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*【しきしま】 [#u396eafd]
*&ruby(しきしま){【しきしま】}; [#u396eafd]
JCG Shikishima(PLH-31).~
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[[海上保安庁]]が保有・運用する[[大型巡視船>カッター(船)]]。~
準同型船に「[[あきつしま(PLH-32)>秋津島]]」「れいめい(PLH-33)」「あかつき(PLH-34)」「あさづき(PLH-35)」(後述)がある。~
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公称では「[[ヘリコプター]]2機搭載型巡視船」と呼ばれている((「れいめい」以降の船ではヘリコプター1機の搭載に減らされている。))。~
海保の巡視船としては最大の船であり、世界各国の国境警備・[[沿岸警備隊]]が保有・運用する警備・救難用船舶としても最大規模((2024年現在、世界最大の巡視船は中国海警局の「海警2901」「海警3901」である。))の船である。~

[[海上保安庁]]・[[ヘリコプター]]2機搭載型((海保が「公称」船型として定めている呼び名で、実際にはほとんど使われない))巡視船「しきしま」。(JCG Shikishima PLH-31)~
(沿岸警備隊など)世界各国の海洋警察機構が保有・運用する警備・救難用船舶としては最大の船でもある。~
**建造の経緯 [#fcd00ac4]
本船は1990年代初頭、日本の原子力発電所から出た[[使用済みの核燃料物質>放射性物質]]を、保管されていたヨーロッパの再処理施設から日本へ運ぶ輸送船を護衛するための長距離警備用[[巡視船>カッター(船)]]として設計・建造され、1992年に就役した。~
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本船は1990年代初頭、日本の原子力発電所から出る使用済み[[核燃料物質>ウラニウム]]をヨーロッパにある再処理施設へ運ぶ輸送船を護衛((当初は海上自衛隊の護衛艦をあてることも検討されていた))するための警備用船舶として設計・建造され、1992年に就役した。~
当初、この輸送船警備任務を[[海自>海上自衛隊]]、[[海保>海上保安庁]]のどちらが行うべきかが議論になっていた。~
その中で「海保が行う」とした場合、「(従来の)[[巡視船>カッター(船)]]では攻撃力が不足する((法制上、海上保安庁の巡視船に搭載が許される武装は限られており、攻撃力が疑問視されていた。))」という批判があり、海自の[[護衛艦]]をあてることも検討されていた。~
しかし、[[アメリカ軍]]から[[偵察衛星>軍事衛星]]による航海の安全を守るための情報支援が得られるようになったこと、「[[巡視船>カッター(船)]]では攻撃力不足」という批判があったものの、([[沿岸警備隊]]の)[[巡視船>カッター(船)]]で対応出来ない攻撃を仕掛けてくる敵は現実的に考えてありえない((そういう敵がもし存在するとすれば、国家の正規軍レベルの装備・錬度を持っていることとなり、[[沿岸警備隊]]ではなく[[軍隊]]([[海軍]])の領分となるであろう。))と考えられたこと、また、当時の政府も[[自衛隊]]を投入する考えがなかったこと((当時は[[自衛隊]]が海外で作戦行動を行うことは考えられていなかった。))もあり、予定通り「[[海上保安庁]]の[[巡視船>カッター(船)]]」として本船が建造される事となった。~
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設計に当たっては、([[核兵器]]にも転用可能な[[プルトニウム]]を含む)核物質を積んだ輸送船を[[テロリスト]]や武装海賊から守り切ることが要求され、日本〜ヨーロッパ間を無寄港で走破できる航続性能(20000海里以上)と、敵が使用すると考えられたヘリコプターや武装高速艇などによる襲撃に充分対抗し得る戦闘力を備えることとなった。~
このため、船体構造は海保の巡視船としては唯一の軍艦式構造とされ、多数の水密区画に区切られて[[浸水]]を抑える工夫がなされており、また、携帯式の[[対戦車ミサイル]]や[[無反動砲]]・ロケット弾にも、数発程度なら耐えられると考えられている。~
そして上部構造物には、当時[[海上自衛隊]]で整備の進んでいた「はつゆき」「あさぎり」型[[護衛艦]]と同型の対水上[[レーダー]]や35mm連装[[機関砲>機関銃]]、20mm[[CIWS]]「[[ファランクス]]」など、軍艦に近い非常に強力な兵装が搭載された。~
加えて、プルトニウム運搬船の護衛につく際には、[[突撃銃]]などで重武装している特別警備隊を乗船させて不測の事態に備えている(警護対象のプルトニウム運搬船にも、重武装の海上保安官を警乗させる)。~
なお、 本船の建造費はおよそ350億円であったことが、2009年6月18日の国会質疑により明らかになっている((この費用は、表向きは海保が拠出した形になっているが、実際には原子力行政を担う科学技術庁などからも(予算枠の調整により)一部拠出されていたという。&br;  なお、「あきつしま」建造の際には(発注の名目が本船とは違うため)海保が全額を負担したという。))。~

**設計の特徴 [#n270b7c8]
設計に当たっては、([[核兵器]]にも転用可能な[[プルトニウム]]を含む)核物質を積んだ輸送船を[[テロリスト]]や[[武装海賊>海賊]]から守り切ることが要求され、日本〜オーストラリア大陸〜ヨーロッパ間を無給油で走破できる[[航続性能>航続距離]](20,000[[海里]]以上)と、敵が使用すると考えられた[[ヘリコプター]]や武装高速艇などによる襲撃に充分対抗し得る戦闘力を備えることとなった。~
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このため、船体構造は海保の巡視船としては唯一の軍艦式構造とされ、多数の水密区画に区切られて[[浸水]]を抑える工夫がなされており、携帯式の[[対戦車ミサイル]]や[[無反動砲]]・[[ロケット弾]]にも、数発程度なら耐えられると考えられている。~
また、船橋周りの防弾にはかなり留意されており、窓の内側にはポリカーボネート製の防弾ガラスを備え、外壁にも防弾板用の金具が取り付けられている。~
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そして上部構造物には、当時[[海上自衛隊]]で整備の進んでいた「[[はつゆき]]」「[[あさぎり]]」型[[護衛艦]]と同型の「[[OPS-14]]」二次元対空[[レーダー]]や((「あきつしま」以後の船では、[[プルトニウム]]輸送が考慮されなくなったため搭載されていない。))[[90口径35mm連装機関砲>L-90]]、[[RFS>火器管制装置]]操作式の[[「JM61-RFS」20mm多銃身機銃>M61]]など、軍艦に近い非常に強力な兵装が搭載された((ただし、海保は[[榴弾]]や[[VT信管>近接信管]]を保有・運用していないため、仮に本船が全力射撃を行ったとしても、発揮できる火力には限度がある。))。~

**機密保持 [#s6fda6ae]
本船は任務上の見地から、幾重にも及ぶ厳重な機密保持措置がなされており、(海保の保有する他の巡視船艇とは違い)詳細な情報はほとんど公開されていない。~
本来任務である「核物質輸送船の護衛」につく時には、詳細な航路や航海日程は一切機密とされ、また、船内は一般には一切非公開となっている(万が一、敵に船内へ乗り込まれ奪取されることを防ぐため)。~
これに加え、本船に乗り組む船長以下の乗員は、氏名を含む一切の情報が海保の職員名簿に掲載されておらず、敵対勢力の[[スパイ]]が乗員に接触してきて内部情報を入手されることを防ぐ措置も取られている。~
本来任務である「プルトニウム輸送船の護衛」につく時には、詳細な航路や航海日程は一切機密とされ、また、船内は一般には一切非公開となっている(万が一、敵に[[船内へ乗り込まれ奪取されること>ハイジャック]]を防ぐため)。~
これに加えて、本船に乗り組む乗員は、(船長などごく少数の幹部乗員を除いて)氏名を含む一切の情報が海保の職員名簿に掲載されず、人事異動のリストにも載らない((これは、敵対勢力の[[スパイ]]が[[乗員に接触してきて内部情報を入手すること>ヒューミント]]を防ぐための措置である。))。~
~
本船は第3管区横浜海上保安部に属し、横浜港を母港として活動している。~
現在ではその高い戦闘力を活かし、核物質運搬船の護衛任務以外にも尖閣諸島周辺海域の警備業務に当たっている他、シンガポールやインドネシアなどと合同での海賊対策訓練にも参加している。~
また、就役当初は総トン数((商船の大きさを測る基準の一つであるが、[[満載排水量]]とは異なる概念である。))と全長以外の性能諸元は一切発表されていなかった(現在は規制が緩和され、後述の通りこれらの数値の一部が公表されている)。~

**就役後の活躍 [#yc34d4be]
1992年の就役後、本船は第三管区横浜海上保安部に配属され、横浜港が母港と定められた((なお、書類上の母港は東京港となっている(これは海上保安庁の船舶すべてに共通)。))。~
~
【巡視船「しきしま」スペックデータ】~
[[排水量]]:7,175トン~
全長:150m~
全幅:16.5m~
喫水:9.0m~
機関:[[ディーゼルエンジン]]4基×2軸~
最大速力:25ノット以上~
兵装:[[L-90]]・35mm連装機関砲2基4門~
   [[20mm多銃身機関銃>ファランクス]]([[CIWS]])2基2門~
搭載機:AS332「[[シュペルピューマ]]」ヘリコプター2機
就役後間もない1992年11月、本船は実際に[[プルトニウム]]輸送船の護衛任務に従事した。~
この時、輸送船がフランスで[[プルトニウム]]を受領した直後に環境保護団体「グリーンピース」の船舶から「抗議」と称した体当たり攻撃を浴びるも、損傷は軽微で任務遂行に支障は無く、無事日本へ帰還した。~
>この時の警備は、[[アメリカ海軍]]の[[SEALs]]から訓練を受けた[[海上保安官]]が本船及び輸送船に乗り組んで行っていたが、これ以後は輸送の方針が変わったため、本船が[[核物質>放射性物質]]輸送船の護衛任務につくことはなくなった。

関連:[[敷島(戦艦)>敷島]]
現在の本船は、就役当初に想定された任務に就くことこそなくなったものの、その(国境警備・[[沿岸警備隊]]の警備用船舶としては)高い戦闘力と長い[[航続距離]]を活かし、尖閣諸島周辺など、他国との利害衝突が起きやすい海域を定期的に巡回してプレゼンスを示している。~
また、シンガポールやインドネシアなど、東南アジア諸国の[[海軍]]・[[沿岸警備隊]]と合同で行われる[[海賊]]対策訓練にもしばしば参加している。~
~
2018年、本船は第十管区鹿児島海上保安部に配属替えとなり、鹿児島港が母港となった。~
2024年、老朽化のため解役となることが発表された。

#ref(http://www4.plala.or.jp/klesa108/diary/20100724/shikishima.jpg,512x384);~

**重武装警備巡視船の増強 [#g809129c]
本船は(前述した計画上の特殊事情から)竣工後、20年近くにわたって同型船を持っていなかった。~
しかし、2000年代に入って、日本列島周辺海域における[[海賊]]行為や海上テロ活動への対処、[[船舶検査>拿捕]]を海保が一義的に受け持つこととなったため、本船1隻のみではこれに充分に対応できない(([[艦艇]]の常として、船体や機関・兵装などの整備・補修、交代乗員の訓練などで即応できない状態になることがあり得る。))とされ、(本船と同様に)重武装かつ長距離の警備行動に対応できる巡視船が新たに必要とされた。~
~
当初は本船と同型の船を調達することが考えられたが、本船の竣工から20年近く経過しているため、本船の設計を参考としつつ能力を強化した「準同型」となる巡視船が建造されることとなった。~
このうち、2010(平成22)年度予算で1隻の建造が認められ、2012年7月に進水。「[[あきつしま(PLH-32)>秋津島]]」と命名された。~
「あきつしま」は2013年11月28日に竣工し、横浜海上保安部の所属となった。~
~
この他、「あきつしま」の小改正型((「しきしま」「あきつしま」と比べて居住性の向上や搭載するヘリコプターを1機に減らすなどの改良が施されている。))となる「れいめい」型3隻が建造され、2020〜2021年にかけて就役した。~
~
なお、本船の老朽化に伴う代船として「れいめい」型1隻が追加建造され、本船と同じ「しきしま」の船名と番号が与えられた。~

**スペックデータ [#qbe81f62]
|艦名|CENTER:''しきしま''|CENTER:''あきつしま''|
|船型|>|CENTER:長船首楼型|
|総トン数|>|CENTER:7,175t|
|[[排水量]]&br;([[基準>基準排水量]]/[[満載>満載排水量]])|>|CENTER:6,500t/9,350t|
|全長|>|CENTER:150m|
|全幅|>|CENTER:16.5m|
|[[喫水]]|>|CENTER:7m|
|深さ|>|CENTER:9m|
|推進方式|>|CENTER:CODAD方式|
|[[機関>エンジン]]|>|CENTER:IHI-SEMT 16PC2.5 V400 V型16気筒[[ディーゼル>ディーゼルエンジン]]×4基(出力20,800hp)|
|推進器|>|CENTER:可変ピッチ・プロペラ(ハイスキュードタイプ)×2軸&br;バウスラスター×2基&br;フィンスタビライザー×2組|
|最大速力|>|CENTER:25[[ノット]]|
|[[航続距離]]|>|CENTER:20,000[[海里]]/18ノット巡航時|
|兵装|[[GDM-A 35mm連装機関砲>L-90]]×2基4門|ボフォースMk.3 70口径40mm単装機関砲×2基2門|
|~|>|CENTER:[[JM61-RFS 20mm多銃身機関銃>M61]]×2基2門|
|搭載機|>|CENTER:[[AS332L1「シュペルピューマ」/EC225LP>シュペルピューマ]]×各2機(PLH-33〜35は1機)|
|搭載艇|CENTER:各2隻&br;全天候型救命艇、警備艇((右舷側(しきしま3号(PLH-31-M3))はプロペラ推進艇、左舷側(しきしま4号(PLH-31-M4))は浅海域での使用を考慮したウォータージェット推進艇となっている。))|CENTER:6隻(両舷各1隻ずつ)&br;7メートル型高速警備救難艇&br;全天候型救命艇&br;高速型警備艇|
|[[GFCS>火器管制装置]]|CENTER:RFS射撃指揮装置(20mm機銃用)|CENTER:40mm機関砲用FCS|
|[[レーダー]]|[[OPS-14]] 対空捜索用×1基&br;JMA-8303 水上捜索用×1基&br;JMA-3000 ヘリコプター誘導用×1基&br;JMS-1596 航海用×1基|JMA-8303 水上捜索用×1基&br;JMA-3000 ヘリコプター誘導用×1基&br;JMS-1596 航海用×1基|
~
|>|CENTER:''れいめい型''|
|船型|長船首楼型|
|総トン数|約7,300t|
|全長|150m|
|最大幅|17m|
|深さ|9m|
|推進方式|CODAD方式|
|[[機関>エンジン]]|IHI-SEMT 16PC2.5 V400 V型16気筒[[ディーゼル>ディーゼルエンジン]]×4基(出力36,000hp)|
|推進器|可変ピッチスクリュー(ハイスキュードタイプ)×2軸|
|最大速力|25[[ノット]]|
|[[航続距離]]|20,000[[海里]]/18ノット巡航時|
|兵装|ボフォースMk.4 70口径40mm単装機関砲×2基2門&br;[[JM61-RFS 20mm多銃身機関銃>M61]]×2基2門|
|搭載機|[[EC225LP>シュペルピューマ]](定数1機、ヘリコプター格納庫には最大2機搭載可能)|
|搭載艇|6隻(両舷各1隻ずつ)&br;7メートル型高速警備救難艇、全天候型救命艇、高速型警備艇|
|[[GFCS>火器管制装置]]|40mm機関砲用FCS|
|[[レーダー]]|JMA-8303 水上捜索用×1基&br;JMA-3000 ヘリコプター誘導用×1基&br;JMS-1596 航海用×1基|
|その他装備|遠隔放水銃、停船命令等表示装置、遠隔監視採証装置|

**(準)同型船 [#ic2f1796]
|CENTER:艦番号|CENTER:船名|CENTER:主造船所|CENTER:起工|CENTER:進水|CENTER:就役|CENTER:所属|
|PLH-31|しきしま|CENTER:[[IHI 東京工場>IHI]]|1990.4.28|1991.6.27|1992.4.27|CENTER:横浜(第三管区)&br;↓&br;鹿児島(第十管区)|
|PLH-32|[[あきつしま>秋津島]]|CENTER:[[IHIMU 横浜工場>IHI]]&br;↓&br;[[JMU 磯子工場>IHI]]|2011.5.10|2012.7.4|2013.11.28|CENTER:横浜(第三管区)|
|>|>|>|>|>|>|CENTER:''れいめい型''|
|PLH-33|れいめい|CENTER:[[三菱重工業&br;長崎造船所>三菱重工業]]|2017.6.7|2019.3.8|2020.2.19|CENTER:鹿児島(第十管区)|
|PLH-34|あかつき|~|2018.2.16|2020.4.10|2021.2.16|~|
|PLH-35|あさづき|CENTER:[[三菱重工業&br;下関造船所>三菱重工業]]|2019.2.25|CENTER:2020.12.15|2021.11.19|石垣(第十一管区)|
|PLH-31|しきしま&br;(2代目)|~|2022.|2024.3.13|2025.予定|鹿児島(第十管区)|
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