【アメリカ海兵隊】(あめりかかいへいたい)

U.S Marine Corps.

アメリカ国防総省に属するアメリカの海兵隊で、合衆国における5つの軍事組織の一つ。
2014年11月現在で、現役将兵約186,000人、予備役数万人を擁している。

独立当初、当時のカリブ海に跳梁していた海賊を討伐するために武装船員によって編成された海兵隊を起源としている*1が、近代以降の軍事革命に伴って機能が変遷。
現在では「海外での武力行使を前提とし、アメリカ合衆国の国益を維持・確保するための緊急展開部隊」として活動している*2

現在の主任務は、戦争初期段階における緊急の展開と、危急の事態における在外アメリカ市民の保護・救出。
また、アメリカ合衆国大統領の親衛隊としての側面も持ち、大統領専用ヘリコプターの運用や大統領府・在外公館の警備も担当する。

海兵隊の長である「海兵隊総司令官」は統合参謀本部に籍を置き、陸軍海軍空軍の総司令官*3と同格の権限を持つ。
兵站管理は海兵隊内で独自に行うが、軍令や作戦については統合軍隷下で陸海空軍と連携する。
ただし、合衆国大統領は連邦議会の事前同意なく海兵隊を動員する権限を持っている。

その場合、大統領は事後48時間以内に下院議長と上院臨時議長へ書面で報告する義務を負う。
議会が宣戦布告を承認しなかった場合、報告後60日以内に戦闘を終了し、90日以内に撤退しなければならない。

軍政上はアメリカ海軍省の監督下にあり、将校の養成もアメリカ海軍と共通。
海軍兵学校(メリーランド州アナポリス所在)の卒業生のうち、16%程度は海兵隊の将校として登用される*4
揚陸艦など一部装備の運用も海軍に任されており、派閥力学的にも海軍寄りの傾向にある。

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「ミニ統合軍」として

前述のとおり、アメリカ海兵隊には「緊急展開部隊」「合衆国大統領の親衛隊」という役割が持たされていることから、陸海空軍の全機能が備えられた「ミニ統合軍」ともいうべき組織になっている。

(独自の戦闘艦艇こそ持っていないが)兵站のために大規模な揚陸・輸送艦艇部隊*5を備え、必要に応じて空挺部隊も投入される。
前線に投入される主戦力には主力戦車重砲も配備され、高度に機械化された機甲部隊となっている。
また、マルチロールファイターを擁する航空部隊も保有し、カウンターエア近接航空支援も独自に実施できる。

海兵隊はこうした兵力を以て、アメリカ軍が参加する主な戦いには一番最初に前線へ投入され、上陸・空挺作戦などの任務を受け持つのである。

編制

  • 海兵隊総軍
    • 第2海兵遠征軍*6
      • 第2海兵師団
      • 第2海兵航空団
      • 第2海兵兵站群
      • 第2海兵遠征旅団
      • 第22海兵遠征隊
      • 第24海兵遠征隊
      • 第26海兵遠征隊
      • 第4海兵遠征旅団
  • 太平洋海兵隊
    • 第1海兵遠征軍
      • 第1海兵師団
      • 第3海兵航空団
      • 第1海兵兵站群
      • 第1海兵遠征旅団
      • 第11海兵遠征隊
      • 第13海兵遠征隊
      • 第15海兵遠征隊
    • 第3海兵遠征軍
      • 第3海兵師団
      • 第1海兵航空団
      • 第3海兵兵站群
      • 第3海兵遠征旅団
      • 第31海兵遠征隊
  • 海兵隊予備役集団
    • 第4海兵師団
    • 第4海兵航空団
    • 第4海兵兵站群

主要装備


小火器・火砲
拳銃ベレッタM9
グロック19?
M45A1 CQPB(M45 MEU(SOC)の後継)
突撃銃/カービンM16A4
M4カービン
M27IAR(Infantry Automatic Rifle)
MK18 Mod1
マークスマンライフルSAM-R
M39 EMR
狙撃銃/対物ライフルMk11 Mod0
M110
M40
バレット?M82
散弾銃レミントン870
ベネリM1014
モスバーグ590A1
短機関銃コルト9mmSMG
機関銃M2HB
M240B
M249
擲弾発射機?M203A1/A2
Mk19?自動擲弾発射機
手榴弾M67破片手榴弾
AN-M14
Mk141 Mod0 "フラッシュバン"
AN-M18煙幕手榴弾
迫撃砲M224 60mm迫撃砲
M252 81mm迫撃砲
M327 EFSS*8(フランス製のMO-120-RT-61)
榴弾砲M198 155mm榴弾砲?
M777 155mm榴弾砲?
対戦車ミサイルM72 LAW
M136 AT-4
MK153 SMAW*9
FGM-148「ジャベリン」
BGM-71「TOW」
FGM-172「プレデター」SRAW*10
携行SAMFIM-92「スティンガー」


階級

給与等級階級同原語NATO階級コード
士官将官O-10大将(Full) GeneralOF-9
O-9中将Lieutenant GeneralOF-8
O-8少将Major GeneralOF-7
O-7准将Brigadier GeneralOF-6
佐官O-6大佐ColonelOF-5
O-5中佐Lieutenant ColonelOF-4
O-4少佐MajorOF-3
尉官O-3大尉CaptainOF-2
O-2中尉First LieutenantOF-1
O-1少尉Second Lieutenant
准士官W-5准尉1級Chief Warrant Officer 5WO-5
W-4准尉2級Chief Warrant Officer 4WO-4
W-3准尉3級Chief Warrant Officer 3WO-3
W-2准尉4級Chief Warrant Officer 2WO-2
W-1准尉5級Warrant OfficerWO-1
下士官E-9海兵隊最先任上級曹長Sergeant Major of the Marine CorpsOR-9
部隊最先任上級曹長Sergeant Major
上級曹長Master Gunnery Sergeant
E-8先任曹長First SergeantOR-8
曹長Master Sergeant
E-7一等軍曹Gunnery SergeantOR-7
E-6二等軍曹Staff SergeantOR-6
E-5三等軍曹SergeantOR-5
E-4伍長CorporalOR-4
E-3上等兵Lance CorporalOR-3
E-2一等兵Private First ClassOR-2
E-1二等兵PrivateOR-1
 

*1 このため、現在でも「すべての海兵隊員はライフルマン」というモットーがあり、将兵は最上位の「海兵隊総司令官」から基地のコックやタイピストに至るまで、必要に応じて小銃を手にして戦うことをいとわない、と言われている。
*2 一方で、本土の防衛が任務に含まれていない「外征専門部隊」であることから「殴り込み部隊」ともあだ名されている。
*3 陸軍参謀総長・海軍作戦部長及び空軍参謀総長。
*4 特に成績優秀者が選抜される傾向にあるという。
  これは、かつての大日本帝国海軍において、陸戦隊に配属される将校が出世コースから外れた者が回されやすかったことと好対照である。

*5 船舶の運用は海軍に任されている。
*6 この度、解隊が予定されている。
*7 Advanced Precision Kill Weapon System.
*8 Expeditionary Fire Support System.
*9 Shoulder-launched Multipurpose Assault Weapon.
*10 Short-Range Assault Weapon.
*11 Medium Tactical Vehicle Replacement.
*12 Logistics Vehicle System.

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