*&ruby(あどばーすよー){【アドバースヨー】}; [#h78051ff]
adverse yaw ~
[[固定翼機]]で[[エルロンロール]]を試みた際、それとは逆の[[ヨー]]方向へ機首が振れてしまう現象。~

[[補助翼]]部分の翼弦が長く、かつ[[迎え角]]が大きい場合に発生しやすい。~
上記の状態で[[補助翼]]を動かした場合、下げ方向の[[補助翼]]は速度ベクトルに対して垂直に近くなり[[抗力]]が大きくなる一方、上げ方向の[[補助翼]]は[[主翼]]の陰に隠れて利かなくなる。結果、通常ならば[[補助翼]]を上げた方へバンクして曲がるはずが、逆に下げた方へ曲がってしまう。~
一般的な操作とは逆方向に曲がってしまうため、機体は不安定な横滑り状態となり、また[[パイロット]]の混乱を招き、ひいては事故の原因ともなりうる。~

通常の機種ではさほど問題にならないが、[[F-4]]など前述の条件に合致しやすい機種では深刻な問題となる。~
[[F-4]]の[[主翼]]は低速での離着艦を実現すべく大型の[[クリップトデルタ]]となっているが、折り畳み機構の都合から[[補助翼]]や[[スポイラー]]が内側に配されており、この部分の翼弦が長くなっている。このため高[[迎え角]]時には[[ロール]]制御の効果が小さく、[[動翼]]による[[抗力]]の偏りが無視できなくなってくる。~
[[ロール]]を助けるために[[スポイラー]]が存在するが、高[[迎え角]]時に[[スポイラー]]を開くとそちら側の[[抗力]]が通常とは逆に小さくなるため、左右の[[抗力]]差がかえって大きくなり、アドバースヨーを更に強くしてしまうおそれもある。~

また人力飛行機や[[滑空機]]など、[[推力]]が小さく(あるいは存在せず)、[[翼幅荷重]]を抑えるために全幅を長く取っている機体でも、アドバースヨーは深刻となる。~
機体の中心から離れているぶん、[[補助翼]]の[[抗力]]によるモーメントが大きくなるためである。~

これらの機体を操縦する際には、[[方向舵]]を併用してアドバースヨーを相殺したり、時には逆にアドバースヨーを積極利用するなど、影響を念頭に置くことが必要である。~
近年の機種では[[ベントラルフィン]]などによる[[ヨー]]の抑制や、[[フライバイワイヤー]]などによる自動制御で対処する例が多い。~

関連:[[ラダーロール]]

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