【スパイク】(すぱいく)

Spike.

鋭い突起を持つ物体、または突起そのもの。いわゆる「くさび状」の形状をしているもの*1
一般的には何かに刺して保持するための器具を指し、刃物や弾丸は含まれない。釘や杭が代表例である。
軍事においても一般的には建物やコード類などを固定する釘や、障害システムを支えるための杭を指す事が多い。
靴やタイヤに使う滑り止めとしての短いスパイクを指す事もある。
変わった所では、車両を待ち伏せする際には道路の幅全体にスパイクを敷き詰める事がある。逃走中の車両がこれを通過すれば全てのタイヤが同時にパンクし、横転やスリップなどの危険を避けつつ車両を停止させて人質救出や誘拐を行える、という寸法である。

歴史を見る場合、おそらく軍用のスパイクとして最も有名なのは突き刺して人間を殺傷する武器だと思われる。
火器が発明されるまで、戦争における殺傷能力の基本は鋭い矢尻や槍の穂先などといったスパイク類であった。
これは鋭い先端を突き刺す、という行為が人間の筋力をもっとも効率的にマンストッピングパワーに変換できる動作であった事と関係する。

刃物で切り裂く場合は血管や筋肉を正確に切り裂く技術か時間的余裕を要する上、頑丈な鎧を貫通する能力は期待できない。
このため、刀剣類はもっぱら無抵抗な相手や非武装の相手を始末するために、または槍や弓などを持ち込めない屋内で戦うために用いられてきた。

一方でスパイク状の鋭利な先端であれば、素人が使っても突いて胴体に当てさえすれば重傷になり、鎧を貫く事も容易である。
扱いの単純さのため重量の許す限り大型化でき、密集隊形で長大な槍を携えて待ち伏せ、突き刺したり殴り倒すと同時に槍自体を即席のとして利用する事も多かった(いわゆる"槍衾")。

同様の理由から、障害物や落とし穴にスパイクを仕掛け、乗り越えようとした者に突き刺さるようにしておく事も多い。
人間が制止した器物に衝突しても滅多に致命傷にはならないが、衝突先が鋭利な先端を持っていれば話は別である。
スパイクに体重をかければ皮膚は容易に突き破られ、筋肉や血管を傷つけられた歩兵はもはや任務を継続できなくなる。

また、艦載砲の発展以前の艦艇では「衝角(ラム)」と呼ばれるスパイクを船首に配置し、白兵戦に先んじて船ごとの体当たりで敵船に穴を開けて沈没させる場合がある。


*1 どう転じたのか、アメリカ空軍の無線用語では「味方以外からレーダー波の照射を受けた」事を意味するコールとして使用される。

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