り離され、唯一再利用されない部分。~
発射台上でオービターとロケットブースターを繋ぐ役割も果たす。~
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-固体ロケットブースター(SRB)~
全長45.5m 直径3.7m 自重88t 推進剤502t 推力1200t [[推力偏向装置]]付~
外部燃料タンクに2本取り付けられ、打上げ2分後(高度約45km・4,800km/h)に切り離される。~
落下後回収され、再利用される。~
発射台上ではボルトで固定され、発射の瞬間までスペースシャトル全体を支えている。~

重量から見てわかるが、他の宇宙ロケットと同じように、約80tの[[オービター]]を宇宙まで飛ばすために推進剤1700t・合計推力2600t程度を費やす。~

**スペースシャトルの事故 [#v8b32947]
-チャレンジャー号(STS-51L)の事故~
1986年1月28日に[[チャレンジャー]]号(STS-51L)が打ち上げの上昇中に固体ロケットブースターの故障が引き金となって爆発を起こし、乗員全員が死亡する事故が起こった。(チャレンジャー号はコロンビア号に続いて運用が開始された((もともとは地上強度試験用にコロンビアより前に製造された機体で、改装され2機目の宇宙飛行用オービターとなった。))2機目の[[オービター]]であった)~
また、乗員には民間人から選ばれた教師も搭乗していたことでも注目された。~
原因はロケットブースターのつなぎ目からガスが漏れないようにするリング(Oリング)が低温で硬くなったため隙間ができ、そこからガスが漏れ、ブースターを固定するステーが溶解、そして不安定になったブースターが燃料タンクに突き刺さり爆発、その爆風がオービターの空力破壊を招いたものと考えられた。~
当日の打ち上げ延期を求める現場の声もあったが、それを無視した[[NASA]]の管理体制を問題視された。~
またこの事故の教訓から大気圏内の事故を想定した緊急脱出装置が装備されることとなった(シャトルは打ち上げ時と大気圏突入時は事故を想定していなかった)~
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 参考リンク~
 エンタープライズ号の滑空試験を捉えた写真~
 http://www.dfrc.nasa.gov/Gallery/Photo/ALT/index.html~
~
 [[NASA]]のホームページ内にあるチャレンジャー号の事故に関する内容~
 http://www.hq.nasa.gov/office/pao/History/sts51l.html~
 http://www-pao.ksc.nasa.gov/kscpao/shuttle/missions/51-l/mission-51-l.html~

-コロンビア号(STS-107)の事故~
2003年2月1日にはコロンビア号(STS-107)が[[大気圏]]へ突入する際、損傷した[[主翼]]から空中分解を起こし、乗員全員が死亡する事故が起こった。~
直接の原因は、発射の途中に外部燃料タンクから脱落した断熱材の破片が衝突したことで左[[主翼]]の[[強化カーボン>炭素繊維強化樹脂]]製のパネルを破壊したためと考えられ、大気圏へ突入する際、そこから高温のプラズマが侵入し、左翼の構造材を溶かして強度を低下させ空中分解を起こしたと考えられている。~
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 参考リンク~
 コロンビア事故最終報告書 非公式日本語版~
 http://www.lizard-tail.com/isana/final_report/index.html
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 関連リンク~
 JAXAスペースシャトル解説~
 http://iss.sfo.jaxa.jp/shuttle/index.html

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