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*&ruby(せんしゃくちくしゃ){【戦車駆逐車】}; [#s81e0cf7]
&ruby(タンクデストロイヤー){Tankdestroyer};(英)~
&ruby(ヤクトパンツァー){Jagdpanzer};(独)~
通常型の[[戦車]]を改造するなどして、大口径の主砲を搭載して[[戦車]]を撃破する事を目的とした車両。~
「対戦車車両」とも言う。~
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元々[[戦車]]と正面切って戦うような設計はなされておらず、基本的な戦法は[[待ち伏せ>アンブッシュ]]であり、射撃後は直ちに待避して敵戦車の反撃を避けなければならない。~
しかし[[第二次世界大戦]]後半のドイツでは慢性的な[[戦車]]不足を補う為、その代用として戦車部隊に配備され、アメリカでは主力であった[[M4中戦車>M4(戦車)]]で手に負えないドイツ戦車と遭遇した場合の切り札として運用された。~
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主砲の大口径化を行うに各国でそれぞれ思想が異なり、ドイツでは使い勝手が悪くなるが構造的負担の大きい[[砲塔]]を廃して、簡単に大口径砲を搭載出来る様にし、戦車部隊での運用もふまえて、強固な防御力を与えた([[駆逐戦車]])。~
また[[第二次世界大戦]]後半になると防戦一方であり、[[航空優勢]]を奪われたために[[機動力]]を用いた戦闘が行えず、待ち伏せ主体となったため、[[機動力]]はほとんど求められなくなった。~
一方のアメリカでは防御力を求めず、車両を軽量化して大口径化した分の重量増を押さえ、尚かつ[[砲塔]]を残して使い勝手と機動性と求めた。~
このように一長一短があるため、どちらの方式が良いかは一概に言えない。~
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また同様の車両に[[対戦車自走砲>自走砲]]が存在する。~
これは戦車を撃破する為の攻撃力「のみ」を求めた[[自走砲]]であるため、防御力は皆無または非常に低いのが常であるが(機関銃の弾が防げる程度)、これももちろん戦車駆逐車の一種である。~
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戦後になると、特に装甲を薄くしたり[[砲塔]]を排除しなくても、十分な威力の火砲を戦車に搭載できるようになり、またその数を十分に揃えられるようになった。~
そして[[対戦車ミサイル]]の発達で待ち伏せ攻撃に戦車駆逐車を使用するメリットもなくなったため、殆どが姿を消し、大型のものではスウェーデンの[[Strv.103]]が実用化された程度である。~
小型のものでは、アメリカのM50オントス、日本の[[60式自走106mm無反動砲>60式自走無反動砲]]もこの範疇に入ると言える。~
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また、日本が戦後開発した[[61式戦車]]や[[74式戦車]]も、(「戦車」にカテゴライズされてはいるが)戦車駆逐車に近い性格を持たされた設計になっている。

[[戦車]]を撃破する事を目的とする装甲車両。「対戦車車両」「対戦車[[自走砲]]」とも。~

現代の軍事戦略に照らし合わせて考える場合、戦車駆逐車は予算の無駄遣いとしか言いようがない。~
陸戦で[[主力戦車]]と互するならば[[主力戦車]]をもって充てればよく、わざわざ対戦車のみに特化する必要はない。~
実際、戦車駆逐車という畸形の兵器が運用されたのは後にも先にも[[第二次世界大戦]]とその直後のみである。~

実態を言えば、戦車駆逐車は型落ちして役に経たなくなった旧式[[戦車]]を再利用するための苦肉の策である。~
[[国家総力戦]]の最中に高価な[[戦車]]を[[用途廃棄]]にする余裕などあるはずもなく、使えるものは無理にでも使い続けるしかなかった。~
このため、旧式[[戦車]]の[[主砲>カノン砲]]を換装するなど改装を施し、必要最低限の戦力を確保して戦場に送り返したものである。

無論、元が旧式なので[[装甲]]・[[機動力]]ともに新世代の[[戦車]]に比べれば明らかに見劣りする代物だった。~
よって必然的に[[待ち伏せ>アンブッシュ]]が多用され、敵[[戦車]]から反撃を受ける前に撤退する[[ゲリラ]]的な運用が主であった。~
しかし火力だけは戦車に互するものであり、最新の[[戦車]]を確保できないような逼迫した[[前線]]では大いに活用された。

>このとき、どのような改装を施すかという設計思想は各国で異なっていた。~
ドイツでは比較的に[[装甲]]など生存性を重視し、[[砲塔]]を撤去するなど戦闘時の[[機動力]]を犠牲にする傾向にあった。~
逆にアメリカでは[[装甲]]を犠牲にして軽量化し、使い勝手と[[機動力]]を重視する傾向にあった。~
これは[[前線]]が次第に連合国有利に傾いていき、アメリカが攻勢に、ドイツが防戦に傾いていった戦況を反映するものとされる。

戦後は[[国家総力戦]]体制の影響で混乱状態にあった[[兵站]]が整理統合され、戦車駆逐車は新造の[[戦車]]に事後を託して姿を消していった。~
また、今日では[[対戦車ミサイル]]の発達により、ほぼ全ての軍用車両が必要とあらば一切の改装なく戦車駆逐車として運用可能になっている。

関連:[[Strv.103]] [[60式自走無反動砲]] [[61式戦車]] [[74式戦車]]


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