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*&ruby(せんりゃくばくげき){【戦略爆撃】}; [#d8ccd181]
[[戦略爆撃機]]などの大型の[[爆撃機]]や[[攻撃機]]を用い、敵国の工場、補給路、都市機能などを破壊することで、工業力低下や厭戦気分の高まりを狙った爆撃。~
正面戦力を攻撃するわけではないので、すぐには効果が現れないが、成功すればその国の国力は一気に落ち、戦争を継続する能力が失われる。それは[[太平洋戦争]]において日本が身をもって証明したことでもある。~
ただし、戦略爆撃が成立するほど圧倒的な[[航空優勢]]を維持し続け、かつその効果が現れるまで敵の逆襲を防いで戦線を維持できていれば、その時点ですでに戦略レベルでの戦争の勝敗は決定していることになる。~
そのことから、~
「戦略爆撃は決して戦争の勝利には寄与しない。~
(仮になんらかの意味があるとすれば)『敗者への見せしめ』あるいは『戦後処理を有利にするための恫喝』でしかなく、一種の『戦争犯罪』である」~
という考え方も存在する。~
[[戦略]]的企図を以て実施される[[爆撃]]。~
『戦術爆撃』の対義語で、[[前線]]の[[戦術]]的判断([[近接航空支援]]および[[阻止攻撃]])以外の[[爆撃]]を指す。~
~
現在では、民間人を多数巻き込むことから「無差別性が多々有り、非人道的である」と非難の対象となっており、また、そもそも上記の理由から、純軍事的には実行する必要性・必然性がないのでほとんど行われていない。~
さらに細分すると、軍需産業や輸送路など[[兵站]]設備を破壊する精密爆撃と、不特定多数の民間人を標的とする無差別爆撃に分けられる。

関連:[[B-29]] [[B-52]] [[B-1]] [[B-2]] [[Tu-16]] Tu-22 Tu-95 Tu-160 [[九六式陸上攻撃機]]
>精密爆撃とは、民間人を巻き込まないように配慮して[[爆撃]]するという意味ではない。~
精密性が求められるのは重要な目標を確実に仕留めるため、また[[誤射]]によって軍需物資を浪費しないためである。~
最大限正確に投下しても[[爆弾]]は民間人を惨死させるかもしれず、そもそも標的は民間施設かもしれないが、それは[[作戦]]上問題とはみなされない。~
政治的には問題かもしれないが、そうであるなら命中精度に関係なく[[爆撃]]を中止する他ない。

[[軍用航空機>軍用機]]が普及して[[空軍]]が創設される黎明期、20世紀前半に現れた戦略思想で、主に政争の具として多大な影響力を得た。~
つまるところ、[[空軍]][[将官]]が[[陸軍]]・[[海軍]]の指図を受けずに独自の戦略的判断を下す権力を得られる、という点に思想上の魅力があった。~
戦略爆撃という行為自体の軍事的有効性について十分な事前研究が行われたとは言いがたく、おおむね[[空軍]]礼賛的楽観論と官僚的専横の所産であったといえる。~
~
[[第二次世界大戦]]から[[冷戦]]期にかけ、当時の[[軍政]]上の常識と、功績を挙げたいという[[将官]]の欲望に基づき、大規模な無差別爆撃が度々実施された。~
[[国家総力戦]]において敵国の生産力を削ぐ、[[ゲリラ]]の後背を焼いて補給を絶つ、などの目的が設定されたが、戦果の判断は[[ドクトリン]]に依存する不明瞭なものだった。~
やがて[[地対空ミサイル]]の発達により[[航空優勢]]の確立が困難になると共に、迂遠なうえに費用甚大・成果不明瞭な無差別爆撃は忌避されていった。~
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[[湾岸戦争]]では、空陸連携(エアランドバトル)を旨とする当時最新の[[戦略]]理論に基づき、[[陸軍]]の[[機動]]経路を切り開く精密爆撃が多大な成果を上げた。~
以降、[[戦略]]的企図による[[爆撃]]は[[陸軍]]との連携を念頭に置き、[[攻勢対航空作戦]]と併せて[[軍事目標]]を破壊する[[作戦]]が主流となっている。~
ただし、[[テロリズム]]の次元においては[[暗殺]]や恫喝を意図した無差別爆撃がしばしば実施されている。

>民間に対する虐殺的な無差別爆撃の有効性については、現代に至っても定見がない。~
民衆に対する[[爆撃]]は明らかに[[ハーグ陸戦条約]]に抵触する行為だが、実際の[[紛争]]において敵性集団が戦時国際法を遵守してくれるなどとは期待すべきでない。~
虐殺の手段としての[[空爆]]の[[費用対効果>コスト・パフォーマンス]]はさておき、虐殺それ自体は[[内戦]]・[[ゲリラ戦]]・[[テロリズム]]において珍しい[[戦略]]ではない。


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