【アメリカ海兵隊】(あめりかかいへいたい)

U.S Marine Corps.

アメリカ国防総省に属するアメリカの海兵隊で、合衆国における5つの軍事組織の一つ。
2012年3月現在で、現役将兵約198,000人(この他に予備役兵数万人)を擁している。
海兵隊総司令官は統合参謀本部に籍を置き、陸軍海軍空軍の総司令官と同格の権限を持つ。
軍政や部隊管理は海兵隊内で独自に行うが、軍令や作戦については統合軍の指揮下に置かれ、陸海空軍と連携する事とされる。


アメリカ海兵隊は、独立当時、カリブ海で跋扈していた海賊を討伐するために軍艦に乗り組み、船上での白兵戦や敵船舶の拿捕を任務としていた歩兵(武装船員)を起源としている*1
その後、近代以降の戦略戦術の変遷に伴って任務が拡大され、現在では海岸部のみならず世界中全ての戦場への展開が想定されている。

兵站のために大規模な揚陸・輸送艦艇部隊*2を備え、必要に応じて空挺部隊も投入される。
歩兵部隊歩兵戦闘車装甲兵員輸送車で高度に機械化され、主力戦車重砲による濃密な支援を受ける。
さらに独自の航空部隊を保有し、戦闘機によるカウンターエア攻撃機による近接航空支援も独自に実施できる。
そしてこの強大な兵力を、アメリカ合衆国大統領は連邦議会の事前同意なしで動員する権限を持っている*3

総括すれば、アメリカ海兵隊の正面戦力は小国の空軍の全戦力に単体で匹敵するほどに強大なものであり、アメリカ合衆国が大規模な軍事行動を起こす際の「先遣隊」の役割を担っている。
その戦歴も華々しく、世界各国の海兵隊・上陸作戦部隊の中でも最も有名な存在として認知されている。

また、アメリカ海兵隊には「アメリカ合衆国大統領の親衛隊」とでもいうべき役割も持たされており、「大統領府(ホワイトハウス)・在外公館などの警備」「大統領専用ヘリコプターの運用」「アメリカ国外で紛争や大規模災害が発生した際、その地に在留している自国民の退避を支援すること」も職分とされている。


海兵隊の軍政や部隊管理は、前述のとおり内部で独自に行う部分もあるが、海軍と同じく海軍省の監督下に置かれており、海兵隊総司令官は海軍のトップである海軍作戦部長と同様、海軍長官(文官)に属する存在とされている。
将校の養成も海軍と共通で、海軍兵学校(メリーランド州アナポリスに所在)卒業生の16%までが海兵隊の将校として登用される。*4
揚陸艦など一部装備の運用も海軍に任されており、軍政上の立場も、基本的に独立してはいるものの、明らかに海軍寄りである。

関連:テキサスタワー乱射事件 フルメタル・ジャケット(映画)

編制

  • 海兵隊総軍
    • 第2海兵遠征軍
      • 第2海兵師団
      • 第2海兵航空団
      • 第2海兵兵站群
      • 第2海兵遠征旅団
      • 第22海兵遠征部隊
      • 第24海兵遠征部隊
      • 第26海兵遠征部隊
  • 太平洋海兵隊
    • 第1海兵遠征軍
      • 第1海兵師団
      • 第3海兵航空団
      • 第1海兵兵站群
      • 第11海兵隊遠征隊
      • 第13海兵隊遠征隊
      • 第15海兵隊遠征隊
    • 第3海兵遠征軍
      • 第3海兵師団
      • 第3海兵航空団
      • 第3海兵兵站群
      • 第3海兵遠征旅団
      • 第31海兵隊遠征隊
    • 海兵隊予備役集団
      • 第4海兵師団
      • 第4海兵航空団
      • 第4海兵兵站群

主要装備

階級

給与等級階級NATO階級コード
士官将官O-10大将OF-9
O-9中将OF-8
O-8少将OF-7
O-7准将OF-6
佐官O-6大佐OF-5
O-5中佐OF-4
O-4少佐OF-3
尉官O-3大尉OF-2
O-2中尉OF-1
O-1少尉
准士官W-5准尉5級WO-5
W-4准尉4級WO-4
W-3准尉3級WO-3
W-2准尉2級WO-2
W-1准尉1級WO-1
下士官E-9海兵隊最先任上級曹長OR-9
最先任上級曹長
上級曹長
E-8先任曹長OR-8
曹長
E-7一等軍曹OR-7
E-6二等軍曹OR-6
E-5三等軍曹OR-5
E-4伍長OR-4
E-3上等兵OR-3
E-2一等兵OR-2
E-1二等兵OR-1
 

*1 そうした経緯から、現代でも「全ての海兵隊員はライフルマン」という標語があり、司令官から兵站要員まで、必要とあらば小銃を手にして戦うことを厭わないと言われる。
*2 船舶の運用は海軍に任されている。
*3 ただしその場合、大統領は事後48時間以内に下院議長と上院臨時議長へ書面で報告する義務を負う。
  議会が宣戦布告を承認しなかった場合、報告後60日以内に戦闘を終了し、90日以内に撤退しなければならない。

*4 中でも、成績の優秀な者が選抜される傾向にあるという。
  これは、かつての大日本帝国海軍において、陸戦隊に配属される将校が出世コースから外れた者が回されやすかったことと好対照である。


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