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*&ruby(あいおわ){【アイオワ】}; [#h4eba05a]
USS Iowa(BB-61).~
1940年代に就役、[[第二次世界大戦]]で活躍した[[アメリカ海軍>アメリカ軍]]の[[超ド級]][[戦艦]]。~
同型艦に &ruby(ニュージャージー){New Jersy};(BB-62)、&ruby(ミズーリ){Missouri};(BB-63)、&ruby(ウィスコンシン){Wisconsin};(BB-64)、&ruby(イリノイ){Illinois};(BB-65)、&ruby(ケンタッキー){Kentucky};(BB-66)の5隻がある。~
**就役〜第二次大戦終結まで [#f360992d]
本艦は[[ワシントン海軍軍縮条約]]の失効と[[ロンドン海軍軍縮条約]]の有名無実化により、1930年代後半以後に列強諸国がこぞって建造した「ポスト・[[ネイバル・ホリデー]]」型の新世代戦艦((この時期、日本では「[[大和]]」級、英国では「King George �后弋蕁△泙拭�当のアメリカでも「North Carolina」級、「South Dakota」級が建造されていた。))として1939年度予算で計画され、1943年にネームシップの「Iowa」と「New Jersy」が、翌44年には「Missouri」「Wisconsin」が相次いで就役、日本海軍（[[連合艦隊]]）と対峙する太平洋戦線に投入された。~
~
本艦の設計・建造に当たっては、先に就役していた「South Dakota」級が参考とされたが、当時の[[仮想敵国]]である日本が建造を進めていた新型戦艦（「[[大和]]」級のこと）に対抗すべく、当時、アメリカの持てる建艦技術の粋が集められることになった。~
[[主砲>艦載砲]]こそ、パナマ運河通行の制約から16インチ砲とされた((それ以上の口径の砲を積むと、艦の幅が運河の幅より広くなって通れなくなってしまう。))が、砲身が伸ばされたことで弾丸の初速が高められ、[[レーダー]]連動の[[射撃指揮装置>火器管制装置]]ともあいまって、16インチ砲搭載と目された日本の新型戦艦((連合国が「大和」の真のスペックを知るのは終戦後のことであった。))に十分対抗しうる火力を発揮できるものと期待された。((ただし船体が細長いため、命中精度は他の艦に比べてやや劣っていたという。))~
[[主砲>艦載砲]]こそ、パナマ運河通行の制約から16インチ砲とされた((それ以上の口径の砲を積むと、艦の幅が運河の幅より広くなって通れなくなってしまう。))が、砲身が伸ばされたことで弾丸の初速が高められ、[[レーダー]]連動の[[射撃指揮装置>火器管制装置]]ともあいまって、（「[[長門]]」と同じ）16インチ砲搭載と目された日本の新型戦艦((連合国が「大和」の真のスペックを知るのは終戦後のことであった。))に十分対抗しうる火力を発揮できるものと期待された。((ただし船体が細長いため、命中精度は他の艦に比べてやや劣っていたという。))~
また、機関も高温高圧のボイラーによって20万馬力以上のパワーを発揮でき、細長くなった船体もあって30ノット以上の高速力を発揮できるようになり、[[空母>航空母艦]][[機動部隊]]の護衛にも活用できるようになっていた。~
>これは、日本の戦艦が（元[[巡洋戦艦]]であった「[[金剛]]」級を除いて）30ノット以下の速力しか発揮できず、空母の護衛に使えなかったのと好対照であった。
このように、アメリカ最強の戦闘力を持って送り出された本艦であったが、就役した頃には既に海上戦闘の主な思想が[[航空主兵主義]]に転換されていたため、戦艦同士で砲火を交える機会はついぞなく、上陸部隊への火力支援や空母の護衛に主に従事していた。~
また、沖縄占領後の対日終戦直前には日本本土のいくつかの都市に対して艦砲射撃も行っており、1945年9月に東京湾で行われた降伏調印式では「Missouri」が式場となった。~
**第二次世界大戦後 [#zcad5c24]
その後、海軍の攻撃力の中核が空母とその[[艦載機]]、[[対艦ミサイル]]、[[潜水艦]]に移行、また、[[核兵器]]と[[弾道ミサイル]]の登場（[[第7の軍事革命>軍事革命]]）で[[艦隊決戦]]という戦術思想が過去のものになったこともあり、戦艦は兵器としての居場所を失ってしまった。~
その後、海軍の攻撃力の中核が空母とその[[艦載機]]、[[対艦ミサイル]]、[[潜水艦]]に移行、また、[[核兵器]]と[[弾道ミサイル]]の登場（[[第7の軍事革命>軍事革命]]）で[[艦隊決戦]]という戦術思想が過去のものになったこともあり、戦艦は兵器としての存在価値を急速に失ってしまった。~
そのため、大戦終結時に未完成だった「Illinois」「Kentucky」は、戦後の軍縮に伴って建造が中止されてそのまま解体。残った艦も大部分の時間を[[モスボール]]保存や展示艦として過ごしてきた。~
>この間、[[朝鮮戦争]]ではモスボールされていた「Iowa」「New Jersy」「Wisconsin」が現役復帰、現役にとどまっていた「Missouri」((この戦争で、国連艦隊の旗艦を務めていた。))と共に[[国連軍]]艦隊に参加した。((その後、1955〜58年にかけて4隻ともいったん退役している。))~
また、ベトナム戦争が行われていた1960年代後半には「New Jersy」が一時的に現役復帰してインドシナに派遣され、敵地に艦砲射撃を行っている。
**1980年代の現役復帰〜退役まで [#o4e2c219]
**晩年〜「世界最後の戦艦」として〜 [#b0ef1f5d]
そんな本艦に最後の転機が訪れたのが、米ソ[[冷戦]]最後のピークでもあった1980年代である。~
この時期、「強いアメリカ」を政策目標に掲げたレーガン政権下で「600隻艦隊構想」と呼ばれる海軍力の増強が打ち出され、この中で、モスボール保管されていた4隻の戦艦にもスポットライトが当てられた。((これには当時、ソ連海軍が（事実上巡洋戦艦である）「[[キーロフ]]」級大型ミサイル巡洋艦を就役させていたことへの対抗手段という側面もあった。))~
ここで本艦は、[[BGM-109]]「トマホーク」[[巡航ミサイル]]の発射母艦としての機能を実装され、陸上目標に対する攻撃力をより増強する((元々、「戦艦1隻の火力は7個[[師団]]の攻撃力に相当する」とも言われていたように、戦艦の巨砲が陸上目標へ投射できる火力はきわめて大きかった。))改装が施されて現役に復帰した。~
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しかし、（1980年代の水上戦闘艦艇としては）防空・対潜能力が劣っていたため「運用するには必ず護衛艦艇を随伴させねばならず、コストがかかる」という欠点が指摘され、また、1980年代末期にはソ連の崩壊で冷戦も終結して海軍力拡張の必要性が薄まったこともあり、1990年に「Iowa」、1991年の[[湾岸戦争]]中に「New Jersy」が相次いで退役。~
そして、残った2隻も[[湾岸戦争]]への参加を最後に相次いで現役を退き、1992年3月に最後の1隻「Missouri」が退役。~
しかし、（1980年代の水上戦闘艦艇としては）防空・対潜能力が劣っていたため「運用するには必ず護衛艦艇を随伴させねばならず、コストがかかる」という欠点が指摘され、また、1980年代末期にはソ連の崩壊で冷戦も終結して海軍力拡張の必要性が薄まったこともあって、本艦は1990年に退役することとなった。~
残った姉妹艦3隻も、1991年の[[湾岸戦争]]を境に相次いで現役を退き、湾岸戦争終結から約1年後の1992年3月、（「New Jersy」と「Wisconsin」の退役で）「世界最後の現役戦艦」となった最後の1隻「Missouri」が退役。~
これにより、世界の海軍から（本来の意味での）「戦艦」という艦種((「戦艦」の項にもあるように、発言者が軍事知識に乏しいと「武装した軍用船舶」全てを「戦艦」と呼んでしまうこともある。))は姿を消すことになった。~
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**スペックデータ [#b7bf31a6]
| 全長| 270.43m&br;270.7m(New Jersyのみ)|
| 全幅| 32.96m|
| [[排水量]]| 45,280t（[[基準>基準排水量]]）&br;57,256t（[[満載>満載排水量]]）|
| 吃水| 10.60m|
| 主機| バブコック＆ウィルコックス式重油専焼ボイラー8基、&br;GE式またはウェスチングハウス式[[蒸気ギヤードタービン>蒸気タービン]]4基4軸（出力212,000馬力）|
| 最大速度| 約33.0[[ノット]]|
| 航続距離| 16,600海里（15ノット時）|
| 乗員| 艦長以下1,921名|
| 兵装| 50口径40.6cm3連装砲3基&br;38口径12.7cm連装両用砲10基&br;ボフォース 40mm4連装機銃15基&br;エリコンFF 20mm機銃60基&br;（改修後）&br;[[トマホーク>BGM-109]]4連装発射機8基&br;[[ハープーン]]4連装発射筒4基&br;[[ファランクス]]20mm[[CIWS]]4基|
| [[艦載機]]| [[水上偵察機>水上機]]3機、[[カタパルト]]2基&br;（改修後は[[SH-60]]「シーホーク」[[対潜ヘリコプター]]数機）|
| 装甲| 舷側307mm+22mm&br;甲板121〜127mm＋22mm&br;主砲防盾432mm＋64mm&br;司令塔440mm|
**同型艦 [#p7fe9955]
-1番艦 BB-61 &ruby(アイオワ){Iowa};~
1943年就役、1949年退役(モスボール保管)~
1951年再就役(1回目)、1958年退役(再度モスボール)~
1984年再就役(2回目)、1990年退役(記念艦として保存予定)
-2番艦 BB-62 &ruby(ニュージャージー){New Jersy};~
1943年就役、1948年退役(モスボール保管)~
1950年再就役(1回目)、1957年退役(再度モスボール)~
1968年再就役(2回目)、1969年退役(再度モスボール)~
1982年再就役(3回目)、1991年退役(記念艦として保存)
-3番艦 BB-63 &ruby(ミズーリ){Missouri};~
1944年就役、1955年退役(記念艦として保存)~
1986年再就役、1992年退役(記念艦として保存)
-4番艦 BB-64 &ruby(ウィスコンシン){Wisconsin};~
1944年就役、1948年退役(モスボール保管)~
1951年再就役(1回目)、1958年退役(再度モスボール)~
1988年再就役(2回目)、1991年退役(記念艦として保存)
-5番艦 BB-65 &ruby(イリノイ){Illinois};~
1945年起工、同年未完成のまま建造中止。（1958年解体）
-6番艦 BB-66 &ruby(ケンタッキー){Kentucky};~
1942年起工、同年未完成のまま建造休止。~
1944年建造再開、1947年再度建造休止。~
1948年建造再開、1950年未完成のまま最終的に建造中止。(1958年解体)
