【VXガス】(ぶいえっくすがす)

化学式:C11H26NO2PS

1952年にイギリスで発明された猛毒の神経剤(V剤)の一種で、人類が作った化学物質の中で最も毒性の強い物質といわれる。
琥珀色をした油状の液体で揮発性が低く、無味無臭の物質である。
また濃度や温度によって、粘着性を持つとされ、エアロゾルを毒ガスとして使用する。

上記のとおり揮発性が低いため、残留性が高く、そのうえサリンと異なって化学的安定性*1も高いので、温帯の気候においては散布から1週間程度は効果が残るとされる。

毒性

VXガスはサリンと同じく呼吸器からだけではなく、皮膚からも吸収されて毒性を発揮するので、ガスマスクだけでは防護できない。

また、親油性が高く、水で洗浄しただけでは取り除くことが出来ないため、安全な状態にするためには化学洗浄が必要になる。
木材や皮、布などに付着した場合は長期間毒性を維持したまま留まるため、汚染されたものに触れただけでも危険である。

吸入した場合、呼吸障害と痙攣を引き起こし、死に至らしめる。
CIAはVXガスの毒性について
「10mg肌に落とすだけで平均的な成人男性を殺す。約4リットルのVXガスは36万2000人分の致死量に相当する。定義として、VXがこの量で等しく適用されれば、50%(18万1000人)は死亡し、18万1000人が重態となるであろう。」
と表現している。

日本において

日本においてはカルト教団「オウム真理教」が、教団と対立する人物や教団を脱退した人物を殺害するためにVXガスを合成し、1994年〜1995年にかけて3度使用した。
1名が死亡し、2名が重態になったが、重態の2名は幸いにも一命を取り留めた。


*1 他の物質と反応しにくい。

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