【SA-3】(えすえーさん)

旧ソ連がS-75(SA-2「ガイドライン」)の補完として開発した、固定式中・長距離地対空ミサイル
NATOコードではSA-3「ゴア」と呼ばれ、ロシアではS-125「ネヴァー*1」、輸出型は「ペチョーラ*2」と呼ばれる。
1956年に開発が開始され、1961年から量産化され部隊配備が開始された。

ミサイル発射機は固定式のため、移動は出来ず、主に飛行場等の基地防空として多数配備された。
発射機の方は2連装・3連装・4連装の3タイプあり、ミサイルを発射する時は75°の角度で発射する。
なお、ミサイル輸送に関してはZIL-157又はZIL-131トラックで2本搭載される。

レーダー装置は2種類のレーダーを使用。
固定式であるせいか、長距離探知用のP-15(NATOコード:「フラット・フェイス」)警戒レーダーの索敵距離は250kmに達する。
また、目標高度に関してはPRV-11(NATOコード:「サイド・ネット」)高高度探知レーダーが担当し、こちらは最大高度32kmまで探知可能である。
もう1つは目標追尾・ミサイル誘導・短/中距離探知用レーダーのSNR-125(NATOコード:「ロー・ブロー」)管制/戦闘レーダーで、索敵距離は40kmである。
長距離用のフラット・フェイスレーダーの方は不明だが、短/中距離用のロー・ブロー管制/戦闘レーダーは同時6目標への追尾が可能で、そのうち2個の目標に対し攻撃できるという。
しかし、初期の地対空ミサイルであるためECMには弱い。
そのため、後期型のロー・ブローは新たにテレビカメラを搭載し、ジャミング環境下でもカメラから得られた情報をミサイルに送ることで任務の遂行を可能にしている。

ミサイル誘導は、発射後初期誘導中間誘導指令誘導?方式で終末段階の終端誘導ではセミアクティブレーダー誘導になり目標を追尾する。
最大射程は初期型は18km、後期型は30kmである。

実戦では第四次中東戦争でシリア軍等が使用し、2K12「クープ(SA-6『ゲインフル』)」ZSU-23-4「シルカ」とともにスエズ運河に沿って防空陣地を形成、初期の方は多数のイスラエル軍機を撃墜した。
しかし、後半になるとイスラエル軍ECMを多数使用し始め、それによりSA-3や各種地対空ミサイル撃墜率は極端に低下した。
その後、イラン・イラク戦争湾岸戦争コソボ紛争?でも使用され、コソボ紛争?中、ペチョラがステルス機であるF-117A撃墜したと言われている。

SA-3は艦載型のSA-N-1(4K90)等数多くのタイプが生産され、輸出の方はポーランド・フィンランド・旧ユーゴスラビア・インド・ペルー・ウガンダ・シリア・イラク・エジプト等多くの国に輸出された。

関連:SA-2 SA-6

SA-3B.jpg

Photo:IAF(Indian Air Force)

主な運用国

  • アルジェリア
  • アンゴラ
  • アルメニア
  • アゼルバイジャン
  • ブルガリア
  • キューバ
  • エジプト
  • エチオピア
  • グルジア
  • リビア
  • モルドバ
  • モンゴル
  • ミャンマー
  • モザンビーク
  • 北朝鮮
  • ペルー
  • ポーランド
  • セルビア
  • シリア
  • タンザニア
  • トルクメニスタン
  • ベネズエラ
  • ベトナム
  • イエメン
  • ザンビア

スペックデータ

SA-3
型番S-125「ネヴァー」
(SA-3A)
S-125M「ネヴァーM」
(SA-3B)
全長6.1m6.7m
直径55cm(第1段ブースター部)/37cm(第2段)
翼幅1.2m
発射重量946kg950kg
推進方式固体燃料ロケットモーター
最大速度マッハ3.5
射程6〜22km2.5〜18km
迎撃高度1,500〜12,000m50〜18,000m
弾頭HE 破片効果(60kg)
弾頭効力半径12.5m
誘導方式無線/セミアクティブレーダー終末誘導
発射装置2連装または4連装半固定ランチャー


SA-N-1
型番4K90
(V-600)
4K91
(V-601)
全長5.89m5.95m
直径1.2m
翼幅0.37m
発射重量923kg980kg
推進方式固体燃料ロケットモーター
最大速度600m/秒730m/秒
射程4〜15m4〜22km
迎撃高度100〜10,000m100〜14,000m
弾頭HE 破片効果弾頭(72kg)
弾頭効力半径12.5m
誘導方式無線/セミアクティブレーダー終末誘導
発射装置ZIF-101型発射装置


主な種類

  • S-125「ネヴァー」(SA-3A):
    初期量産型。

  • S-125M「ネヴァーM」(SA-3B):
    1964年から使用された低高度に於ける迎撃性能を向上させた型。
    重量が若干増えた。

  • S-125M1「ネヴァーM1」(SA-3C):
    レーダーを改良し、ECCM能力を高めた改良型。
    また、デジタル信号処理方式を採用し、保守も容易になっている。

  • S-125「ペチョーラ」(SA-3):
    輸出型。多少のスペックダウンはされているらしい。

  • M-1「ヴォルナー*3」(SA-N-1):
    艦対空ミサイル型。「ヴォルナーM」などの改良型がある。
    ミサイルはV-600(4K90)またはV-601(4K91)を使用する。
    カシン/カシンII型?キンダ型SAMコトリン型?クレスタI型カニン型?駆逐艦に搭載された。
    また、インド海軍でもラージプート級駆逐艦に搭載され、運用された。


*1 Нева:ロシアに市北部を流れる同名の川の名前から。
*2 Печора:ヨーロッパ・ロシア北部を流れる同名の川の名前から。
*3 Волна:ロシア語で「波」を意味する。

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