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          F-14はF-4の後継機としてグラマン社が開発し米海軍に採用された艦上戦闘機。

愛称はトムキャット(Tomcat)。

初飛行は1970年、部隊配備は1973年より進められた。 アメリカ海軍ではF/A-18E/F戦闘攻撃機への機種転換が進められおり、最後に残った戦闘部隊 VF-31 も2006年9月には解隊、アメリカ海軍の F-14 は全機退役の予定。


 開発の経緯 
 特徴 
 ミサイル 
 レーダー 
 可変翼 
 可変翼の欠点 
 F-14の改良型 
 F-14B 
 F-14D 
 対地攻撃能力の付加 
 偵察能力 
 実戦経験 
 配備状況 
 スペック
 



開発の経緯
当初アメリカ国防省は海軍と空軍で共通の戦闘機を開発して使う予定を立てていたが、それによって開発されたF-111は艦上機としては重すぎて結局海軍は採用を見送った。しかし海軍は早急に艦隊防空戦闘機の後継機が必要だったため、F-111と同じエンジンとレーダーを使用した戦闘機を開発することを決定した。

開発を急ぎたい海軍とグラマン社は、通常の開発方法(試作機を作って性能評価を行い、その結果を踏まえて量産型を制式採用/発注)といった手順を踏まず、まず12機の先行量産型を製造した。そして、先行量産型の各機に受け持ちの性能評価項目を振り分け、迅速に開発を行うこととした。先行量産型機はラインアウトするとすぐに性能評価試験にかけられ、量産に向けた評価試験項目を消化した。

 
VF-84ジョリーロジャースのF-14AF-111に搭載予定であったレーダーおよびフェニックス空対空ミサイルについても、開発が途中で頓挫していたが、テストベッドとしてA-3 スカイウォーリア攻撃機とスクラップ予定であったF-111Bを使用して開発が再開された。

そのような経緯により、短期間で開発されたのがF-14であり、F-14Aとして制式採用される。

なお、先行量産1号機は試験中の事故により墜落し、製作中の12号機を1X号機として試験に割り当てたため都合13機の「先行量産型」が作られたことになる。また、7号機はP&W TF30に代わるP&W F401型エンジンのテスト機としてF-14Bの型式を与えられている。


特徴
F-14は艦隊防空戦闘機として使用するために能力も防空に特化したものとなっている。中でも一番の特徴としてAIM-54 フェニックス空対空ミサイルとそれを使用するための強力なレーダーが挙げられる。乗員は2名であり、前席が操縦員、後席がレーダー員である。後席に操縦機構はついていないので後席からの操縦は出来ない。レーダー員は操縦資格を持っている必要はなく、パイロットではない搭乗員が乗ることも多い。 主翼にエルロンはついておらず、水平尾翼のエレベーターがエルロンを兼ねる「エレボン」となっている。


ミサイル
AIM-54フェニックスはアクティブレーダーホーミング長距離空対空ミサイルで、射程は100kmを超える。現在アメリカ軍が使用する空対空ミサイルとして最も射程が長いものとなっている。しかし、このミサイルは大型であるため機動性が悪く、また高価でもあるため、現在まで実戦使用例は湾岸戦争時の1度きりで、この時は最大射程ギリギリで発射したため、命中には至っていない(イラン・イラク戦争で使用例があるといわれているが、戦果については諸説存在し、はっきりとしたことはわからない)。F-14はこのミサイルを最大で6発搭載することが可能であるが、着艦時には重量の関係から6発全て装備したままでの着艦は事実上不可能であり、2発の空中投棄が必要となってしまう。しかし、フェニックスは前述のように高価なため、無駄を出さないよう実際搭載する場合には4発までとなっている。なお、フェニックスは2004年9月30日にアメリカ海軍から引退した。


レーダー
F-14のレーダーAN/AWG-9は最大探知距離が200kmを超える画期的な高性能レーダーである。操作は後部座席のレーダー迎撃士官が行う。AN/AWG-9は最大で24目標を同時追尾、そのうち6目標へAIM-54フェニックスを発射し同時攻撃する能力がある。


可変翼
F-14の大きな特徴の一つとして可変翼が挙げられる。これは、飛行中に速度によって最適な後退角に主翼角度を変えられるようになっているもので、速度によって自動的に角度が変更されるものと手動で変更させる2つのタイプがある。F-14では前者を採用し、後退角は飛行中は20〜68度の範囲で可動し、主脚に荷重がかかった場合(静止・格納状態)に限り75度まで後退させることが可能となっている。


可変翼の欠点
現在、アメリカ軍の戦闘機で可変翼が使用されているのはF-14だけである。可変翼機は速度に応じて最適の揚抗比を得ることができる利点があるものの、翼下パイロンを含めた可動機構の複雑さと、可動部品、特にピボットの強度確保の必要性の両面から、重量・工数など諸コストの上昇を招くため、現在ではほとんど使用されない。 F-111ではスチール製ピボットでクラックが多発したため、F-14では強度を確保した上で重量を抑えるためにチタンを真空中で電子ビームを用いて溶接するという当時では非常に高度な技術を採用した結果、素材と技術の両面で高コストを招いた。

F-14B
F-14AはF-111と同じTF30エンジンを使用していたが、推力が若干低くコンプレッサーストールも比較的起きやすかった。そのため当初からエンジンの換装案が挙がっており、エンジンをF110-GE-400に換装したF-14Bが開発された。7号機がF-14Bを名乗っていたので、導入当初はA+(プラス)と呼ばれていた。


F-14D
その後、1990年にはレーダーをAN/APG-71に換装したF-14D型が開発された。これは新規で製造されたものとF-14Aを改修したものの2つのタイプがあるが、前者はF-14Dと呼び、後者はF-14D(R)と呼ばれる。B、Dとも最初は全てのA型を改修する予定だったが、冷戦終了で製造費が安価で運用も柔軟なF/A-18の導入が基本方針となり、改修も新造も大幅に規模が縮小された。F-14B、F-14Dはスーパートムキャットという非公式の愛称がつけられている。


対地攻撃能力の付加
F-14は当初は搭載されたレーダーの能力などから空対空戦闘のみを考慮された戦闘機となっていたが、航続距離が長いことや搭載能力に余裕があるなどの利点があった。 湾岸戦争でのA-6の損耗率の高さと、後継機として開発されていたA-12やその代価案であるA-6Fの開発が中止されたことにより、A-6引退とスーパーホーネット配備までのつなぎとして、F-14の右主翼付け根のパイロンに、LANTIRNポッド(F-15EやF-16に搭載されているものにGPSとの連動機能を追加する改修が行われている)を装備して対地攻撃能力を付与させることにした。

これの改修によりポッド搭載のみでレーザー誘導爆弾などの使用が可能となった。

この対地攻撃能力が付与されたタイプのことをボムキャットと呼ぶこともある。


偵察能力
また、F-14は偵察ポッド(TARPS)を装備し偵察任務にも使用されている。RF-8の退役後、アメリカ海軍では専用の戦術偵察機がなくF-14はそれの重要な一端を担っている。90年代から始まった航空団と飛行隊のリストラではTARPSとLANTIRNを装備しない飛行隊から解体・機種転換されていったことから、これらのポッドによってF-14が延命できたともいえる。

ちなみに、TARPSを装備した機体には「ピーピング・トム」の別称があり、カメラを構えたトムをデザインした専用パッチもある。

実戦経験
F-14は、今までに何度か実戦を経験しており、1981年のに対リビア作戦で初の戦果をあげており、空母ニミッツから発艦したF-14が地中海のシドラ湾上空で2機のリビア空軍所属Su-22Mを撃墜したのは有名な話ではあるが、実は初めて参加した実戦はベトナム戦争である。他1989年の1月にも同じく南地中海で2機のリビア空軍機のMiG-23MLを撃墜している。

湾岸戦争では大きな空戦は行われなかったが、イラク軍のMi-8ヘリコプターを撃墜している。一方でイラク軍の地対空ミサイルで撃墜されている。

1990年代以後の作戦ではボムキャット化されたF-14による対地攻撃の活躍があり、特にアフガニスタン戦争では燃料積載量が少なく、奥地まで飛行できないF/A-18Cの代わりにF-14が誘導爆弾などを投下し、多数の戦果を上げている。


配備状況
F-14は非常に高価な機体であったため、アメリカ海軍以外にF-14を導入したのは王政時代のイラン空軍のみである。イランが購入したのは、一部の装備を外したF-14A仕様機であった。

しかし、その後のイラン革命によりアメリカは引渡し前の機体の差し止めと部品供給の停止を行い、補修部品の調達が困難となったイランでは同機の運用は困難となった。しかしながら、イラン・コントラ事件に絡んでイランの米国製機は稼動状態を保ち、F-14もイラン・イラク戦争で実戦使用された。

ロシアがAIM-54との引き換えで問題の多いF-14AのエンジンをSu-27用のものに交換する契約をしたとも伝えられたが、実際に実行されたのかは不明である。また、交換対象はAIM-54ではなくF-14本体であったという情報もある。少なくとも、ロシアからは戦力補強のためにMiG-29などが引き渡されている。また、イランのF-14はロシアや中華人民共和国製の対艦ミサイルなどを搭載できるいわゆる「ボムキャット」仕様に改修されていると言われる。

なお、イランのF-14Aは引渡し以来長い間いわゆる「デザート迷彩」を施していたが、近年、同国空軍のMiG-29同様の砂色と水色による迷彩に塗り替えられた機体も増えている。

イランでは、F-14の後継と期待されたMiG-31やSu-27の購入が経済及び政治的な事情からできなかったため、現在でも貴重な防衛戦力として多数のF-14の維持に精力を注いでいる。数十機がロシアの支援により稼動状態にあり、パレードなどでの上空フライトパス以外にも、ときおり一般公開もされている模様である。

日本の航空自衛隊でもかつて、F-14を導入しようと検討していた事もあったが、入札でF-15に敗れ去った。

スペック 
イラク戦争中にリンカーンのフライトデッキでJDAMの搭載作業を行うVF-31 トムキャッターズのF-14D乗員:2名(操縦士1名、レーダー操作官1名) 
全長:19.1m 
全幅:19.54m (主翼後退角20度) 
全高:4.88m 
最高速度:M2.34 
航続距離:1600海里(2963.2km) 
エンジン:GE社製 F110-GE-400 ×2基 
推力:10,478kg 
空虚重量:19,051kg 
最大離陸重量:33,724kg 
固定武装:M61A1機銃 1門 

 
    電子戦機REA-14エレクトリックキャット



EA-6プラウラーを代替する次世代電子戦機の座をかけて、現在ノースロップグラマンはボーイングEA-18Gグロウラーと激しい売り込み競争が行われている。
EA-6プラウラーに代替する次世代電子戦機、ノースロップグラマンはF-14トムキャットを原型としたEA-14'エレクトリックキャット'を提案した。
REA-14は従来ダンデム複座から四座へと拡張されており、前席は操縦士、その後ろはレーダーシステム士官と変わり代わりは無く、さらに後ろの二人は電子対抗手段士官が搭乗する。
同機はAIM-54の運用能力こそ無くなってしまったが強力な電子戦支援機として生まれ変わり新たにAGM-88HARMの運用が可能となった。
さらに偵察ポッドの搭載により戦術偵察任務にも転用が可能。主に合成開口レーダーポッドを搭載し目標周辺の「空撮写真」を遠距離から得ることが出来る。
ただF/A-18との運用面からみてEA-18の採用が濃厚と見られている。
が、最後のF-14Dは90年代生産であり運用寿命が長く残っているので、EA-14にアップデートする可能性は未だ残されている。

      前線早期警戒機F-14FAEW

米海軍F-14を改造した早期警戒機が2004年1月10日にロールアウト、2月1日に初飛行した。なお同機の主契約は警戒システムに定評のあるノースロップグラマンである。

E-2ホークアイおよびE-3AWACSは当然のごとく一切の防御力を持たないためCAPを行う戦闘機が必要不可欠であり、戦線はるか後方で哨戒を行うが通常である。
しかし、この手段は極めて不効率である、そして敵側奥地の状況を知ることが出来ない。そこで開発されたのがこのF-14FAEWで、Forward Airborne Early Warning.すなわち前線早期警戒機である。

その名前の通り前線に近い空域を飛行し哨戒活動を行う事を目的とした警戒機である。故にF-14FAEWは、トムキャットの象徴的武装であるAIM-54フェニックスの運用能力こそ失ったがAIM-120及びAIM-9による最大4発の空対空ミサイルを運用可能な自衛力を持ち、また超音速(マッハ1強程度か?)での飛行が可能であるため、敵性に対する防御力が高い。

F-14FAEWの搭載する警戒レーダーはAN/APS-151で、詳細は明らかにされていないが最大視程500Km、目標探知数は300程度であろうと推定される。管制は行わずクルーはレーダーの操作のみ行い、得た情報はデータリンクを通じ地上に送信される。警戒レーダーの能力はE-2に比べ遜色ないが、哨戒可能時間にやや限りがあるため多数機による運用が不可欠である。
なおAWG-9は搭載しておらず、AIM-120の照準にはこのレーダーを使用する。ただし戦闘機用のレーダーでは無いためSTTは備えておらず、追尾能力自体はさほど高くは無い。なおサイドワインダーの照準にはレーダーを使用できないため古典的なIRシーカーによる、うねり音で照準を行う。

不経済ゆえに退役したF-14だが、このような大型のレーダーを搭載するには大出力の発電機を必要とし、F/A-18やF-16などの比較的小型機では物理的にも無理である。
しかし米海軍はF-14FAEWにあまり興味を示しておらず、アメリカ軍での採用は厳しい見通しだ。しかし他の早期警戒機に比べて安価であるため、早期警戒機を欲するが経済的に導入の出来ないような、ポーランドやスペイン等の国が興味を示している。
なお、退役機に対する改造のみであり、当然F-14自体の生産は行われない。

FAEWの市場はおよそ200機程度が見込まれているため、ボーイングでは同様にF-15を使用したFAEWが計画中である。F-15型の警戒レーダーは、「円盤」ではなくMESAレーダーになる見通し。

     可変前進翼研究機F-14FOV-WING

退役したF-14をNASAが引き取り、DARPAの協力のもと可変前進翼研究機として大規模な改良を加えた機体。
2001年6月に初飛行し、以後36ヶ月間のスケジュールが組まれていた。現在ではプログラムはすべて終了しNASAで保管されている。

このF-14改は前進翼の欠点である翼の付け根に高い負荷がかかるのを解消するために作られた試作機であり、通常のF-14では飛行中に20度から68度までの後退角が飛行状況により自動的に設定されるが、F-14FOV-WINGはさらに手動により18度までの前進翼に設定することができる。

前進翼になったことによりロール率が高まり、さらに高迎角時にも操縦が保たれ旋回時のエネルギーロスも少なくなった。また操縦系統はデジタルフライバイワイヤに置き換えられ、火気管制関連のコンピューターはほぼ残されており、ミサイル類の搭載試験も行われる予定。写真はフレアを放出している。

ただしこの機体は研究機であり、今後この技術が活かされた戦闘機が生産される可能性があってもF-14FOV-WINGが生産されることは無いだろう。




林寿和でした。



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