【Z旗】(ぜっとき)

船舶が通信に用いる「国際信号旗」で、アルファベットの「Z」をあらわす図案の旗。
旗を対角線で四分割し、(左端から時計回りに)黒・黄・青・赤に塗り分けたものである。

この旗単体では「本船に曳き船を求む」あるいは「本船は投網中である*1」という意味の信号として用いられるが、日本では後述の歴史的経緯から「(スポーツ競技の応援や選挙・受験など)負けられない勝負」に挑む際に「勝利」を祈願して用いられる場合もある。

日本海軍とZ旗

前述のとおり、Z旗単体では本来、海上での信号としての意味しかないが、1905年、日露戦争の日本海海戦において、連合艦隊司令長官・東郷平八郎海軍大将が戦闘開始前、旗艦三笠」のマストにこの旗を掲げ「皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ」という部下将兵へのメッセージを表す信号として用いた*2
これ以後、日本海軍において「Z旗」は特別な意味を持つようになり、大東亜戦争の際には、大規模な海戦において旗艦のマストにZ旗を掲げることが慣例化した。

なお、開戦当初の真珠湾攻撃の際、南雲機動部隊の旗艦「赤城」はZ旗を直接用いず、(国際信号旗として)同様の意味を持つ「D」「G」の信号旗をマストに掲げていた。

その後、大東亜戦争後に生まれた海上武装組織である海上自衛隊にはこの伝統は引き継がれなかったが、2007年に沖縄県南東海域で行われた日米合同演習で護衛艦ちょうかい」のマストにZ旗が掲げられた。

この時「ちょうかい」に掲げられたZ旗は、以前の日本海海戦記念式典の際に同艦の乗員が手作りで作成し、イベントで使っていたものだったが、訓練の最終日に「フォトエキササイズ」で戦闘旗*3を掲げるよう日本側の指揮官から命令があったところ、たまたまその際、戦闘旗として用いている「大型の旭日旗」が同艦になかったため、この旗が掲揚されたという。


*1 操業中の漁船が用いる場合はこの意味になる。
*2 これは1805年の「トラファルガー海戦」において、英国艦隊を率いたネルソン提督が戦闘開始前、信号旗を用いて部下将兵へ「英国は各員がその義務を尽くすことを期待する(England expects that every man will do his duty)」というメッセージを送った故事にちなんだものであった。
*3 通常、戦闘旗には軍艦旗(日本では「自衛艦旗」と呼ばれる旗)、あるいはこれと同じデザインの旗を用いる。

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