*&ruby(こうくうせんかん){【航空戦艦】}; [#j1362db8]
[[戦艦]]の砲撃能力と[[航空母艦]]の航空戦能力を併せ持つ事を目的として設計された艦種。~
[[戦艦]]が砲撃を行う前段階で[[艦載機]]が偵察および[[ファイタースウィープ]]を行うもので、現存する艦種と比較すると[[イージス艦]]が最も近い。

古代から現代にいたるまで、この艦を実現したのは旧日本海軍の「伊勢」と「[[日向]]」の二隻だけであり、5、6番砲塔を取り払って[[格納庫]]と[[飛行甲板]]を作るという方式であった。もっとも当初は完全な全通甲板になる予定だったが、時間と資材がかかるという理由でこの艦種への改装となった。~
結果、艦体の半分の長さでしかない[[飛行甲板]]は着艦は愚か新型機の発艦さえ不可能だったので([[彗星]]二二型等はカタパルトで発艦可能)、[[爆撃]]可能な[[水上偵察機>偵察機]]「瑞雲」を[[カタパルト]]で発艦させ、着艦は着水した機体をクレーンで引き揚げる方式となった。~
しかし完成時には艦載機の調達もままならず、最終的に両艦は航空戦艦として活躍しないままに呉の海へと沈んだ。~

楽観的に見れば当時の技術力における「理想の艦種」((その奇抜なコンセプトゆえ、[[太平洋戦争]]を題材に取る「架空戦記」では[[震電]]、[[大和]]と並んで人気のある兵器である。))だが、そこまで楽観的に考えている軍事史家は多くない。~
一般に、このような「マルチロール化((旧来では複数の兵器に分担されていた用途を1つの機種で両方行えるよう再設計する事。[[マルチロールファイター]]が史上最大の成功例として知られている。))」の目的は性能の向上ではなく、製造や整備や作戦準備を容易にする事である。~
そして、当時もっとも高価で希少で、かつ用途も限定された兵器であった[[戦艦]]と[[航空母艦]]をマルチロール化する事にどのような戦略的利点があったかは、確かめる機会もないまま[[戦艦]]の時代が終わった今となっては定かでない。~
ただし、艦隊戦ではなく海上偵察を念頭に置いた[[航空巡洋艦]]、[[駆逐艦]]に[[ヘリコプター]]搭載能力を付与した[[軽空母]]などは実際に多数が建造され就役しているので、航空戦艦も(もし早期に就役して実戦参加できたなら)一定の評価を得ていた可能性はある。

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