【コンピュータ2000年問題】(こんぴゅーたにせんねんもんだい)

1990年代末期に顕在化した「西暦2000年になるとコンピュータが誤作動する」という危惧。

概要

かつてのコンピュータは、プログラムやデータで日付を扱う際「年」を西暦の下2桁のみで表現するのが一般的であった。
これは、黎明期のコンピュータが「4桁の数字で済むデータを2桁に省略しなければならない」ほど記憶容量や計算能力に余裕がなかったためであり、これらの問題が克服された後も慣習的に2桁での表記が続いていた。
実際、日付の表記方法を変えるとなれば、当時存在していたほぼ全てのコンピュータが仕様変更や機種交換を余儀なくされ、膨大な手間と予測不能なトラブルを招くため放置されていた。

だが、そうしたシステムは西暦2000年を示す「00」を西暦1900年と誤認する可能性があり、それによってシステムが誤作動する*1恐れが指摘された。
今日の高度情報社会の基盤となるコンピュータシステムは当時すでに普及しており、放置すると重篤な社会の混乱を引き起こすとされ、その確認と修正が全世界規模で行われた。
事前に予想されていた通り、これらの確認・修正作業は困難を極めた。
対象となるシステムの中には、開発当時の技術者が世代交代して現役を退くほど長期稼動していたものもあり、修正不可能なため新規設計のシステムに交換された事例も少なくない。

航空・軍事分野に関連する問題点

航空軍事の分野では次のような問題が危惧されていた。

…等々。

その後

日本では1999年12月31日〜2000年1月1日にかけて、通常ダイヤでは飛行中に午前0時(日本時間)を迎える国際線のフライトを「年明け以後の出発」や「欠航」としたり、鉄道においても、午前0時直前に最寄り駅で臨時停車させたりして不測の事態に備えていた。
実際に2000年になった際、一部の機械に小さなトラブルが出たものはあったが、重篤な被害には至らなかった。

この問題は人類史上において特筆に値する出来事には発展せず、いわゆる「世紀末カルト」の一種として急速に忘れ去られつつある。
当時の技術者たちがどのような問題を検知し、どのような対策を採っていたかについて全貌は明らかでなく、今となっては調べるのも容易ではない。
とはいえ、2000年になってからも類似の問題*2はたびたび生じており、コンピュータの誤作動にまつわる問題は「2000年問題」という枠を越えていつでも起こり得る*3普遍的な現象と化しつつあるのが現状である。


*1 一例を挙げると「データを日付順に並び替える処理をしても本来あるべき順序にならない」など。
*2 「閏年」の認識を誤っていた事が原因で起きた2000年2月29日のトラブル、オーストラリアの銀行システムが何故か「2010年」を「2016年」と誤認したトラブルなど。
*3 今後起こり得るとされるものには「GPS衛星に搭載された原子時計の桁あふれ」や「UNIXにおける『2038年問題』」などがある。

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