【ジープ】(じーぷ)

Jeep.

1940年代、アメリカ陸軍向けに生産された汎用小型トラック。
現代で『ジープ』と言う場合はクライスラー社*1に帰属する登録商標を指す。

60年以上前の設計は現代の商用に耐えないため、一般名詞としては現代の後継車種を指す事の方が多い。

四輪駆動式の小型トラックで、道路のない荒れ地で、長期間走り続ける事を念頭に置いた頑丈な構造。
銃撃や地雷による被害も想定されたため、現場の車載工具だけで修理できる簡素な設計も要求された*2
生産性・整備性を確保するため、屋根もドアも全く存在しないオープンカーであるのも特徴。

逆に、悪天候などから乗員・積荷を保護できない点は明白な弱点ともいえる。
1940年代当時には歩兵が悪環境下に生身でさらされるのは常態であり、弱点とは考えられていなかった。
しかし精密機械や人間工学への依存が大きい現代では軍用オープンカーの需要は少ない。

第二次世界大戦の期間中に約60万台、戦後も1960年代半ばまでに10万台以上生産された。
主に偵察・警戒・連絡用、また運搬用として、軍馬軽戦車豆戦車の代替として広く使われた*3

また、フランス・インド・日本・中国・韓国・ミャンマー・旧ソ連・イスラエルなどでも生産されていた。

関連:キューベルワーゲン? 73式小型トラック M151 HMMWV

海外での生産

本車はアメリカ本国以外にも、以下の国々で生産されている。

日本

四式小型貨物車
大東亜戦争初期のフィリピン攻略戦で鹵獲されたジープ*4をトヨタ自動車がデッドコピーしたもの。
1944年に陸軍制式採用されたが、極度の資材欠乏と労働力不足から生産が間に合わず、活躍できなかった。

なお、トヨタ自動車は戦後「トヨタ・ジープ」「ランドクルーザー」などの四輪駆動車を販売したが、この車と直接の関連はない。
三菱ジープ
1950年代に新三菱重工(後の三菱自動車)がノックダウン生産を行ったモデル。
警察予備隊→保安庁→防衛庁に導入(後述)された他、(国産化された改良型も加えて)民間にも広く売り出されたが、1998年に生産終了。
73式小型トラック(旧)*5
前述した三菱ジープの防衛庁向けモデル。
陸上自衛隊及び航空自衛隊で使用されていた。

ソ連

第二次世界大戦中にアメリカからレンドリースされた本車を基に「GAZ-67/67B」というデッドコピー品が生産されていた。
同車は戦中から戦後にかけて92,843両が生産され、ソ連の他、中国・北朝鮮・ポーランドなどに向けて大量に輸出された。

フランス

1954年からオチキス社がライセンス生産していた。

中華民国/中華人民共和国

第二次世界大戦中、対日戦向けにライセンス生産が行われ、約2,000台が製造された。
その後、1984年にアメリカン・モーターズ*6との合弁企業「北京ジープ」社が設立され、現在でもジープ・チェロキーが生産されている。

大韓民国

双龍自動車*7が「コランド」の名でCJ-7型をライセンス生産した他、同社オリジナルのバリエーションも生産されていた。

インド

マヒンドラ&マヒンドラ社が現在でもライセンス生産を行っている。

ミャンマー

「ミャンマー・ジープ」の名で国産化されている。
独自の改良が施されており、国産部品の他、日本製の部品も用いられている。

イスラエル

AIL(オートモーティブ・インダストリー・リミテッド)社でラングラーをベースとした「AIL・ストーム」が生産され、や警察で採用されている。


*1 当初は製造元であるウィリス・オーバーランド社の商標だったが、何度も買収が繰り返されて帰属が転々と移り変わっている。
*2 当時の軍部の要求には「地雷を踏んでタイヤ4本のうち2本を失っても、残りのタイヤとスペアタイヤで100km走れること」というものがあった。
*3 変わった用途では、タイヤを鉄道用の車輪に換装して機関車の代用(ジープ・トレイン)として用いられた例もある。
*4 アメリカン・バンタム社で生産された車輛。
*5 現在の同名車輛はベース車が変わっており、更に正式名称も「1/2tトラック」となっているため、ここでは「旧」とする。
*6 当時、アメリカで本車を生産していた企業。現在はクライスラー社に買収され消滅。
*7 2020年、実質上経営破綻。

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