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*&ruby(らいでん){【雷電】}; [#jadec7af]
[[三菱>三菱重工業]]J2M.~
日本海軍が運用した[[局地戦闘機]]（[[迎撃戦闘機]]）。~
三菱 J2M「雷電」。~
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軍港や重要施設の防空を専門とする[[迎撃戦闘機]]として昭和14年に発注された本機は、当初は上昇力、速度、火力を主眼に開発され、[[航続距離]]、[[運動性>マニューバー]]は重視しないものとされた。~
昭和17年に制式採用されたが、爆撃機用の大直径エンジン「火星」と延長軸・プロペラ振動の共鳴による振動((実際にはプロペラピッチのギア比不適合からなる異常振動。))、在来戦闘機と比べての視界不良、また本機の任務から考えれば重要度の低い[[運動性>マニューバー]]の低さ([[失速]]の早さ、高い離着陸速度を含めて）、[[航続距離]]の短さといった欠陥を指摘され、それらの改修に丸2年を費やしてしまった。~
こうした軍令部の戦闘機生産計画の見通しの甘さに翻弄され、さらに追い打ちをかけるように主生産工場が地震被害に遭うなどで生産が大幅に遅延し、結局約400機が生産されるに止まった。~
[[三菱>三菱重工業]]が開発、[[日本海軍>日本軍]]が運用した[[局地戦闘機]]（[[迎撃戦闘機]]）。~
[[連合軍>連合国（第二次世界大戦）]]のコードネームは"&ruby(ジャック){Jack};"。~
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しかし、大戦後半の大出力日本機としては比較的高い信頼性を備え、旧式化した零戦が手に負えなかった[[米軍>アメリカ軍]]の新型機とも、空戦のスタイルと条件さえ揃えば互角に近い戦いができる能力を有していた。~
戦史上も[[F6F]]の撃墜を記録している。~
軍港や重要施設の防空のため、対[[爆撃機]]戦闘に運用される[[局地戦闘機]]として昭和14年（1939年）に開発指示された「十四試局地戦闘機」は、上昇性能、[[速度]]性能、強力な搭載武装を主眼に開発され、[[航続距離]]、[[運動性]]（特に[[格闘戦>ドッグファイト]]における優位を決める旋回性能、低い[[失速]]速度）を妥協した、これまでにない開発計画だった。~
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また、本来の用途である[[局地戦闘機]]としては本土防空で活躍、難敵[[B-29]]を相手に苦戦しながらも、その抜群の上昇力と火力を生かし、日本機としては最高の[[B-29]][[撃墜]]数を記録したと言われている。~
量産された21型では、B-29を迎撃するには高々度性能が不足であり、[[排気タービン]]装備の型も二種類試作され一部部隊に配備されたが、500kg近い重量増の為かえって空戦能力の低下を招き、量産には至らなかった。~
爆撃機用の大直径発動機（[[エンジン]]）「火星」を搭載、延長軸で[[プロペラ]]を回転させることで絞られた[[機首]]など、特徴的な外見をもった十四試局地戦闘機（J2M1）は昭和17年（1942年）3月に初飛行したが、性能は要求に届かなかった。~
このため、大規模な改設計を施した十四試局地戦闘機改（J2M2）が開発され、同年10月に初飛行、要求性能を概ね達成した。~
一方で、J2M2には設計ミスによる主脚の動作不全、共振によって発動機周辺から発生する異常振動、[[水メタノール噴射]]装置の不調といった問題が発生した。~
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本機は、設計思想の違う零戦と比較された事が不幸であり、単純に防空用として見た場合、日本機の中では優れた機体であったのは確かである。~
終戦後の米軍による評価でも[[カタログ・データ>カタログスペック]]を大幅に上回る優秀な結果を残しており、軍令部で問題にされた運動性([[格闘戦>ドッグファイト]]能力）、着陸速度、視界不良などは言及されていない。~
しかし、戦局の悪化のために1943年10月頃から少数のJ2M2が「試製雷電」として実戦配備され、油田など重要拠点の防空任務に参加した。~
欠陥が十分に是正されたのは昭和19年（1944年）以降のことで、同年10月には[[制式]]化も実施された。~
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現在では、アメリカ・カリフォルニア州チノにある「Planes of Fame」に世界で現存する唯一の機体である雷電二一型（J2M3）が展示されている。~
本機は多くの[[搭乗員>エビエーター]]に低い旋回性能、高い[[失速]]速度や急激に発生する[[失速]]からくる[[離>離陸]][[着陸]]事故の多さで、[[整備士>航空整備士]]に整備の困難さや整備中の事故死の多さで低評価を受けた。~
また、海軍にとっても想定以下の性能で実用化された本機は、信頼性の高い[[零式艦上戦闘機]]、より汎用性に長けた[[紫電]]などと比べて運用する利点の少ない機体であった。~
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**性能諸元（21型） [#b4c43ad9]
|機体略号|J2M3|
|乗員|1名|
|全長|9.695m|
|全高|3.945m|
|全幅|10.8m|
|翼面積|20��|
|重量|2,539kg|
|全備重量|3,507kg|
|最大速度|596.3km/h/5,450m|
|[[エンジン]]|[[火星]]23型甲 空冷星形14気筒×1基&br;（離昇1,820馬力、1,600馬力/1,300m/1速、1,510馬力/4,150m/2速 三菱側資料による）|
|[[航続性能>航続距離]]|2,519km（[[増槽]]あり）|
|武装|20mm機銃（携行弾数190〜210発）×4門|
|爆装|30〜60kg爆弾×2発|
それでも、実戦では[[局地戦闘機]]として対[[爆撃機]]戦闘に参加、特に本土空襲の際の[[B-29]]迎撃ではその高い上昇力を生かし、高高度に素早く到達可能な数少ない機体であった。~
しかし、主要生産型である二一型の発動機出力はB-29の飛行する高度10,000m周辺では十分に発揮されず、改善のために[[排気タービン式過給器>ターボチャージャー]]付き発動機搭載型も二種類試作、配備されたが、500kg近い重量増や[[過給器]]の不調の為かえって上昇力をはじめとする総合的な性能低下を招いた。~
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本機は多方面から低評価を受けているが、単純な[[迎撃戦闘機]]としては日本軍機の中でも優れた機体であった。~
戦中の米軍が予測した本機の[[カタログスペック]]は実際のそれを大幅に上回るものが記載されていた((ただし、この評価は雷電の配備機数、配備期間から考えて米軍側の情報不足からくる憶測である可能性が高い。))。~
また、戦後の飛行テストでも運用時に問題視された[[運動性]]、[[失速]]速度、異常振動は言及されなかったが、離着陸時の視界不良と[[失速]]特性は若干の危険視がされた。~
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現在では、アメリカ・カリフォルニア州チノにある「Planes of Fame」に世界で唯一現存する雷電二一型が展示されている。~
**性能諸元[#b4c43ad9]
|CENTER:形式名|CENTER:雷電二一型|CENTER:雷電三三型|
|CENTER:機体略号|CENTER:J2M3|CENTER:J2M5|
|CENTER:乗員|>|CENTER:1名|
|CENTER:全長|CENTER:9.695m|CENTER:9.945m|
|CENTER:全高|>|CENTER:3.945m|
|CENTER:全幅|>|CENTER:10.8m|
|CENTER:翼面積|>|CENTER:20��|
|CENTER:自重|CENTER:2,539kg|CENTER:2,510kg|
|CENTER:正規全備重量|CENTER:3,507kg|CENTER:3,482kg|
|CENTER:[[発動機>エンジン]]|>|CENTER:[[三菱>三菱重工業]]「火星」空冷複列星型14気筒×1基|
|CENTER:発動機形式|CENTER:火星二三甲型|CENTER:火星二六型|
|CENTER:離昇出力|CENTER:離昇1,800馬力/1,323kW&br;1,600馬力/1,176kW（1,300m/1速）&br;1,510馬力/1,110kW（4,150m/2速）&br;（三菱側資料による）|CENTER:離昇1,800馬力/1,323kW|
|CENTER:[[プロペラ]]|>|CENTER:住友金属製プロペラ((ドイツVDM社製電動ガバナー付きプロペラを[[ライセンス生産]]したもの。))&br;（十四試局戦は3翅、十四試局戦以降は4翅）|
|CENTER:最大速度|CENTER:596.3km/h&br;（高度5,450m）|CENTER:614.5km/h&br;（高度6,585m）|
|CENTER:[[航続性能>航続距離]]|CENTER:2,519km（[[増槽]]あり）|CENTER:全力0.5時間+巡航2.4時間|
|CENTER:[[上昇性能>上昇率]]|CENTER:高度6,000mまで5分38秒（17.75m/s）|CENTER:高度6,000mまで6分20秒（15.79m/s）&br;高度8,000mまで9分45秒（13.68m/s）|
|CENTER:[[翼面荷重]]|CENTER:175kg/��|CENTER:174kg/��|
|CENTER:[[馬力荷重]]|CENTER:377W/kg|380W/kg|
|CENTER:武装|>|CENTER:九九式一号20mm機銃四型×2挺（翼内、携行弾数190発）&br;九九式二号20mm機銃四型×2挺（翼内、携行弾数210発）|
|爆装|>|CENTER:30〜60kg爆弾×2発|
~
**主な形式 [#dc2ecef6]
-十四試局地戦闘機（J2M1）：~
[[火星]]13型(1480馬力）搭載。~
3枚プロペラ、初期は曲面ガラスを使用した背の低い風防を装備していたが、後に背を高くして視界を改善。~
翼内に20mm機銃2門、胴体内に7.7mm機銃2門を搭載。（8機）~
-十四試局地戦闘機（J2M1）（8機）：~
[[火星一三型>火星]]（離昇1,400馬力（1,044kW））エンジンを搭載する試作型。~
3枚プロペラ、初期は曲面ガラスを使用した背の低い[[風防]]を装備していた。~
武装は翼内に九九式一号20mm機銃×2門、胴体内に九七式7.7mm機銃×2門を搭載。~
~
-十四試局地戦闘機改（試製雷電）/雷電一一型（J2M2）：~
エンジンを火星23型甲（1,800馬力、水メタノール噴射装置と燃料噴射装置を追加）に換装。~
ロケット効果を狙い、排気管を集合式から推力式単排気管化した他、4枚プロペラに換装し視界を改善した。~
また、20mm機銃を銃身の長い九九式二号銃三型に換装している。~
生産型は生産途中から機首下部の潤油冷却器用空気取入口、翼内タンクに自動消火装置を追加した。（155機）~
-十四試局地戦闘機改/試製雷電（J2M2）：~
エンジンを[[水メタノール噴射]]装置と燃料噴射装置を追加した火星二三型甲（離昇1,850馬力（1,379kW））に換装。~
ロケット効果を狙い、排気管を集合式から[[推力]]式単排気管化した他、プロペラを4枚のものに換装、風防を拡大して視界を改善した。~
また、20mm機銃を銃身が長く、装弾数も多い九九式二号銃三型に換装している。~
制式採用以前に実戦運用が開始された。~
~
-雷電二一型（試製雷電改、J2M3）：~
武装を20mm×4門（99式1号銃×2門、99式2号銃×2門、ベルト給弾式）に強化した型。~
防弾タンク装備。（313機）~
99式2号銃×4門に換装した型は雷電21型甲（J2M3a）と呼ばれる。~
-雷電一一型（J2M2）（155機）：~
試製雷電の生産型。~
生産途中から機首下部の潤滑油冷却器用空気取入口、翼内タンクに自動消火装置を追加した。~
少数ながら、二式30mm固定機銃に換装した機体も存在する。~
~
-雷電三二型（J2M4）：~
火星23型丙（[[排気タービン]][[過給器]]付き）を装備した高々度実験機。~
20mm[[斜銃>斜め銃]]2丁を追加。（三菱製胴体延長試作型：2機、空技廠在来機改修型：少数生産「十数機」と言われる）~
-試製雷電改/雷電二一型（J2M3）（313機（三菱製は約280機））：~
武装を20mm機銃×4挺（九九式一号×2門、九九式二号×2門、ベルト給弾式）に強化した型。~
自動防漏式の防弾タンクを装備。~
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--雷電二一型甲（J2M3a）：~
機銃を九九式二号20mm機銃×4門に統一した型。~
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-雷電三二型（J2M4）（三菱製胴体延長試作型：2機、空技廠在来機改修型：少数）：~
[[発動機>エンジン]]を[[排気タービン式過給器>ターボチャージャー]]付の火星二三型丙に換装した高々度実験機。~
三菱型は翼内20mm機銃を2挺に削減した代わりに、20mm斜銃×2丁を追加した。~
~
-雷電三三型（J2M5）：~
三一型に対しエンジンを火星26型甲（過給機を改善。離昇1,820馬力。）に換装し、高々度性能の改善を図ったほか、機首下部の潤油冷却器用空気取入口を半埋め込み式とし、風防上部の再嵩上げと胴体側面を削り視界改善を実施した。~
三一型に対しエンジンを[[過給器]]を改善した火星二六型甲（離昇1,820馬力）に換装し、高々度性能の改善を図った型。~
また、機首下部の潤滑油冷却器用空気取入口を半埋め込み式とし、機械式過給器用の空気吸入通路を拡大、風防上部の再嵩上げと胴体側面を削り視界改善を実施した。~
海軍機として最大の332kt（615km/h）/6,585mを発揮した。~
99式2号銃×4門に換装した型は雷電33型甲（J2M5a）と呼ばれる（試作3機）。~
30mm機関砲×2門に改修された型もある。~
五式30mm機銃×2挺に換装した機体も少数存在する。~
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-雷電三一型（J2M6）：~
二一型の視界改善のために風防形状を改善した型。~
昭和19年末以降は三菱が生産していた。速度低下により少数生産で終わる。~
20mm機銃を99式2号銃に換装した型は雷電31型甲（J2M6a）と呼ばれる。~
--雷電三三型甲（J2M5a）（試作3機）：~
20mm機銃を九九式二号銃×4挺に統一した型。~
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-雷電三一型（J2M6）（少数生産）：~
二一型に三三型と同じ視界改善のために風防形状を改善した型。~
昭和19年末以降の三菱生産機はこの形式。~
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--雷電三一型甲（J2M6a）：~
20mm機銃を九九式二号銃に統一した型。~
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-雷電二三型（J2M7）：~
二一型のエンジンを[[火星]]26型に換装した型。試作のみ。~
風防と胴体形状は二一型と同じだが、機首下部の潤油冷却器用空気取入口は半埋め込み式になっている。~
[[火星]]31型搭載型はJ2M7aと呼ばれる。~
二一型のエンジンを[[火星]]二六型に換装した型。試作のみ。~
[[風防]]と胴体形状は二一型と同じだが、機首下部の潤滑油冷却器用空気取入口は半埋め込み式になっている。~
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--雷電二三型甲（J2M7a）：~
[[火星]]三一型搭載型。~
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-キ65：~
十四試局戦をベースにした陸軍向け[[重戦闘機]]/[[襲撃機]]の計画。製作されず。~
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