【GHQ】(じーえいちきゅー)

1945年8月、アメリカ軍を基幹とする連合国軍による対日占領行政を担当するために設置された機関「連合国軍最高司令官総司令部」のこと。
英文表記での正式な呼称は「General Headquarters/Supreme Commander for the Allied Powers(GHQ/SCAP)」と呼び、本部は東京・日比谷の「第一生命館」(第一生命保険相互会社本社ビル。現在の「DNタワー21」の一部)に設置された。

実際の統治に当たっては、GHQが日本政府に対して指示・命令を下し、日本政府が従来の行政機構をそのまま使って占領政策を遂行するという「間接統治」の形態が採られていた。
このために、GHQが日本政府に向けて発する指示・命令は「ポツダム命令(ポツダム勅令・ポツダム政令とも)」と呼ばれ、当時の日本にとっては従来のあらゆる法令に勝る絶対的・超法規的な性格を持っていた。

当初、アメリカの策定した占領政策では日本の軍事力を完全解体し、その上で産業構造を農業主体へ転換して*1自国の市場に組み込むことが目指されていたが、(冷戦の開始など)その後の情勢の変化によって「警察予備隊の設置」「海上保安庁の増強」といった再軍備が行われたり、労働運動に制限が加えられるなど、方針は大きく転換された。

1951年9月に締結され、翌年4月に発効した「日本国との平和条約(サンフランシスコ講和条約)」によって連合国軍の占領が終結、解散となった。

これによって、アメリカ以外の日本駐留軍はそれぞれの母国へ撤収したが、アメリカ軍のみは「日米安全保障条約」によって引き続き日本に留まった。
また同時に、沖縄や小笠原諸島、台湾・満州・南樺太・朝鮮半島など、明治時代以後に日本が取得した海外領土に対する支配権も正式に放棄されることになった。*2

歴代指揮官(連合国軍最高司令官)

  1. ダグラス・マッカーサー アメリカ陸軍大将(1945.8.14就任〜1951.4.11退任)
    朝鮮戦争にて国連軍総司令官を兼務するが、核兵器の使用を主張して米国政府と対立し、解任される。
  2. マシュー・リッジウェイ アメリカ陸軍中将(1951.4.11就任〜1952.4.28退任)
    就任直後に大将に昇進。講和条約発効により機能を停止したため自然廃職。

主な組織構成

ここでは、中核部分について述べる。
実際の人員は多くがアメリカの軍人・民間人によって構成されていた。

  1. 参謀部(軍事部門)
    1. 参謀第1部(G1・人事担当)
    2. 参謀第2部(G2・情報担当)
      部内でも特に大きな発言権を持っており、GHQの統治時代に起きた数々の怪事件は、G2及びその隷下にあった多数の特務機関が関与していた、ともいわれている。
      また「プレスコード」などの検閲によるマスコミへの介入も行い、占領軍の不利になるような情報を流さないようにコントロールしていた。
    3. 参謀第3部(G3・作戦担当)
    4. 参謀第4部(G4・後方担当)

  2. 幕僚部(専門部局)
    1. 民政局(Goverment Section(GS))
      一般的な内政担当。
      日本の「非軍事化・民主化」政策に主体的な役目を果たした。
    2. 経済科学局(Economic & Scientific Section(ESS))
      財閥解体などの経済政策を主導。
    3. 民間情報教育局(Civil Information & Educational Section(CIE))
      教育改革などを担当。
      また、マスコミを通じて戦時中の旧軍による非人道的行為を繰り返し報道し、日本国民の抗戦意欲喪失と贖罪感情を増幅させる工作も行っていた。*3
    4. 天然資源局(Natural Resources Section(NRS))
      農地改革などを担当。

  3. 実働部隊
    1. アメリカ占領軍(USOF)
      アメリカ陸海軍を中心に構成。
      九州及び兵庫県以東の都道府県に対する軍事占領を担当。
    2. イギリス連邦占領軍(BCOF)
      英連邦諸国軍を中心に構成。
      中国・四国地方9県(山口・広島・岡山・鳥取・島根・香川・徳島・愛媛・高知)の軍事占領を担当。

*1 この影響で、航空機の設計・製作・運用などの航空に関する諸活動に日本人が関与することは1950年代初めまで禁止されていた。
*2 沖縄や小笠原諸島については後に日本へ返還される。
*3 後年、さる評論家が「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(War Guilt Information Program:WGIP)」として著書に発表している。

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