【イスラム原理主義】(いすらむげんりしゅぎ)

Islamic fundamentalism
イスラム教の経典「コーラン」に忠実であろうとする考え方のこと。しかし、この言葉の意味するところは明確になっていない。

元来、原理主義(根本主義)とはプロテスタントの一部勢力が「聖書の一字一句を言葉どおりに解釈する」として排他的な宗教活動をおこなったことを指す言葉である。
これになぞらえ、イスラム教の中でもコーランに忠実であろうとする勢力を、西側諸国のマスコミなどがこう呼んだ。

ただし、平和的なイスラム復興運動から、イスラム教への排他的な執着、果てはイスラム教徒による宗教戦争やテロリズムまでを十羽一からげに指しているので、イスラム教に対する差別を助長するおそれのある言葉でもある。
最近はマスコミなどによって、反社会的なテロリズムに対して使われることが多い。
近年ではイスラム原理主義というレッテルに対してスパイ活動の一環としての事実捏造、キリスト教原理主義者がイスラム教徒の社会的地位を失墜させるために行った陰謀、あるいは無知ゆえの感情論で事態をさらに混迷させた愚行、などとして批判される事も少なくない。
当のイスラム諸国においても狭義の原理主義(いわゆる“過激派”)は相互互助、慈悲、寛容などといったイスラム教徒としての倫理を無視し、テロリズムによる人的・経済的被害にイスラム教徒を巻き込んでも恥じる事もない、として大多数の国民から非難の眼差しを浴びている。

また、教義や組織が破壊的特性を持つのはイスラム教に特有の現象ではなく、どんな宗教でも、あるいは企業でも互助会でも政党でも趣味のサークルでも、とにかく新興組織にはありがちな錯誤であってイスラム教徒かどうかはあまり問題ではない、という主張もある*1
第一に重要なのはテロリズムによってのみ達成し得る危険な目標を掲げるリーダーの存在、第二に実際にテロリズムを実践できる人的・経済的資源であり、第三にテロリストの動機を生み出した深刻な社会問題(あるいは存在しない正義を信じさせる方法、すなわち「洗脳」に関する人権上の問題)であって、この3つが満たされた場合はいかなる思想・教条でもテロリズムの温床となり得る。

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*1 有名な例を挙げればオウム真理教、ナチス、奴隷貿易、黄巾の乱、フランス革命など。同類はどの時代のどの文化にも存在する。

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