【アドバースヨー】(あどばーすよー)

adverse yaw
固定翼機エルロンロールを試みた際、それとは逆のヨー方向へ機首が振れてしまう現象。

補助翼部分の翼弦が長く、かつ迎え角が大きい場合に発生しやすい。
上記の状態で補助翼を動かした場合、下げ方向の補助翼は速度ベクトルに対して垂直に近くなり抗力が大きくなる一方、上げ方向の補助翼主翼の陰に隠れて利かなくなる。結果、通常ならば補助翼を上げた方へバンクして曲がるはずが、逆に下げた方へ曲がってしまう。
一般的な操作とは逆方向に曲がってしまうため、機体は不安定な横滑り状態となり、またパイロットの混乱を招き、ひいては事故の原因ともなりうる。

通常の機種ではさほど問題にならないが、F-4など前述の条件に合致しやすい機種では深刻な問題となる。
F-4主翼は低速での離着艦を実現すべく大型のクリップトデルタとなっているが、折り畳み機構の都合から補助翼スポイラーが内側に配されており、この部分の翼弦が長くなっている。このため高迎え角時にはロール制御の効果が小さく、動翼による抗力の偏りが無視できなくなってくる。
ロールを助けるためにスポイラーが存在するが、高迎え角時にスポイラーを開くとそちら側の抗力が通常とは逆に小さくなるため、左右の抗力差がかえって大きくなり、アドバースヨーを更に強くしてしまうおそれもある。

また人力飛行機や滑空機など、推力が小さく(あるいは存在せず)、翼幅荷重を抑えるために全幅を長く取っている機体でも、アドバースヨーは深刻となる。
機体の中心から離れているぶん、補助翼抗力によるモーメントが大きくなるためである。

これらの機体を操縦する際には、方向舵を併用してアドバースヨーを相殺したり、時には逆にアドバースヨーを積極利用するなど、影響を念頭に置くことが必要である。
近年の機種ではベントラルフィンなどによるヨーの抑制や、フライバイワイヤーなどによる自動制御で対処する例が多い。

関連:ラダーロール


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