【アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ】(あどみらるふろーたそびえつかばそゆーざくずねつぉふ)

Адмирал флота советского союза Кузнецо*1

ロシア海軍の誇る航空母艦
艦名は第二次世界大戦時及び戦後にソ連海軍総司令官を勤めたニコライ・ゲラシモヴィッチ・クズネツォフ提督に由来する。
通常、アドミラル・クズネツォフと略して表記されることが多い。
ソ連・ロシア海軍ではプロイェークト1143.5重航空巡洋艦「ピャチョールカ*2」と呼ばれる。
アメリカ海軍以外の国の中では最大の航空母艦である。

1984年、ニコライエフ市黒海造船所(第444造船所)にて建艦中であるところをアメリカの偵察衛星によって撮影され、その存在が明らかになる。
計画・設計段階での艦名は「ソヴィエツキー・ソユーズ(ソビエト連邦)」であったが、1983年の起工時に「リガ(ラトビアの首都)」となり、1985年の進水式には時の書記長にあやかり「レオニード・プレジネフ」と改名、プレジネフ政権が倒れゴルバチョフ政権が誕生すると1987年に「トビリシ(グルジアの首都)」とみたび改名、ソビエト崩壊直前の1990年に現在の名称となった*3
当初西側では「クレムリン」のコード名で呼ばれ、原子力空母とみられていたが、蒸気タービンを搭載した通常動力艦艇として就役した。

この艦は米国の大型空母とは異なり、14度のスキージャンプ甲板を備えており、発艦時にはスキージャンプを使用し、着陸時にワイヤーを使用するSTBAR方式で運用されている。
航空機は最大で約60機(固定翼機48機、回転翼機12機)の搭載が可能で、52機の運用(Yak-141×16機、Su-33×12機、Ka-27PL/PS×24機、Ka-31×2機、Su-25UTG×4機)ができるよう設計されている*4

搭載兵装も西側の空母とは比較にならないほど多い。
飛行甲板前部に装備された12基の大型ランチャーには艦対艦ミサイル巡航ミサイル)のSS-N-19(P-700"Granit")が収められている*5
60発のRBU-12000「ウダフ1」対潜ロケット?爆雷魚雷から艦を守るために使用することも可能である。
24基の垂直発射セルには192発の艦対空ミサイルを搭載可能で、飛来する対艦ミサイル攻撃機などを有効に迎撃できるとされている。
このように強力な武装も併せ持っているため、ロシア海軍では航空母艦ではなく重航空巡洋艦に分類されている。

なお、2番艦の「ヴァリャーグ」は、新型の「フォールム-2M」フェイズドアレイレーダーや「ポドベリョーゾヴィク」3次元レーダーを搭載し*6、格納庫の改良により艦載機の搭載機数もアップした「改アドミラル・クズネツォフ(プロイェクト1143.6型)」級として建造されていたが、ソ連崩壊により建造が中止されている*7
その後、1998年に中国へ売却され、「遼寧(リャオニン)」として2012年9月25日に就役した。
艦載機については、殲撃15(J-15)を20機程度搭載する予定である。

関連:Su-25 Yak-38

スペックデータ

排水量
(軽荷/基準/満載
43,000t/55,000t/67,000t
全長304.5m(飛行甲板)/281m(水線長)
全幅72m(飛行甲板)/38m(水線幅)
吃水線11m
推進方式蒸気タービン推進
主缶KVG-4型重油専燃缶×8基
主機TV-12-4型蒸気タービン×4基
スクリュープロペラ×4軸
出力200,000hp
最大速力29kt
乗員固有要員:1,980名(うち士官520名)
航空要員:626名
司令部要員:40名
武装P-700「グラニート(SS-N-19)」SSMVLS×12セル(ミサイル12発)
3K95「キンジャール(SA-N-9)」短SAM 8連装回転式VLS×24セル(ミサイル192発)
CADS-N-1「コールチク」CIWS×8基
AK-630 30mmガトリング砲CIWS)×6基
RBU-12000「ウダフ1」10連装対潜ロケット砲×2基(魚雷防御用)
艦載機Su-33艦上戦闘機×12〜15機
Su-25UTG艦上攻撃機×3〜5機
Ka-27PL/PS対潜/捜索・救難ヘリ・Ka-31早期警戒ヘリ×合計50機以上
レーダー「マルス・パッサート」3次元フェイズドアレイレーダー×4面1基
「フレガート-MA」3次元レーダー
ソナーオリオン 艦首装備式ソナー
プラーチナ 曳航式ソナー


同型艦

艦番号艦名主造船所起工進水就役所属備考
113アドミラル・クズネツォフ黒海造船工場
(ニコラーエフ)
1982.9.11985.12.51990.12.25黒海艦隊

北方艦隊
-ワリャーグ1985.12.61988.11.25-太平洋
(予定)
1992.3. 建造中止

1998. 中国に売却


Aotsnk.jpg

Photo :ロシア海軍HP


*1 直訳すると「ソビエト連邦海軍元帥クズネツォフ」。
*2 ロシア語で「5番目の」や「5段階評価の5」という意味を持つ。
*3 この名称はキーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦の5番艦に用意されていた物だった(建造中止)。
*4 当初は、Su-33×18機、MiG-29K×18機、Yak-44E?×4機、Ka-27×12機の運用が想定されていたが、MiG-29K及びYak-44Eは財政難で実現しなかった。
*5 ランチャーは斜めに設置されており、飛行甲板を支える形となっている。但し潜水艦の物を流用したため、発射時にはVLSに注水する必要があり、実用性には疑問符が付く。
*6 このため、アイランドの形状が変更され、クズネツォフより若干小型化している。
*7 この時、兵装や電子装備は未搭載だったが、船体および機関は完成していた。

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