*&ruby(ろかく){【鹵獲】}; [#h35ad32d]

戦場において、商取引なしに物資や[[兵器]]などを入手する事。~
捕虜から没収する場合と、死体から漁る場合と、[[撤退]]時に放棄された物資を回収する場合がある。~
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鹵獲される物資の大半は食料・弾薬・[[歩兵]]の個人装備などといった雑多な消耗品である。~
[[戦車]]などの兵器は戦闘によって破壊されるため、兵器が稼動状態のまま鹵獲されるのは比較的珍しい。~
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鹵獲兵器として最も代表的なのは海戦で[[拿捕]]された[[艦艇]]である。~
とはいえ、軍艦は沈没が確定するまで[[降伏]]しないのが通例であり((艦体が無事であっても軍事機密保持のために自沈させる決断を下す事は多い。))、実際に[[拿捕]]される艦は多くない。~
陸戦では占領した基地の在庫が最も多く、捕虜の武装解除時に没収する装備がその次に多い。~
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[[墜落]]した[[航空機]]はほぼ確実に大破するため、空戦によって何かを鹵獲する事はまずない。~
[[歩兵]]による[[航空基地>飛行場]]占領に際しても、飛行可能であれば自力で飛んで[[撤退]]可能なため、[[軍用機]]の鹵獲は極めて困難である(([[航空機]]は軍艦と並ぶ軍事機密の塊であるため、退避が間に合わないとなればその場で爆破されるか、航空[[燃料]]で焼却処分されるのが通例である。))。~
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鹵獲された兵器は、既知のものであれば自軍の兵器として流用される((主に現場の判断で、補修や改造が施される場合もある。))。~
何らかの疑問点があれば[[後送]]して[[リバースエンジニアリング]]にかけられる。~
そうした利用価値すらないものである場合、前線で発覚したなら破壊・放棄され、[[後送]]後であれば倉庫に死蔵される。~
今日、我々が博物館などで目にする旧時代の兵器の多くも、軍から譲渡された鹵獲品である。~

**戦争犯罪としての鹵獲 [#bc240f53]
戦時国際法では鹵獲しても良い物資を敵国の国有財産のみに限定している。~
また、これを鹵獲する権利も国家の軍隊にのみ認めている。~
従って、民間への掠奪行為や鹵獲品の横領は戦争犯罪である。~
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とはいえ戦時国際法の例に漏れず、この原則は実際の戦場においてしばしば黙殺される。~
特に消耗品は戦場での監査に不備が生じやすく、後から入手経路を追跡調査するのも困難である。~
発覚すれば[[軍法会議]]の対象となるが、[[憲兵]]が鹵獲品の明細を完全に把握するのは不可能である。~
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>例えば、ある兵士が支給品以外の食べ物や服、銃などを所持していたとする。~
この場合、その物資の入手経路としては以下のようなものが考えられる。~
以下のいずれであるかは必ずしも問われないし、入手した事実そのものも報告されない事が多い。
-本当は支給品なのだが、管理担当者の戦死・[[MIA]]・異動や退職に伴う後任者への引き継ぎ漏れなどが原因で記録が残っていない。
-兵士個人が自宅から持ってきた私物。
-道端や廃墟など、戦場の片隅に放置されていた物品、あるいは遺棄されていた遺体から剥ぎ取ってきた者。
-友軍の他[[部隊]]・兵士から融通してもらうか、あるいは戦死した友軍兵士の遺体から回収したもの。
-基地内の[[酒保]]で購入したもの。
-現地住民から[[軍票]]や現地通貨で購入したもの。
-現地住民を脅迫したか、あるいは殺害して奪い取ったもの。
-[[部隊]]単位で現地の村落や避難所を襲撃し、老若男女問わず皆殺しにしてから「戦利品」を分配した((近代軍隊がここまでの蛮行を行うのは、戦線が安定している場合にはまずあり得ない。&br;  逆説的に、こういう事案が「あり得る」ほどに錯綜した戦況における真相究明は非常に困難である。&br;  その上、軍隊や政府による組織的な証拠隠滅や、金銭的利得や反戦団体によるプロパガンダのために実在しない事例を捏造した「訴訟詐欺」の可能性も否定できない。))。

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