*&ruby(ばびろんさくせん){【バビロン作戦】}; [#aec87232]
1981年にイスラエルにより行われた、イラクのバグダッド近郊で建設中であったオシラク原子炉に対する航空攻撃作戦。イラクの[[核兵器]]製造を妨害する目的で実施された。

オシラク原子炉の正式名称はタンムズ1号といい、フランスから輸入されたオシリス型研究用[[原子炉]]である。((オシラクはフランス側の通称で、「オシリス」と「イラク」の合成語である。余談だが「オシリス」は古代エジプト神話の神、「タンムズ」はシュメール神話の神である。「タンムズ」はバース党がイラクの政権を奪取した月の名でもある。))~
[[軽水炉]]ではあるが、様々な[[放射性物質]]を生成する目的で設計されたスイミングプール型容器を持つ。~
イラクは[[原子炉]]建設の目的を「将来の石油資源枯渇に備えて」としていたが、火種として高濃縮[[ウラン]]を必要とするなど発電炉としてはあまり合理的でなく、[[核兵器]]用濃縮[[ウラン]]を量産する目的で建設されたのではないかという疑惑が持たれた。~

イラクが核武装する可能性に脅威を感じたイスラエルは[[モサド]]により、輸出前の原子炉容器に対する破壊工作や、建設関係者の[[暗殺]]・恫喝などを試みたが、建設を止めることはできず、ついには軍による武力行使を決断した。~

参加兵力は主力となる[[攻撃機]]の[[F-16]]が8機(各機[[Mk.84>Mk.80シリーズ]] 2000ポンド弾を2発装備)、および護衛[[戦闘機]]の[[F-15]]が6機だった。~
武装として[[レーザー誘導爆弾]]が検討されたこともあったが、当時の[[F-16]]に[[レーザー]]を照射する機能が備わっておらず、また目標へ[[レーザー]]を確実に照射できる場所まで工作員を潜入させることも困難であり、使用することができなかった。~
無誘導爆弾で目標を確実に破壊するため、[[パイロット]]達には厳しい訓練が課せられた。~
また当時最新鋭の[[F-16]]であっても[[航続距離]]がギリギリで、かつ[[空中給油機]]をまだ保有していなかったため、[[滑走路]]端でアイドリングする離陸直前の機体に給油をするという危険な手段もとられた。~

シナイ半島東部のエツィオン基地((イスラエル南端エイラート近郊の、[[第三次中東戦争]]で占領した地域に存在した。1989年にエジプトへ返還され、現在はターバ空港として使用されている。))を発進した14機はサウジアラビアの[[領空]]を無許可で侵犯、続きイラク[[領空]]に入りバグダッド近郊で建設中だった[[原子炉]]に対し攻撃を加えた。~
[[モサド]]がイラクの防空網を調べ上げたこともあり、奇襲が完全に成功したため反撃は僅かで、15発の[[爆弾]]が命中し[[原子炉]]は破壊された。~
帰路は再びサウジアラビア[[領空]]侵犯。さらにヨルダン[[領空]]を侵犯し全機が無事に帰還した。~

稼動前であったとはいえ史上唯一の[[原子炉]]に対する攻撃作戦であり、イスラエルに対し特に当事国のイラク、ヨルダン、サウジアラビアをはじめとして世界中から非難の声が上がった。~
国際的に見て非合法な作戦であった一方、もしも[[原子炉]]の破壊に成功しなかった場合は[[湾岸戦争]]の際にイスラエルが核攻撃を受けたかもしれないとする説もある。~

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