*&ruby(かねのかべ){【金の壁】}; [#hb52e238]
技術的には実現可能だが、実際に行うと開発費・生産費・維持費を捻出できずに破綻するプロジェクトを指す比喩表現。~
元は[[超音速]][[航空機]]の開発計画に関する揶揄で、[[音の壁]]と[[熱の壁]]を突破した先に待つ「最後の壁」とされている。~
>この他「配備するのが遅すぎて成果が無意味になる『時間の壁』」「法制上の欠陥や政治的都合によってプロジェクトが暗礁に乗り上げる『バカの壁』」などもあるにはあるが、これらは常に問題になるわけではない。

技術史は常に金の壁との戦いであったが、ことさら20世紀後半以降は[[兵器]]開発・配備のコストが高騰の一途を辿っている。~
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科学技術上の問題ではないため、一般的な科学者・技術者の立場では検知できない。~
このため、量産・実用段階に入った後、経済面で問題が起きてから初めて存在に気付く事も少なくない。~
そしてほとんどの場合、発覚後に行える現実的な対策はプロジェクトの縮小・凍結のみである。~
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関連:[[音の壁]] [[熱の壁]] [[コンコルド]] [[コンコルド症候群]] [[商用オフザシェルフ]]

**金の壁が問題となったプロジェクトの一例 [#b77438b4]
[[航空]]・[[軍事]]にかかる開発分野で、金の壁が重要な問題となったプロジェクトの一例を挙げる。~
-[[コンコルド]]
-[[Tu-144]]
-[[F-22]]((高度な技術をふんだんに盛り込んだことと他国への輸出を禁じたため、750機の調達予定がわずか187機で生産終了となった。))
-[[B-2]]((徹底した[[ステルス]]性と当時の最新鋭技術をふんだんに盛り込んだ結果「同重量の金塊よりも高い」「ギネスブックにも載っている世界一高価な航空機」とも揶揄された。))
-[[90式戦車]]
-[[まいど1号]]((運営母体の予算不足により[[JAXA]]への管理委託費を支出できず、わずか1年未満で運用終了となった。))
-[[F-2(日本)]]
-[[AH-64DJP>AH-64]](([[防衛省]]・[[自衛隊]]での型式呼称は「AH-64D」。))(([[武器輸出三原則等]]により調達費用が高騰したところに、[[ボーイング]]が原型機・D型の生産ラインを閉鎖したため、わすか13機で調達終了となった。))((なお、2022年12月に[[防衛省]]は[[陸上自衛隊]]の本機及び[[AH-1]]を将来的に運用終了し、後継に[[無人機]]を充てる意向を表明している。))
-YX(YS-33)((プロジェクト自体は紆余曲折の末、米[[ボーイング]]社との共同開発機・[[B767]]及び[[B777]]として実現している。))
-[[XB-70]](([[弾道ミサイル]]の実用化により量産されなかった。))
-[[AH-56]]((1960年代当時最新の技術が盛り込まれたが、[[ロッキード]]社自体の技術的未成熟と、継戦中だった[[インドシナ戦線>ベトナム戦争]]には間に合わないとされたことから開発中止。))
-[[島風(旧日本海軍・二代目)>島風]]((最大速力40ノットを発揮する[[エンジン]]のコストが[[戦艦]]に搭載するものに匹敵するものとなってしまった。))
-[[RAH-66]]((1990年代の最新鋭技術が盛り込まれたが、[[無人機]]で代替可能とされたため開発中止。))
-[[ARH-70>OH-58]]((機体の開発に[[商用オフザシェルフ]]を取り入れたにもかかわらずコスト高騰が止まらず、結局不採用となった。))
-[[F-35]]
-[[VH-71]](([[大統領専用機>政府専用機]]としての1,900以上に及ぶ要求項目が盛り込まれた結果、ユニットコストが「[[エアフォースワン]]」([[VC-25A>VC-25]])をも上回ってしまい、不採用となった。))
-[[シーウルフ(原子力潜水艦・二代目)>シーウルフ]]
-[[スペースシャトル]]及びその後継機((「機体重量の90%以上が再利用可能」とされていたが、実際の運用では予想以上の経費がかかり、従来の「使い捨て式」[[宇宙船]]のほうが効率的になってしまった。))
-アメリカ合衆国以外の国における[[正規空母]]((その理由については[[正規空母]]の項を参照のこと。))
-[[アーセナル・シップ]]
--[[CG(X)]][[ミサイル巡洋艦>ミサイル艦]]
--[[ズムウォルト級>ズムウォルト]][[駆逐艦]]((駆逐艦でありながら、往時の[[前ド級]][[戦艦]]にも匹敵する[[排水量]]を誇ったが、初期発注分の3隻で建造が打ち切られた。))
-[[ニムロッドMRA.4>ニムロッド(哨戒機)]](([[エアバス>エアバス(企業)]][[A340]]の[[グラスコックピット]]などを取り入れたが、機体の原設計が古いため調達中止となった。))
-[[ドミートリー・ドンスコイ級>ドミートリー・ドンスコイ]][[戦略潜水艦]]~
-[[VC-10]]
-[[スペースジェット]]((度重なる納入延期により「時間の壁」に直面したことと、2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行による航空需要の大幅な減退により商品化が困難とされ、計画が凍結された。))
-[[コンステレーション・プロジェクト>コンステレーション]]
-[[E-767]]((日本以外に韓国・台湾・オーストラリアが導入を検討したが、1990年代末の「アジア通貨危機」により、日本以外のいずれの国でも導入が見送られた(元々、同目的で使用される[[E-3]](こちらは[[B707]]がベース)よりもコスト高であった)。))
-[[E-10]](([[E-3C>E-3]]・[[E-8]]・[[RC-135]](いずれも[[B707]]及び[[KC-135]]をベースとしている)の後継として、[[B767-400ER>B767]]をベースに開発されたが、アメリカ合衆国の国防予算縮小により開発が凍結された。))
-[[P-3H>P-3]](P-7)((米ソ[[冷戦]]の終結に伴う軍事予算の削減により開発中止。))
-XM2001「クルセイダー」155mm[[自走榴弾砲]]((開発費・配備費用がかかりすぎ、[[冷戦]]後の[[非対称戦争]]には適さないとして計画中止。))
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