*&ruby(きゃんばー){【キャンバー】}; [#o93f3cb5] camber~ 反り。物体の形状が反っている様子。~ +車輌の車輪につけられる反り角の一種。車輪自体を若干[[ロール]]させた状態で取り付ける。~ 車体を正面から見た場合、すり鉢型に見えるものを正キャンバー、ハの字型に見えるものを逆キャンバーという。~ 前者は操舵輪の操舵性を向上させるため、後者は車体の[[ロール]]を防ぐためにつけられる。~ ~ +[[航空機]]では、翼の断面形状が進行方向に対して反っている様子を指す。~ その程度は、翼形中心線(断面における上面の線と下面の線を平均した線)と、翼弦線(断面における前縁から後縁に引かれた線分)との距離で示される。~ ~ キャンバーがない翼([[対称翼]])でも[[迎え角]]を大きくすることにより[[揚力]]を発生させることはできるが、[[抗力]]も大きくなってしまい、[[揚抗比]]が悪化してしまう。~ そこで翼にキャンバーを設けることにより、大きな[[迎え角]]を取らなくても[[揚力]]を得られるようにする。~ ~ [[主翼]]などは[[迎え角]]を取らなくても上向きの[[揚力]]を発生させるために、上面がふくらんだ形のキャンバーを持っている。~ [[コアンダ効果]]によって空気の流れは翼の表面に沿う。これによって翼上面の気流は下向きに偏向され、より強い[[ダウンウォッシュ]]を生み出し、この反作用によって[[揚力]]を生み出す。~ また翼の上側が膨らんでいると、上面の空気速度が下面より速くなるので、ベルヌーイの定理にしたがって上面の圧力が低くなる。この圧力差によって[[揚力]]を発生するのである。~ 特に層流だけでなく渦流が発生すると、機体の対気速度が遅くても気流の速度が上がり、[[揚力]]が増大する傾向にある。~ ~ さりとてキャンバーをあまり大きくしすぎると、今度は[[迎え角]]が小さくても高速時に[[抗力]]が大きくなってしまい、やはり[[揚抗比]]が悪化する。~ また渦流が強いと[[誘導抗力>抗力]]の増大や、気流の剥離による[[失速]]などのおそれもある。~ 以上の特性から、低速用の機体ではキャンバーの大きな[[主翼]]を、高速用の機体ではキャンバーの小さな[[主翼]]を採用することが一般的である。~ 高速向きの機体を離着陸させる際は、[[フラップ]]などを使って一時的にキャンバーを増大させ、低速でも[[揚力]]が得られるようにする。~ ~ 関連:[[コニカルキャンバー]]~