【F-4】(えふよん)

McDonnell? Douglas F-4 (F4H) "Phantom2" (ただし単に「ファントム」といわれることも多い。)
アメリカ海軍の艦上機として開発された後、数々の派生型を生み出し、5,000機以上の生産を誇った傑作大型戦闘機

米海軍が要求するマッハ2級のミサイリアーを目指して、マクダネル社がF3H-Gをベースに設計したF4H-1に端を発する。
ライバルとしてチャンスボート社のF8U-3が存在したが、飛行審査の結果F4H-1が採用された(その後、機体命名法の変更に伴い名称が"F-4"へ変更された)。

当時としては高度だったレーダー火器管制装置を操作するため、複座となっている。
強力なJ79ターボジェットを2基装備しながら、航空母艦のエレベーターに収まるサイズに設計された。
その結果、太くて短い胴体に、下反角の大きなスタビレーターや折り畳み式クリップトデルタ翼を組み合わせた、独特の形状となった。
この特異な外観から当初は「醜いアヒルの子」とも揶揄されたが、童話よろしく後々の活躍により傑作戦闘機として評価されるようになった。

推力に余裕があるため、その外見に似合わず数々の速度記録や高高度記録を打ち立てた。
また搭載能力にも余裕が大きく、戦闘爆撃機としても優秀であった。
ベトナム戦争では数々の戦果を挙げ、当時米軍でエースパイロットを生み出した唯一の機種として知られる。
元々はミサイリアーだったが、ベトナム戦争では機関砲の必要性が叫ばれたため、一部の機体にガンポッドが装着され、後に作られた空軍向けのE型では固定武装としてM61A1?を装備した。

派生型が非常に多いため、その一覧を以下に示す。

  • F-4A(F4H-1F):試作および初期少数生産型。
  • F-4B(F4H-1):米海軍・海兵隊前期量産型。
  • F-4C:F-4Bの米空軍版。旧称F-110A。
  • EF-4C:F-105Gの後継として暫定的に改修されたワイルドウィーゼル機。やがてF-4Gへと交替した。
  • F-4D:米空軍向けに対地攻撃能力を強化した機体。一部は韓国やイランへ輸出された。
  • F-4D イラン改良型(形式不明): F-4Dをイラン軍が独自に改修した機体、中国製YJ-1/C-801空対艦ミサイルを装備できる。
  • F-4E:固定武装としてM61A1?を装備する空軍型。各国で使用された。*1
  • F-4EJ:F-4Eの航空自衛隊向け(三菱重工でライセンス生産)。
    当時の政治的理由により空対地攻撃能力や空中給油受油能力が省かれ、迎撃戦闘機として生産された。*2
  • F-4EJ改:F-4EJの延命改修型。
    アビオニクスが更新され、空対地攻撃能力や空中給油受油能力が復活、ASM-1などの国産兵装が運用可能になった。
  • F-4E ファントム2000(クルナス2000):F-4Eの延命改修型。油圧・燃料系統が改修されイスラエル軍が使用している。
  • F-4E ファントム2020:F-4Eの延命改修型。グラスコクピット化・レーダーの交換が行われ、トルコ空軍が使用している。
  • F-4E イラン改良型(形式不明):F-4Eをイラン軍が独自に改修した機体。
  • F-4E PI2000:F-4Eをギリシャ空軍が独自に改修した機体、AIM-120を装備可能。
  • F-4R(S):RF-4Xと同等の装備を持つ偵察機。イスラエル空軍向けに3機が改修された。
  • F-4F:F-4Eのルフトバッフェ版。アビオニクスを簡略化し、単座でも運用可能。AIM-7の運用能力を持っていない。
  • F-4F ICF:F-4Fの延命改修型。アビオニクスを更新し、AIM-120を装備可能。
  • F-4G(1):敵防空網制圧専用型。米空軍ワイルドウィーゼル機。
  • F-4G(2):F-4Bをベースに、データリンクを使用しての自動迎撃・自動着艦の実験用に改修された機体。
  • F-4J:米海軍・海兵隊後期量産型。パルスドップラーレーダーを備え、F-4Bでは装備されていたIRSTが撤去された。
  • F-4K:英海軍向け。エンジンはRRスペイ・ターボファン
    英名「ファントムFG.1」
  • F-4M:F-4Kの英空軍版。
    英名「ファントムFGR.2」
  • F-4N:F-4Bの延命改修型。
  • F-4S:F-4Jの延命改修型。
  • QF-4B:余剰のF-4Bを改造した標的機
  • QF-4E:余剰のF-4Eを改造した標的機
  • QF-4G:余剰のF-4Gを改造した標的機
  • QF-4N:余剰のF-4Nを改造した標的機
  • QF-4S:余剰のF-4Sを改造した標的機
  • RF-4B:米海軍・海兵隊向け偵察機。カメラに加えSLARなどのセンサーを持つ。
  • RF-4C:RF-4Bの米空軍版。旧称RF-110A。
  • RF-4C SARA:RF-4Cの延命改修型。アビオニクスを更新しAIM-9を装備可能、現在スペイン空軍が使用している。
  • RF-4E:RF-4CのエンジンアビオニクスをF-4E相当にしたもの。
  • RF-4E クルナス2000:RF-4Eの延命改修型、現在イスラエル軍が使用している。
  • RF-4EJ:F-4EJに偵察ポッドを装着した武装偵察機。航空自衛隊が使用。
  • RF-4X:CIA用高々度偵察型。HIAC-1という高性能なカメラを搭載し、高々度からの偵察に最適化されている。提案のみ。

    f4h.jpg

*1 米本国での最終生産機は韓国空軍向けの同型だった
*2 同型の最終号機が、F-4ファミリー全シリーズの最終生産機となった

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