【そうりゅう】(そうりゅう)

JMSDF SS Sōryū class
海上自衛隊が2004年度防衛予算で発注・建造した通常動力攻撃潜水艦
海上自衛隊初のAIP*1潜水艦である。*2

本艦の最大の特徴は、動力に新世代の潜水艦用パワーユニットであるスターリングエンジンを採用したことにある。
このエンジンは、2000年から練習潜水艦「あさしお(TSS-3601)」(元「はるしお」型潜水艦)に搭載され、実用試験を行っていたスウェーデン・コックムス社製の4V-275R MkIIエンジンをベースに改良された4V-275R MkIII(川崎重工業でライセンス生産)4基が搭載され、数日間が限度だった低速時の水中持続力が二週間以上に延長されている。*3

船体は、おやしお型と同じ葉巻型だが、艦尾の舵配置が従来の十字型から、舵損傷の危険の少なく水中機動性が高いX字型に改められ、水中での機動性を高める工夫がなされている。
その他にも、吸音タイルの追加やセイル(艦橋)前面基部の流線形化、電動機の交流電源化、非貫通型潜望鏡*4(従来型と併用)・ZYQ-31 C2T*5の装備、艦内LANによるネットワーク化などの新機軸が採用されている。

さらに、5番艦からは巡航速度の改善と共に高速航行可能な時間を増大させるために、リチウムイオン蓄電池が採用される予定だったが、財政上の理由により搭載するめどが立っていない。

ネーミングについて

本艦級を特徴付けるもうひとつのポイントは、従来の海自における潜水艦の命名基準とは異なるネーミングである。

海上自衛隊において、艦船の名前は「海上自衛隊の使用する船舶の名称を選出する標準」という内規で艦種ごとに定められている。
この中で潜水艦については
「海象・水中動物の名。または種別に番号を付したもの」
から命名することとなっており、それにより、従来は慣例的に「潮」のつく名前がつけられていた*6が、本艦の進水に合わせて命名基準が改正され「瑞祥動物*7の名」という項目が追加されている。

ちなみにこの命名法は、旧軍においては航空母艦(他艦種からの改造・転用ではない新造艦)の命名基準となっていたものと同じであり、同時期に進水したヘリコプター護衛艦ひゅうが」(こちらは旧軍では戦艦につけられていた名前が選定されている)との方向性の類似が見られる。

スペックデータ

排水量
基準/水中)
2,900t/4,200t*8
全長84m
全幅9.1m
喫水8.5m
船型葉巻型
主機関ディーゼルスターリングエレクトリック方式
12V25/25SBディーゼル機関×2基
川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関×4基
主電動機(交流同期電動機)×1基 1軸推進
出力
(水上/水中)
3,900Ps/8,000Ps
最高速力
(水上/水中)
13kt/20kt
定員65名
主要兵装HU-606 533mm魚雷発射管×6門
89式魚雷?を装備、ハープーン対艦ミサイル発射兼用)
C4IシステムZYQ-31 潜水艦発射制御装置
レーダーZPS-6
ソナーZQQ-7
ZQQ-7B(うんりゅう)

同型艦

艦番号艦名主造船所起工進水就役所属
SS-501そうりゅう
(JMSDF Sōryū)
三菱重工業
神戸造船所
2005.3.312007.12.52009.3.30第1潜水隊群
第5潜水隊
SS-502うんりゅう
(JMSDF Unryū)
川崎造船
神戸工場
2006.3.312008.10.152010.3.25第1潜水隊群
第5潜水隊
SS-503はくりゅう
(JMSDF Hakuryū)
三菱重工業
神戸造船所
2007.2.62009.10.162011.3.14第1潜水隊群
第5潜水隊
SS-504けんりゅう
(JMSDF Kenryū)
川崎造船
神戸工場
2008.3.312010.10.152012.3.16第1潜水隊群
第3潜水隊
SS-505ずいりゅう
(JMSDF Zuiryū)
三菱重工業
神戸造船所
2009.3.162011.10.202013.3.5第2潜水隊群
第4潜水隊
SS-506平成22年度計画8121号艦
(名称未定)
川崎造船
神戸工場
2011.1.21-2015.3.予定
SS-507平成23年度計画8122号艦
(名称未定)
三菱重工業
神戸造船所
2012.3.予定-2016.3.予定
SS-508平成24年度計画8123号艦
(名称未定)
-2013.3.予定-2017.3.予定
SS-509平成25年度計画8124号艦
(名称未定)
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*1 Air-Independent Propulsion:非大気依存推進
*2 AIPを搭載した潜水艦は、本級の他にゴトランド級(スウェーデン)、212A型(ドイツ)などがある。
*3 ただし、このエンジンは低速航行時に使われると見られており、高速航行時には従来と同じように蓄電池の放電により推進されると見られる。
*4 イギリス、タレスUK社製非貫通式潜望鏡CMO10を三菱電機でライセンス生産。
*5 Command and Control Terminal:指揮管制支援ターミナル
*6 大型の艦には「海象・水中動物の名」、小型艦には「種別に番号」となっていたが「水中動物の名」及び「種別に番号」で命名された例はこれまでにない。
*7 縁起の良い動物の事。「瑞獣」とも呼ばれる。
*8 通常動力潜水艦では世界最大である。

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