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*&ruby(とくべつこうげき){【特別攻撃】}; [#e4edf11f]
車両・艦船・[[航空機]]等が、人が乗り込んだまま目標に突入し、打撃を与える攻撃方法。~
無論、生還の望みは一切無い。~
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車両・艦船・[[航空機]]等が、人が乗り込んだまま目標に衝突し、搭乗員の自殺と引き替えに打撃を与える攻撃方法。~
「特攻」と略された言い方が一般的で、今日では「体当たり攻撃」と同義語に扱われる事が多い。~
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被弾をするなどして帰還できなくなった際、やむなく敵に突入するということは外国の軍隊でもあり、日本でもノモンハン事変や[[ミッドウェー海戦]]等で「個人の意志により」行われていたが、本項目であげる「特別攻撃」は、''軍隊の正規作戦行動として継続的・組織的に行われた''点が大きく異なる。~
なお、組織的な航空機を利用した体当たり攻撃はそのものは、[[ソ連軍]]が先に実施しており、[[タラーン]]と呼ばれた。~
また、[[ドイツ空軍>ルフトバッフェ]]においても[[エルベ特別攻撃隊]]という体当たり攻撃を主導した部隊が結成され、既存の[[戦闘機]]と[[爆撃機]]を組み合わせて作った[[ミステル]]という特攻機が開発・実戦化されていた。((同機の実態は、爆撃機を大型の滑空爆弾とするものであり、パイロットは帰還することが前提となっていたため、本項目であげる「特攻」とは厳密には異なる。))~
生還を見込めない絶望的状況に陥った兵士が敵を道連れにしようと無謀な攻撃に出る事例は枚挙に暇がない。~
しかし、それは普通、死を避けられない状況に陥った後で決意され実行されるものである。~
[[軍隊]]が正規の[[作戦]]として事前に計画し、組織的・継続的に行われる事例は[[太平洋戦争]]末期の日本を除いて類を見ない。

>同時代には[[ソ連軍]]における[[タラーン]]戦術、[[ドイツ空軍>ルフトバッフェ]]の[[ゾンダーコマンド・エルベ>エルベ特別攻撃隊]]などの類例がある。~
しかし、いずれも将兵を生還させるための努力は最低限行われており、生還を許さない日本軍の「特攻」は群を抜いて異質である。

日本軍は1944年10月の[[レイテ沖海戦]]で初めて軍として組織だった特別攻撃を実行。~
その後、特別攻撃を除くいかなる戦術にも応用できない奇怪な兵器群を次々と設計、実戦に投入した。~
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日本においては、1944年10月の[[レイテ沖海戦]]で初めて軍としての組織だった攻撃が行われた後、[[桜花]](事実上「有人[[対艦ミサイル]]」)等の[[特攻機]]や、回天(余剰となった九三式三型魚雷([[酸素魚雷]])をベースに改造した「人間魚雷」)、震洋(船内艇首部に約250kgの炸薬を搭載した小型モーターボート)、四式肉薄攻撃艇(陸軍海上挺進戦隊が運用した、[[爆雷]]2個を搭載する小型モーターボート((ただし、厳密には「特攻用」兵器ではなかった。)))、伏龍(潜水具を着用し、[[棒付き機雷>機雷]]を手にした兵士が上陸用舟艇を水際で迎撃する「人間機雷」)等様々な特攻用兵器が開発された。~
特攻兵器は総じて効率的な攻撃に必要な[[機動力]]・自衛能力に欠ける傾向にあり、大抵は戦果を挙げる事なく迎撃を受けて散った。~
しかし極めて希に直撃して打撃を与える事に成功した事例もあり、それらは通常攻撃よりも派手な戦果を挙げて軍の[[参謀]]たちを喜ばせたという。~
なお、特攻兵器の乗員は攻撃の機会がなければ帰還したが、生還者は[[敵前逃亡]]扱いを受けて隔離・軟禁・再出撃を強いられる運命にあった。~
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現在この戦法は「最低最悪の、用兵の道から外れた戦法」として批判されている。~
なお、機体故障や会敵しなかった場合は帰還する事になっていた。((しかし、そうした乗員の存在は他の将兵や市民の[[士気]]にかかる、あるいは[[敵前逃亡]]や命令不服従と同様にみなされて外部から隔離・軟禁されたり、優先的に再出撃させられたりすることがままあったという。))~
後世、日本軍のこの行動は「常軌を逸した愚行」「戦場の狂気の代表例」などと語り継がれている。~
しかし、あえて人権上の問題を無視して考えるなら、末期戦という常軌を逸した狂気の状況下で戦う手段としては一定の合理性を認められる。~
[[コスト・パフォーマンス]]も実際それほど(当時選び得た他の選択肢に比べて)悪くはなかったものと考えられる。~
当時の日本軍は壊滅に近い状態であり、十分に錬成された戦力はほぼ存在しなかった。~
それでも、特別攻撃さえ実施すれば連合国軍へ高確率で損害を与え続ける事ができた。

>そこまでして戦い続ける意味があったか、という疑問は[[敗北主義]]的見地からは当然出てくる。~
これは思想の違いに帰結する問題だが、敵に強いた流血が戦後日本の運命に対して無益であったと考えるのは公平ではないだろう。~
もちろん、自国民に死を強要する事が戦後日本の運命に対して無害であったと考えるのも公平ではないが。

関連:[[バンザイアタック]] [[9.11事件]] [[FOX4]] [[ピケット艦>駆逐艦]]

**旧日本軍の特別攻撃兵器群 [#qf431627]
:[[桜花]]|人間が[[終端誘導]]を行う[[対艦ミサイル]]。
:梅花|[[パルスジェット]]推進特攻機。設計途中で終戦。~
:剣(キ115)|元々は単座[[爆撃機]]として設計されていた。105機完成も終戦により使用されず。~
:藤花|剣の[[エンジン]]をハ33([[金星]])に換装した海軍型。終戦により製造されず。~
:桜弾機(キ167)|[[四式重爆撃機>飛龍(爆撃機)]]の胴体に対艦用大型爆弾「桜弾」を搭載したもの。~
:神龍|[[固体燃料ロケット]]を搭載した木製特攻[[モーターグライダー>滑空機]]。試作のみ。~
:タ号|本土決戦用に開発された全木製特攻機。製作中に終戦。~
:[[回天]]|通称「人間魚雷」。申し訳程度に[[潜水艇>特殊潜航艇]]に分類されていた。~
九三式三型[[魚雷]]([[酸素魚雷]])を改装して人間を乗せたもので、搭乗員が手動で[[終端誘導]]を行う誘導魚雷。~
:海龍|[[特殊潜航艇]]。秘匿名称で「〇三金物」「SS金物」と呼ばれた。~
本土決戦用の特攻兵器として開発されたが、終戦により大規模投入されず。~
:震洋|船首に炸薬を満載したベニヤ板製モーターボート([[内火艇]])。~
秘匿名称で「〇四金物」、「〇四艇」と呼ばれた。~
:四式肉薄攻撃艇|[[爆雷]]を搭載した[[内火艇]]。通称「マルレ艇」。~
設計自体は沿岸防衛戦を想定したものであって自爆を前提とするものではないが、生還可能性という観点で見れば大差ない。
:伏龍|上陸用舟艇を水際で迎撃するために開発された、通称「人間[[機雷]]」。~
潜水具を着けた人間が槍か銛のように棒付きの[[機雷]]を構え、直接敵艦を突こうとした。

**特別攻撃から自爆テロへ [#ed2aa92e]
近年の[[テロリズム]]において広範に用いられる「自爆テロ」は、この特別攻撃と同一視される向きがある。~
特別攻撃を実行したパイロット達が「神風特攻隊」と称された事から、"Kamikaze"は自爆テロ・自殺的テロの代名詞となっている。~
~
初期には部隊に、直掩兼戦果確認として[[戦闘機]]が付く事もあった。~
だが早期に捕捉され、乗機もろとも撃ち落される事が多かった。~
しかしながら、上手く突入できた機体も少数ながらあり、その際には通常の水平爆撃を超える戦果を上げている。~
これをして、終戦後に出現した日本人テロリストが旧日本軍のノウハウを継承し、それが中東の共産主義テロリストを通じて世界に拡散したものとみる向きもある。~
ただし、当の日本人テロリストにはそのような自殺攻撃の思想も運用法も(そして自殺を決意させるような求心力も)特段なかったものと思われる。~
「特別攻撃」という歴史的事実が伝わり、そこから独自に自爆テロの[[ドクトリン]]が構築されたとみるべきだろう。~
体系的に整備された[[ドクトリン]]をもって組織的に自爆テロが実行され始めたのは1980年代以降であり、特別攻撃とは時間的な断絶もある。~
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対する[[アメリカ海軍]]も、被害を見て[[駆逐艦]]を「ピケット艦」と呼ばれる哨戒任務に割り当てた。~
これにより艦隊本体への攻撃を避けようとしたが、必然的にピケット艦に被害が集中することになり、非常に人気の無い任務であった。~
自爆テロ戦術が体系化されたのは[[冷戦]]末期以降で、西暦2000年までの10年ほどで全世界のテロリズムに波及していった。~
主たる要因はソビエト崩壊にまで至る旧共産圏の退潮にあり、ことさら末期ソビエトが世界情勢に介入する余力を喪っていた事に因る。~
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広島県・江田島の[[海上自衛隊]]幹部候補生学校(旧[[海軍兵学校>海軍兵学校(日本)]])内にある「教育参考館」には、[[航空機]]特攻に参加した海軍の全搭乗員((1945年8月15日、昭和天皇による「玉音放送」の後に出撃した宇垣纏中将と、彼に同伴した者を除く。))の名が記されている。~
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関連:[[バンザイアタック]] [[9.11事件]] [[FOX4]]
共産主義テロリストは共産圏から非公式に経済的支援を受けていたが、それは[[冷戦]]末期に途絶し始め、二度と復旧する事はなかった。~
反政府テロリズムは基本的に[[内戦]]を経て独立ないし[[クーデター]]による勝利を目指すのだが、[[兵站]]を共産圏に依存していた場合、それは事実上不可能になった。~
結果、勝利を望み得ないほど困窮したテロリストの多くが、存続していくために敵に流血を強いる“末期戦”の様相を呈している。


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